隆盛を誇っていた大英帝国の滅亡に向かう歴史的軌跡を描いた本作は、
私の今まで抱いていた英国のイメージを崩し、新しい知識の構築を助けてくれました。
著書の中西史の詳細な調査と、分析、多角的視点からの考察が、非常に読書中も
楽しませてくれ、内容に深く引き込まれました。仕事柄ロンドンとの取引も多いのですが、
このように相手国の歴史的バックグラウンドを理解することの重要性に気づかせてくれた
素晴らしい著作だと思います。
大英帝国衰亡史 PHP文庫 (日本語) 文庫 – 2004/4/1
中西 輝政
(著)
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本の長さ379ページ
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言語日本語
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出版社PHP研究所
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発売日2004/4/1
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ISBN-104569578950
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ISBN-13978-4569578958
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ローマ帝国を挙げるまでもなく、歴史上、多くの「帝国」が興隆し、衰亡していった。その意味で世界史は「幾多の帝国の衰亡の歴史」といってもよい。本書で著者は大英帝国の興隆に寄与した3つの戦争と、衰退の節目となった3つの戦争に着目しつつ、いかにして大国が主役の座を降りるに至ったかを克明に描いている。第51回毎日出版文化賞、第6回山本七平賞ダブル受賞に輝く長編歴史評論。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
中西/輝政
1947年、大阪生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学人文学部助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て現在、京都大学総合人間学部教授。『大英帝国衰亡史』で、第51回毎日出版文化賞、第6回山本七平賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1947年、大阪生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学人文学部助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て現在、京都大学総合人間学部教授。『大英帝国衰亡史』で、第51回毎日出版文化賞、第6回山本七平賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : PHP研究所 (2004/4/1)
- 発売日 : 2004/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 379ページ
- ISBN-10 : 4569578950
- ISBN-13 : 978-4569578958
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 268,976位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 120位イギリス・アイルランド史
- - 975位PHP文庫
- - 1,039位ヨーロッパ史一般の本
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2015年6月1日に日本でレビュー済み
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2015年5月5日に日本でレビュー済み
