つい先ごろ『猫の目』が国内出版されたばかりのメビウス&ホドロフスキーによるタッグ作品がまたもやリリースされた。タイトルは『天使の爪』、そしてこれがなんとメビウス描く淫猥極まりないグラフィックが躍る超絶ポルノグラフィだったのである。
この『天使の爪』はコミック形式の作品ではなく、『猫の目』と同じくメビウス描く大判のグラフィックにホドロフスキーの散文が添えられ、ある種のストーリーめいたものを形作る構成となっているのだが、このグラフィックがことごとく、あからさまにインモラルな性的イメージに満ち溢れたものなのだ。そしてそれにインスパイアされて書かれたホドロフスキーの文章は、この物語の"主人公"とされる"女"の倒錯した性の遍歴を、それが密教の秘儀の如くであるように魔術的に描写するのである。
この『天使の爪』に奔出する性的イメージのインモラルさは、甚だしく多岐に渡る。それは近親相姦と精液と経血に始まり、オーラル・セックスとスカトロジー、緊縛とボディピアス、サディズムとマゾヒズム、同性愛と両性具有、去勢と涜神、隷属と支配、凡そ並べられるであろうあらゆるタブーを犯しながら、これでもかとばかりに背徳のイメージを重ねてゆく。そしてそこでメビウスは、男性器も女性器も性交シーンも、臆すことなく奔放に描画しつくしているのだ。しかしもちろんこの作品はありきたりなポルノグラフィの枠に留まる物ではない。剥き出しの性と汚辱とを描きながら、そのグラフィックはメビウスの手によって、危険な甘美さと暗い愉悦に満ちた秀麗な作品として仕上がっているのである。
この作品が創作されたそもそもの発端は、メビウスが自らの抱えるサディスティックな性的衝動に困惑し、それをホドロフスキーに吐露したところ、ホドロフスキーがそれをあえて作品化してみてはどうか、と持ち掛けたことから始まったのらしい。即ち、コントロール困難な自らのリビドーとあえて正面から向き合い、作品として対象化することで、精神療法的な【昇華】をメビウスにもたらそうとホドロフスキーは考えたのだ。
だからこそありとあらゆる性的倒錯の旅路の果てに、この物語の"女"は【解放】と【変容】を獲得し、法悦ともいえる【浄化】へと飛翔するのである。そしてそれは、メビウス自体の精神的【浄化】であることに他ならない。それにしても一見するならポルノグラフィでしかないものにさえ、形而上的な魂の遍歴を映し出すメビウスとホドロフスキーの、その類稀なる技に感服した作品であった。
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天使の爪 単行本 – 2013/8/10
アレハンドロ・ホドロフスキー
(著),
メビウス
(イラスト)
メビウス (イラスト) 著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます この著者の 検索結果 を表示 |
メビウスとホドロフスキーという黄金コンビによる、エロティックな絵本。
少女がみずからの女性性を受け入れ、新たな生命体へと脱皮を遂げるまでの物語が、視覚と言語の臨界点に触れながら展開される。
その蠱惑的な幻想世界は、見る者すべてのオブセッションと化すだろう。
少女がみずからの女性性を受け入れ、新たな生命体へと脱皮を遂げるまでの物語が、視覚と言語の臨界点に触れながら展開される。
その蠱惑的な幻想世界は、見る者すべてのオブセッションと化すだろう。
- 本の長さ80ページ
- 言語日本語
- 出版社飛鳥新社
- 発売日2013/8/10
- ISBN-104864102635
- ISBN-13978-4864102636
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商品の説明
出版社からのコメント
日本の読者にはあまり知られていないメビウスのエロティック・サイドが、いよいよその姿を現します!
