博覧強記の宗教学者・釈徹宗氏と大阪の祭礼文化などに詳しい近世史家・高島幸次氏が、大阪の神社(神)や寺院(仏)について語り合った市民大学講座の内容を書籍化したものである。どちらも話がうまく、豊富な知識を面白い表現を多用しながら教え示してくれるので、なかなか引き込まれる。前半は高島氏がリードする神社とお祭りに関する話がメインで、住吉大社や天神祭を例に日本人の信仰の特質や祭りの構造などが論じられる。後半は釈氏の仏教論だが、府内の3000ヶ寺のうち約3分の1を占めるという浄土真宗寺院に関する話題が中心で、その真宗信仰が生み出した経済倫理や共同性の特質などについて解説されている。
また一貫してポイントとなっているのはこれらの宗教文化が育む「大阪人」のエートスのようなもので、「ある面では真宗文化、ある面では都市の祭り、ある面では島々と湿地帯。ある面では無縁のアジール、ある面ではお殿様がいない街」などの複数の要因によって、「トップダウン方式よりも、草の根型ネットワーク」への好みが目立つように思えるその性格について、あちらこちらで鋭い示唆がなされている。単に日本宗教論として読んでも面白いが、やはり大阪という地域と人とに詳しい読者がその本性について改めて考えてみるのに適した本であるといえよう。
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