大英帝国の盛衰を文庫本一冊にまとめ、主要な人物と出来事とを網羅する良書であるが、貴族及びエリート階級の讃美が鬱陶しい。「『貴族』こそ民主主義の支柱、と考えられてきたのが近代英国」と書くにとどまらず、「文化としての『貴族』をなくした社会は結局……民主主義あるいはリベラルな価値そのものを崩壊させかねない」と一般化してしまう点は、著者の価値観を示すのだろうか。
英国衰亡の原因としては「世界中に『追いついてくる』国が飛躍的に増加」したことにより「『自由貿易』の変質が迫られ」「邪悪で貪欲なイギリス帝国主義」に走ったことを挙げている。具体的には「『ドイツの脅威』を過剰に評価し、ドイツとの共存の可能性を早い時期に捨て去り、専ら……『封じ込める』ことにのみ狙いを定めた」やり方が「よき意味の『宥和の伝統』を大きく逸脱したもの」である一方、「『急ぎすぎた対米譲歩』は、この点での大英帝国再生の可能性を性急にも奪う結果をもたらした」と批判する。そして「十字軍以来の『中東支配の確立』と『石油』そして、『インド』のすべてを押さえることのできる、帝国としての『解』」が「三枚舌(外交)」であったのは「帝国(貴族)の道義的な世代交代」に原因するとしている。
本書で最も興味深かったのは、米国が日独のような敵国だけでなく、自らの覇権のためには同盟国に対してすら非情であったという事実だ。第二次大戦中に英国を援助した米国の「レンド・リース法」は「実質的に、イギリスの海外市場の大幅な放棄を意味した」だけでなく、戦後調印した「英米金融協定」は「ポンド通貨と帝国の絆を通じて成り立っていた『経済圏としての大英帝国』」を崩壊させるもので、「アメリカの『大英帝国解体』の意思がすさまじいほどの迫力と戦略性をもったものであった」ことを指摘している。そして英国の二度の大戦における勝利は、衰亡する国は戦争の勝敗にかかわらず衰亡する、という厳しい現実を突きつけている。
英国衰亡の原因としては「世界中に『追いついてくる』国が飛躍的に増加」したことにより「『自由貿易』の変質が迫られ」「邪悪で貪欲なイギリス帝国主義」に走ったことを挙げている。具体的には「『ドイツの脅威』を過剰に評価し、ドイツとの共存の可能性を早い時期に捨て去り、専ら……『封じ込める』ことにのみ狙いを定めた」やり方が「よき意味の『宥和の伝統』を大きく逸脱したもの」である一方、「『急ぎすぎた対米譲歩』は、この点での大英帝国再生の可能性を性急にも奪う結果をもたらした」と批判する。そして「十字軍以来の『中東支配の確立』と『石油』そして、『インド』のすべてを押さえることのできる、帝国としての『解』」が「三枚舌(外交)」であったのは「帝国(貴族)の道義的な世代交代」に原因するとしている。
本書で最も興味深かったのは、米国が日独のような敵国だけでなく、自らの覇権のためには同盟国に対してすら非情であったという事実だ。第二次大戦中に英国を援助した米国の「レンド・リース法」は「実質的に、イギリスの海外市場の大幅な放棄を意味した」だけでなく、戦後調印した「英米金融協定」は「ポンド通貨と帝国の絆を通じて成り立っていた『経済圏としての大英帝国』」を崩壊させるもので、「アメリカの『大英帝国解体』の意思がすさまじいほどの迫力と戦略性をもったものであった」ことを指摘している。そして英国の二度の大戦における勝利は、衰亡する国は戦争の勝敗にかかわらず衰亡する、という厳しい現実を突きつけている。
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大英帝国がどのような人たちによって、創設・発展され、そしてどのような過程を辿って終末を迎えるかが描かれている。
最も印象的なのはやはり帝国の創成・発展期である。大英帝国の創成に最も寄与したのは軍事力ではなく、勢力均衡という観点から情報を収集し、帝国にとって最善のタイミングが到来するまで行動を起こすことを控えるという帝国を動かしたエリート層の忍耐力と強靭な精神力にあったことが描かれる。
もう一つ印象に残ったのは、第二次大戦後にイギリスに変わって覇権を握ることになるアメリカのイギリスに対する厳しい戦略的な扱いである。アメリカとイギリスは兄弟のような親しい関係にあるような印象を持っていたが、アメリカの怖さを垣間見ることができた。
最も印象的なのはやはり帝国の創成・発展期である。大英帝国の創成に最も寄与したのは軍事力ではなく、勢力均衡という観点から情報を収集し、帝国にとって最善のタイミングが到来するまで行動を起こすことを控えるという帝国を動かしたエリート層の忍耐力と強靭な精神力にあったことが描かれる。