価格、判型変更のお詫び
当初、判型がA4サイズの予定でしたが、出来るだけ原書に近づけ、判型をB4サイズに拡大したため、価格が2,940円(税込)になりました。
価格、判型変更のお詫び
当初、判型がA4サイズの予定でしたが、出来るだけ原書に近づけ、判型をB4サイズに拡大したため、価格が2,940円(税込)になりました。
内容(「BOOK」データベースより)
果てしなく倒錯的で、凄絶なまでにエロティックなイマジネーションの奔流。天才メビウスのあまりにも激しい性的妄想世界がそのまま封じ込められた異色の作品。
著者について
メビウス(絵)
1938年生まれ、2012年没。本名ジャン・ジロー。SFやファンタジー系の作品を手掛けるときにはメビウスを名乗った。世界的に最も高名なBD作家として知られ、日本では特に大友克洋や宮崎駿といった巨匠たちがその影響下にある。映画の世界にも大きな足跡を残しており、『エイリアン』、『トロン』、『アビス』などのコンセプト・デザインを手がけた他、『ブレード・ランナー』のヴィジュアル表現にも影響を与えている。主な作品は『アンカル』(ホドロフスキー原作)、『B砂漠の40日間』、『アルザック』、『ブルーベリー』シリーズ(ジャン・ジロー名義)など多数。
アレハンドロ・ホドロフスキー(文)
1929年生まれ。チリ出身。映画監督・BD原作者。そのフィルモグラフィーには、『エル・トポ』、『ホーリー・マウンテン』、『サンタ・サングレ/聖なる血』の三カルト作が並ぶ。頓挫した企画の中には『デューン/砂の惑星』がある。このために集まったスタッフが、後に『エイリアン』を作り上げた。メビウスのBD作品に原作を提供している他、現在でも旺盛な創作力で多数の原作を執筆し続けている。
1938年生まれ、2012年没。本名ジャン・ジロー。SFやファンタジー系の作品を手掛けるときにはメビウスを名乗った。世界的に最も高名なBD作家として知られ、日本では特に大友克洋や宮崎駿といった巨匠たちがその影響下にある。映画の世界にも大きな足跡を残しており、『エイリアン』、『トロン』、『アビス』などのコンセプト・デザインを手がけた他、『ブレード・ランナー』のヴィジュアル表現にも影響を与えている。主な作品は『アンカル』(ホドロフスキー原作)、『B砂漠の40日間』、『アルザック』、『ブルーベリー』シリーズ(ジャン・ジロー名義)など多数。
アレハンドロ・ホドロフスキー(文)
1929年生まれ。チリ出身。映画監督・BD原作者。そのフィルモグラフィーには、『エル・トポ』、『ホーリー・マウンテン』、『サンタ・サングレ/聖なる血』の三カルト作が並ぶ。頓挫した企画の中には『デューン/砂の惑星』がある。このために集まったスタッフが、後に『エイリアン』を作り上げた。メビウスのBD作品に原作を提供している他、現在でも旺盛な創作力で多数の原作を執筆し続けている。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
メビウス
1938年生まれ、2012年没。本名ジャン・ジロー。SFやファンタジー系の作品を手掛けるときにはメビウスを名乗った。世界的に最も高名なBD作家として知られる
ホドロフスキー,アレハンドロ
1929年生まれ。チリ出身。映画監督・BD原作者
原/正人
1974年生まれ。学習院大学人文科学研究科フランス文学専攻博士前期課程修了。BDの専門誌『EUROMANGA』(飛鳥新社)で翻訳および執筆に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1938年生まれ、2012年没。本名ジャン・ジロー。SFやファンタジー系の作品を手掛けるときにはメビウスを名乗った。世界的に最も高名なBD作家として知られる
ホドロフスキー,アレハンドロ
1929年生まれ。チリ出身。映画監督・BD原作者
原/正人
1974年生まれ。学習院大学人文科学研究科フランス文学専攻博士前期課程修了。BDの専門誌『EUROMANGA』(飛鳥新社)で翻訳および執筆に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 飛鳥新社 (2013/8/10)
- 発売日 : 2013/8/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 80ページ
- ISBN-10 : 4864102635
- ISBN-13 : 978-4864102636
- Amazon 売れ筋ランキング: - 747,532位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 7,386位漫画・アニメ・BL(イラスト集・オフィシャルブック)
- カスタマーレビュー:
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著者について
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2013年8月30日に日本でレビュー済み
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25人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2014年1月5日に日本でレビュー済み
メビウスの邦訳作品は一通り見ていますが、コアなファンであるとは言えない私です。
そんな視点も参考になるかと。
まず、驚くほど大きい本です。
普通に本棚に入りません。
ただ、その一方で他の本にはない迫力でメビウスの絵を堪能できます。
アンカルなんかでは感じられなかった原作者ホドロフスキーの特異さが溢れています。
ホドロフスキーの映画群を観ると、アンカルはわりとまともにスペイシーな感じがしますが、この作品を見ると変にホッとするというかなんというか…
