リーマン・ブラザーズの破綻に始まった世界金融危機は、2009年多くの日本ベンチャー企業に打撃を与えた。私は、その中で、薄膜太陽電池の成膜装置を開発しながら受注に結びつかず倒産した会社の精算に立ち会った。本書は、その時の技術解説書として購入しただけでなく、現在も太陽光発電の真価を見極める拠り所としている。倒産した企業は、中国太陽電池メーカの大型投資に食い込むため、アモルファス薄膜の専門家を雇い、プラズマ短時間高エネルギー成膜装置を手がけた。私は、技術価値評価を行うため、1台(1400mmX1100mm)の試作を全行程立ち会い、本書の記載通りの材料・構造・成膜方法であることを確認した。その後2ヶ月間の太陽暴露放置で、多数の小孔ショートとそこから電極材料が白いシミのように析出したことに驚いた。倒産が技術開発の選択ミスだと判断した。一方で、アモルファスの信頼性は問題なく業界のスタンダードになるかのうような本書の記載に疑問を感じた。
しかし、10章から13章では太陽光発電実用化の失敗事例や将来課題を隠すこと無く正直に説明しており、たいへん参考になった。特に、住宅側よりも周囲が高い電圧になると電力を売電できない。太陽電池設置者が1本の電柱のトランスに群がると、高電圧になり売電できなくなる。また、各家庭が安い変換器を使って精度の悪い交流を発生させると正弦波交流が歪み、モーターで動かす工場設備が異常変動を起こす。
2011年に日本年間導入量が5000kW(NEDO予測)を超えると本書の最終章で楽観視していた。現実はやっと1000kWを超えた程度(日本全発電量の0.0004%)に留まっている。2012年7月から余剰電力買取制度が始まり、突然1千倍になったとしても1%に満たない。買取価格は、電力会社の発電原価の約3倍も高く、本制度が不況経済下に特定家電メーカーの一時的延命テコ入れ策であることを容易に推測できるし、長く続くとは到底思えない。やはり、太陽発電は、電力送電が高額にかかる僻地や宇宙環境のための設備として発展していくべきだろう。本書は、そのための応用技術を満載している。
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太陽電池 (フォトニクスシリーズ) 単行本 – 2004/6/1
浜川 圭弘
(著)
さんさんと降り注ぐ太陽光,それは地球上の動植物を元気に育ててきたエネルギーの根源である。コロナ社発行の本書では,このエネルギーで文明生活に必需の電力を環境を汚さずに発電する太陽電池のしくみについて,わかりやすく解説し,広がる応用を紹介しています。
- 本の長さ309ページ
- 出版社コロナ社
- 発売日2004/6/1
- ISBN-104339005525
- ISBN-13978-4339005523
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
本書は太陽電池ならびに太陽光発電システムをめぐる世界の最新技術を解説したものである。ここ10年の急速な技術の進歩によって、この分野もしだいに細分化されてきている。この観点から、各章ならびに各節の執筆者として、現在わが国でのトップエキスパートを選び、先端技術の現状を紹介した。その内容は、21世紀に大きく成長しようとする新産業をめざした業界のトップマネージャー、太陽電池セルの製造からシステム開発に至る各分野の現場技術者、研究開発分野の科学技術者、大学研究者および大学院生などに焦点を絞って執筆されたものである。
内容(「MARC」データベースより)
太陽光、それは地球上の動植物を元気に育ててきたエネルギーの根源である。このエネルギーで文明生活に必需の電力を環境を汚さずに発電する太陽電池についてわかりやすく解説。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
浜川/圭弘
1958年大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。1958年大阪大学助手。1962年大阪大学講師。1964年工学博士。1964年大阪大学助教授。1965年~67年米国イリノイ大学客員助教授。1976年大阪大学教授。1992年大阪大学極限物質研究センターセンター長(併任)。1996年大阪大学名誉教授。1996年立命館大学教授。1998年学校法人立命館副総長、立命館大学副学長。2003年学校法人立命館総長顧問、現在に至る。川西市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1958年大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。1958年大阪大学助手。1962年大阪大学講師。1964年工学博士。1964年大阪大学助教授。1965年~67年米国イリノイ大学客員助教授。1976年大阪大学教授。1992年大阪大学極限物質研究センターセンター長(併任)。1996年大阪大学名誉教授。1996年立命館大学教授。1998年学校法人立命館副総長、立命館大学副学長。2003年学校法人立命館総長顧問、現在に至る。川西市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : コロナ社 (2004/6/1)
- 発売日 : 2004/6/1
- 単行本 : 309ページ
- ISBN-10 : 4339005525
- ISBN-13 : 978-4339005523
- Amazon 売れ筋ランキング: - 565,071位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 274位一般電気工学関連書籍
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
5つ星のうち1.8
星5つ中の1.8
3 件のグローバル評価
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年6月3日に日本でレビュー済み
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1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2007年10月13日に日本でレビュー済み
まだ大学と企業の産業連携が珍しく、しかも根本的にコストがかかりすぎるという難点に開発競争がいくぶんにぶり始めていたとき、企業部の一員として太陽光発電の発展に努めていらした著者と出会いました。当時、太陽光発電は未知なる領域とも言われ、軽くて効率がよく、なおかつ枯渇する心配のないエネルギーとして認められてはいたものの、光の収集をより小型化して行えるだけの理論の飛躍がなかなか現れず、新たな胎動期を迎えていました。そして、そこに貴重な一石を投じられたのがこの本の著者、浜川圭弘先生です。
それは実際のところNHKのプロジェクトXにも取り上げられるほどあらゆる面で困難を極め、まさか今日のように異国の地で電気供給に難のある所を次々に救い、高速通信まで可能にしてしまう未来がもたらされようとは当時は想像だにしていませんでした。
この本は、科学の黎明期というものがどのような思考の揺籃から始まっていくのか、応用の未来に入った私たちこそが(異国で光理論に始めて触れる研究者たちも含めて)、新たな光の秘密を見究めるためにも丁寧に目を通しておきたい本になっています。
*基礎研究を軽んじることのなかった著者の科学への真摯な姿勢をどうぞ感じとってください。
それは実際のところNHKのプロジェクトXにも取り上げられるほどあらゆる面で困難を極め、まさか今日のように異国の地で電気供給に難のある所を次々に救い、高速通信まで可能にしてしまう未来がもたらされようとは当時は想像だにしていませんでした。
この本は、科学の黎明期というものがどのような思考の揺籃から始まっていくのか、応用の未来に入った私たちこそが(異国で光理論に始めて触れる研究者たちも含めて)、新たな光の秘密を見究めるためにも丁寧に目を通しておきたい本になっています。
*基礎研究を軽んじることのなかった著者の科学への真摯な姿勢をどうぞ感じとってください。