もう一つ印象に残ったのは、第二次大戦後にイギリスに変わって覇権を握ることになるアメリカのイギリスに対する厳しい戦略的な扱いである。アメリカとイギリスは兄弟のような親しい関係にあるような印象を持っていたが、アメリカの怖さを垣間見ることができた。
2010年3月24日に日本でレビュー済み
「脱欧入亜」によってアジア・アフリカで一大植民地帝国を築き上げ、ヨーロッパ大陸とは基本的に距離をとってきた大英帝国の興亡。
1492年から始まった「西洋による世界支配の500年」、その先導役となったのがスペイン帝国であったならば、その後に覇権を握ったのは、エリザベス一世のもと海賊を取り込み、「情報力」によってスペインの「無敵艦隊」を打ち破った英国であった。英国は以後、スペインに変わって大西洋世界の覇権を握り、アメリカ独立によって北米を失うという痛い経験をしたのちも、「大英帝国」としてアフリカからアジアにわたる一大植民地帝国を築き上げていった。
しかし大英帝国は、衰退過程に入ってから約半世紀にして植民地のほぼすべてを名誉ある撤退によって放棄、最終的には「脱亜入欧」によってヨーロッパに回帰することになる。米ソによる冷戦構造が崩壊したのち、1994年に雑誌連載されたこの歴史書は、大英帝国はすでに「歴史」として描かれる対象となったことを図らずも示すこととなった。
本書は、大英帝国の支配が及んだ植民地の記述は非常に少なく、なぜ英国が300年近くにわたって覇権を維持できたか、ローマ帝国やヴェネツィア共和国の比較を念頭におきながらも、もっぱら英国内部の政治経済の状況と、政治を支えた貴族と国民の精神力に重点を置いた記述を行っている。大英帝国の草創期からその終焉にいたるまでを一冊で描いた本書は、日本語でよめる本では先駆となるもので、意外にも充実した読書感をもつことができた。
私は個人的には中世から近世にいたる英国史にはまったく興味を感じることのできないのだが、大英帝国となって以後、とくにヴィクトリア女王統治下に絶頂期を経験し、以後衰退していく英国史には大いに興味をそそられた。より現代に近いというのもその理由の一つだろう。
多くの有識者が改革の必要性について論じていたにもかかわらず、成功しているがゆえに改革が徹底できないもどかしさ。もちろん著者の念頭には、本書が雑誌連載されていた当時の1994年、そして単行本としてまとまった1997年当時の日本の状況があるのだろう。16年たった2010年の現在、この国で改革は果たして実行されたといえるのだろか。ただただ迷走を続けているようにしか見えないのだが。
大英帝国に替わって世界の覇権を握ったのは米国であるが、現在この米国の覇権に挑戦するかのように視られているのが中国であることはいうまでもない。しかし、本書を読んで思うのは、英国に対する挑戦者としてヨーロッパ大陸から急速に勃興し英国を脅かす存在となったドイツが、何かしら日本に対して挑戦者として急速に勃興してきた中国を想起させるものがあるのだ。歴史の教訓として、英国はドイツを意識しすぎるあまり、衰退を早めたことが本書では語られている。もちろん当時の英国と現在の日本とでは、置かれている環境に違いがあるものの、地政学的には似たようなポジションにある英国のパターンが日本にもあてはまるのではないかと考えるのは不自然なことではないだろう。
第二次世界大戦の勝利者となった英国が、実は財政的には破綻状態にあり、あらたな覇権国となりつつあった米国を頼みの綱と思い込んでいたにもかかわらず、戦争終結後は米国からきわめてビジネスライクな対応をされた英国の姿に、われわれはいったい何をみるべきか。われわれ自身のマインドセットも大幅に変更しなくてはならないのかもしれない。こんな感想ももつのである。
「歴史にイフはない」と、当然といわんばかりにクチにするのは、二流の歴史家に過ぎないと私は思っている。人間の歴史とはさまざまな局面における政治的な意志決定が複雑にからみあい、意図せざる結果をもたらすものである以上、その時々の意志決定の是非について「イフ」を考えるのは、むしろ生産的で建設的な思考である。著者も、衰退論を研究する意味はそこにあると主張しており、大いに納得するものを感じた。