やっぱりホドロフスキーはホドロフスキーなんだ。彼はクレイジーな作家なんだと安心させてくれる感じです。
期待を裏切らずにおぞましいです。
エロティックとはいいますが、どこかハンス・ベルメールを想起させるような感じがします。
エロとグロの間を彷徨いながらアーティスティックな感じで。
その手の表現がわりと嫌いでない好き者であれば、相当に気に入ると思いますが、単にエッチではなくてグロいのはチョットという人々には良いとは思えない作品かもしれません。
個人的にはベルメールも好きなので、相当に気に入りました。
ただし万人には勧められるとは思えないので☆3です。
メビウスファン、ホドロフスキーファン、好き者には☆5なので、入手困難になる前に是非買っておいてください。
そんな視点も参考になるかと。
まず、驚くほど大きい本です。
普通に本棚に入りません。
ただ、その一方で他の本にはない迫力でメビウスの絵を堪能できます。
アンカルなんかでは感じられなかった原作者ホドロフスキーの特異さが溢れています。
ホドロフスキーの映画群を観ると、アンカルはわりとまともにスペイシーな感じがしますが、この作品を見ると変にホッとするというかなんというか…
やっぱりホドロフスキーはホドロフスキーなんだ。彼はクレイジーな作家なんだと安心させてくれる感じです。
期待を裏切らずにおぞましいです。
エロティックとはいいますが、どこかハンス・ベルメールを想起させるような感じがします。
エロとグロの間を彷徨いながらアーティスティックな感じで。
その手の表現がわりと嫌いでない好き者であれば、相当に気に入ると思いますが、単にエッチではなくてグロいのはチョットという人々には良いとは思えない作品かもしれません。
個人的にはベルメールも好きなので、相当に気に入りました。
ただし万人には勧められるとは思えないので☆3です。
メビウスファン、ホドロフスキーファン、好き者には☆5なので、入手困難になる前に是非買っておいてください。
2013年8月15日に日本でレビュー済み
「欧米文化圏」の「一部インテリ層による」絶大な支持と人気を誇るコンビの、通常考えられる創作過程と違った、親密で示唆に富んだ遣り取りの結実。
画:メビウス、作:ホドロフスキー、とする程割り切れる内容ではない。
涼しく小綺麗に取り澄ました表向きの西欧文化ではない、父祖のおぞましい生き様、呪わしい遣り口も背負うべきものとして反映した文化的表現が、彼等ふたりの通底項でもある。
だからこそインテリ好みのクスグリが豊富で、商品としても一流になりうるのだ。
文化としての制度的暴力性、玩弄物としての隷従者に性をどのように奉仕服従させるのか、という「美意識」は、欧米文化の中で特権的高貴な趣味である。
それを幼児体験や日常の隙間から拾い出し蓄積し、どうにも堪らなくなって吐き出しホドロフスキーに向けてみた事で始まった創作なので、生み出す為に立ち止まる事を促したのはメビウスの方。
そこからホドロフスキーは詩文による回答を寄越し、更に絵が加えられて商品としても纏まりを付ける事が出来た。
ここからは星を低くした理由だ。
先頃逝去したメビウスは、欧米ではホルスト・ヤンセンとも比べうる程の世界的「画狂人」でもあるので、正に「オマージュ」としての気負った造本となっている。
版形を大きくした事は評価出来るが、カバーや帯の惹句はどうかと?
この手の内容に眼を走らせようと言う人士は、語学に付いては堪能ではなくとも辞書を手により深く詩文韻文に込められたモノを解きほぐそうと言うくらいの、優れた好奇心は持ち合わせているだろう。
何よりも手落ちなのは、大して長くも多くもないホドロフスキーの、豊穣な暗喩や連携を秘めた韻文を、掲載しないと言う事だ。
それをすれば、翻訳者の立場が無い、商品提供者としての威厳や沽券に関わる、という程度のブレーキが働いたのだろうか?
読者を下に見る無礼は、出版人の多くを毒している一種の『官僚病』でもある。
文化の深奥を剥き出しにして見せてくれる「二人の作者」を高く評価するが、商品として成り立たせる立場の者達が、浅ましく意識が低いのには、嫌な気分を禁じ得ないという人は、多いのではあるまいか。
画:メビウス、作:ホドロフスキー、とする程割り切れる内容ではない。
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だからこそインテリ好みのクスグリが豊富で、商品としても一流になりうるのだ。
文化としての制度的暴力性、玩弄物としての隷従者に性をどのように奉仕服従させるのか、という「美意識」は、欧米文化の中で特権的高貴な趣味である。
それを幼児体験や日常の隙間から拾い出し蓄積し、どうにも堪らなくなって吐き出しホドロフスキーに向けてみた事で始まった創作なので、生み出す為に立ち止まる事を促したのはメビウスの方。
そこからホドロフスキーは詩文による回答を寄越し、更に絵が加えられて商品としても纏まりを付ける事が出来た。
ここからは星を低くした理由だ。
先頃逝去したメビウスは、欧米ではホルスト・ヤンセンとも比べうる程の世界的「画狂人」でもあるので、正に「オマージュ」としての気負った造本となっている。
版形を大きくした事は評価出来るが、カバーや帯の惹句はどうかと?
この手の内容に眼を走らせようと言う人士は、語学に付いては堪能ではなくとも辞書を手により深く詩文韻文に込められたモノを解きほぐそうと言うくらいの、優れた好奇心は持ち合わせているだろう。
何よりも手落ちなのは、大して長くも多くもないホドロフスキーの、豊穣な暗喩や連携を秘めた韻文を、掲載しないと言う事だ。
それをすれば、翻訳者の立場が無い、商品提供者としての威厳や沽券に関わる、という程度のブレーキが働いたのだろうか?
読者を下に見る無礼は、出版人の多くを毒している一種の『官僚病』でもある。
文化の深奥を剥き出しにして見せてくれる「二人の作者」を高く評価するが、商品として成り立たせる立場の者達が、浅ましく意識が低いのには、嫌な気分を禁じ得ないという人は、多いのではあるまいか。