日本もすでに「下り坂の衰退過程」にあるとはいえ、なんとかして国家として、民族として生きのびるためには、国民一人一人が考え、行動していかなくてはならない。本書は、そのための直接的な参考にはならないが、現状を冷静に見つめるためにの、考えるヒントを与えてくれる本である。
「ローマ帝国」衰亡史や「ヴェネツィア共和国」衰亡史もさることながら、いまから50年前の1960年に「帝国の終わり」を公式に宣言したばかりの「大英帝国」の衰亡史こそ、まだまだ現時点においてリアリティをもって想像することのできる「歴史」である。
いかに「下り坂の衰退過程」をマネジメントしていくか、この課題を考えることは政治家だけにまかすわけにはいかないのだ。
1492年から始まった「西洋による世界支配の500年」、その先導役となったのがスペイン帝国であったならば、その後に覇権を握ったのは、エリザベス一世のもと海賊を取り込み、「情報力」によってスペインの「無敵艦隊」を打ち破った英国であった。英国は以後、スペインに変わって大西洋世界の覇権を握り、アメリカ独立によって北米を失うという痛い経験をしたのちも、「大英帝国」としてアフリカからアジアにわたる一大植民地帝国を築き上げていった。
しかし大英帝国は、衰退過程に入ってから約半世紀にして植民地のほぼすべてを名誉ある撤退によって放棄、最終的には「脱亜入欧」によってヨーロッパに回帰することになる。米ソによる冷戦構造が崩壊したのち、1994年に雑誌連載されたこの歴史書は、大英帝国はすでに「歴史」として描かれる対象となったことを図らずも示すこととなった。
本書は、大英帝国の支配が及んだ植民地の記述は非常に少なく、なぜ英国が300年近くにわたって覇権を維持できたか、ローマ帝国やヴェネツィア共和国の比較を念頭におきながらも、もっぱら英国内部の政治経済の状況と、政治を支えた貴族と国民の精神力に重点を置いた記述を行っている。大英帝国の草創期からその終焉にいたるまでを一冊で描いた本書は、日本語でよめる本では先駆となるもので、意外にも充実した読書感をもつことができた。
私は個人的には中世から近世にいたる英国史にはまったく興味を感じることのできないのだが、大英帝国となって以後、とくにヴィクトリア女王統治下に絶頂期を経験し、以後衰退していく英国史には大いに興味をそそられた。より現代に近いというのもその理由の一つだろう。
多くの有識者が改革の必要性について論じていたにもかかわらず、成功しているがゆえに改革が徹底できないもどかしさ。もちろん著者の念頭には、本書が雑誌連載されていた当時の1994年、そして単行本としてまとまった1997年当時の日本の状況があるのだろう。16年たった2010年の現在、この国で改革は果たして実行されたといえるのだろか。ただただ迷走を続けているようにしか見えないのだが。
大英帝国に替わって世界の覇権を握ったのは米国であるが、現在この米国の覇権に挑戦するかのように視られているのが中国であることはいうまでもない。しかし、本書を読んで思うのは、英国に対する挑戦者としてヨーロッパ大陸から急速に勃興し英国を脅かす存在となったドイツが、何かしら日本に対して挑戦者として急速に勃興してきた中国を想起させるものがあるのだ。歴史の教訓として、英国はドイツを意識しすぎるあまり、衰退を早めたことが本書では語られている。もちろん当時の英国と現在の日本とでは、置かれている環境に違いがあるものの、地政学的には似たようなポジションにある英国のパターンが日本にもあてはまるのではないかと考えるのは不自然なことではないだろう。
第二次世界大戦の勝利者となった英国が、実は財政的には破綻状態にあり、あらたな覇権国となりつつあった米国を頼みの綱と思い込んでいたにもかかわらず、戦争終結後は米国からきわめてビジネスライクな対応をされた英国の姿に、われわれはいったい何をみるべきか。われわれ自身のマインドセットも大幅に変更しなくてはならないのかもしれない。こんな感想ももつのである。
「歴史にイフはない」と、当然といわんばかりにクチにするのは、二流の歴史家に過ぎないと私は思っている。人間の歴史とはさまざまな局面における政治的な意志決定が複雑にからみあい、意図せざる結果をもたらすものである以上、その時々の意志決定の是非について「イフ」を考えるのは、むしろ生産的で建設的な思考である。著者も、衰退論を研究する意味はそこにあると主張しており、大いに納得するものを感じた。
日本もすでに「下り坂の衰退過程」にあるとはいえ、なんとかして国家として、民族として生きのびるためには、国民一人一人が考え、行動していかなくてはならない。本書は、そのための直接的な参考にはならないが、現状を冷静に見つめるためにの、考えるヒントを与えてくれる本である。
「ローマ帝国」衰亡史や「ヴェネツィア共和国」衰亡史もさることながら、いまから50年前の1960年に「帝国の終わり」を公式に宣言したばかりの「大英帝国」の衰亡史こそ、まだまだ現時点においてリアリティをもって想像することのできる「歴史」である。
いかに「下り坂の衰退過程」をマネジメントしていくか、この課題を考えることは政治家だけにまかすわけにはいかないのだ。
2009年8月30日に日本でレビュー済み
英国という存在が一筋縄ではいかないものです。
英国の存在が世界史の中で、どう位置づけられるのか。
歴史は人間の営みであるということはもちろんです。
だから人的要素が大きな割合を占めるということも当然です。
しかし、英国の興隆をなしえた人が、なぜ生まれ出ることができたのか。
エリザベス一世、ウィリアム・セシル、その他「剛直なエリート」・・・
英国人は何ゆえに英国たりえたのか。
考えさせられましたが、きちんとした答えは出してくれていないようです。
もちろん、こちらの理解力が不足していることが前提ですが。
英国の存在が世界史の中で、どう位置づけられるのか。
歴史は人間の営みであるということはもちろんです。
だから人的要素が大きな割合を占めるということも当然です。
しかし、英国の興隆をなしえた人が、なぜ生まれ出ることができたのか。
エリザベス一世、ウィリアム・セシル、その他「剛直なエリート」・・・
英国人は何ゆえに英国たりえたのか。
考えさせられましたが、きちんとした答えは出してくれていないようです。
もちろん、こちらの理解力が不足していることが前提ですが。
VINEメンバー
ダブル受賞というのは少々甘すぎ。
本書の狙いは、英国の衰亡の原因を、植民地を保持する経済的負担のみに求めるのは間違いであって、英国の政治を支えてきた「貴族階級」の消滅だということを示すところにある。なので、著者も述べているように、人物史を中心に描いているのが本書の特徴だ。
トルストイや内田樹も述べているように歴史は「複雑系」である。ある史実の原因が追及されるのは、端的にその原因がわからないからだ。なので、アナール一派のように経済的な原因を重視したり、リアリスト政治学者のように軍事力の衰退を原因にしたり、みな自分の得意な領域から述べたがるものなのだ。それはよいとして、では貴族階級を保存して、ノーブレス・オブリッジを持った人物を養成すればよかった、というのが著者の結論なのだろうか? 著者の保守的なスタンスからは、それをわが国に当てはめたいという口吻がみえてこなくもない。
しかし、そうではなく、むしろアリストクラティックな政治体制を、アメリカのような貴族制を前提としない政治システムに改組することを怠ったというのが敗因とみるべきだろう。大統領や首相が誰であるかによって大幅に変わってしまうような、第一人者の個性に多くを依存するような政治システムに原因が帰せられるべきなのである。
本書の狙いは、英国の衰亡の原因を、植民地を保持する経済的負担のみに求めるのは間違いであって、英国の政治を支えてきた「貴族階級」の消滅だということを示すところにある。なので、著者も述べているように、人物史を中心に描いているのが本書の特徴だ。
トルストイや内田樹も述べているように歴史は「複雑系」である。ある史実の原因が追及されるのは、端的にその原因がわからないからだ。なので、アナール一派のように経済的な原因を重視したり、リアリスト政治学者のように軍事力の衰退を原因にしたり、みな自分の得意な領域から述べたがるものなのだ。それはよいとして、では貴族階級を保存して、ノーブレス・オブリッジを持った人物を養成すればよかった、というのが著者の結論なのだろうか? 著者の保守的なスタンスからは、それをわが国に当てはめたいという口吻がみえてこなくもない。
しかし、そうではなく、むしろアリストクラティックな政治体制を、アメリカのような貴族制を前提としない政治システムに改組することを怠ったというのが敗因とみるべきだろう。大統領や首相が誰であるかによって大幅に変わってしまうような、第一人者の個性に多くを依存するような政治システムに原因が帰せられるべきなのである。