既に30巻以上に接してきた「エリア・スタディーズ」に、こんなに「掟破り」の大怪作が存在した事をこれまで知らなかったのは本当に残念。読み手によって評価が真っ二つに割れる事は必至ではあるが、「ツボに嵌った」読者には実に面白い1冊と言える。
基本的には「不偏不党」の書がほとんどの「エリア・スタディーズ」にも関わらず、本書は著者の越智氏の「民主党支持」「共和党嫌い」ついでに「日本の民主党もあまりお好きでない」というスタンスが冒頭から炸裂しており、あまり「お上品」(笑)とは形容しかねるフレーズも頻出するので、冒頭から読んでいて不愉快になる読者諸兄もおられるであろう事は想像に難くない。読み始めてすぐに「コリャだめだ」とお感じになられた方にまで本書を「お薦め」したり「最後まで読んで下さい」などと無理強いは決してしない。
しかし、私には本書はあまりに面白すぎて、ほとんど一気に読んでしまった。なるほど確かに全編通して著者の「民主党支持」「共和党嫌い」の姿勢には揺るぎは無いが、よくお読み頂ければ、著者は民主党の大統領(候補)を手放しで絶賛しているわけでも、共和党の大統領(候補)を無条件にこき下ろしているわけでも無く、各人の「やった事」に基づき「是々非々」の態度で接している事がわかる。それに気付いた上で読み進めば、著者が米国の政治家と有権者に関する様々な「歴史」を俯瞰的に眺めた上で、「現在の米国政治」にも繋がる、中々に興味深い検証を行なっている事がわかる。「共和党」「民主党」の米2大政党の「政治的立ち位置」が、発祥の当時と現在ではまるでアベコベになっている事や、両党のシンボルである「象」と「ロバ」の起源は、実は一種の「自虐ネタ」であったという著者の指摘は大変に興味深い。
本書は2012年に上梓されたもの。つまり、結果としてオバマ氏が2期目の大統領の椅子を射止める事となった大統領選の期間中に世に出たものであり、当然ながらその4年後の「トランプ政権誕生」を織り込んでいる訳では無い。しかし、「トランプ政権の惨状」を目の当たりにしている2018年の視点から本書に接すると、著者の記述には「トランプ時代の予言」とも思える示唆に富んだ事柄が少なからずあるのには驚かされる。「トランプが米国を劣化させた」という論調が散見されるが、それは「間違い」とは言えないにしても「勘違い」であるという事が、本書を読むと痛感させられる。結局、トランプのやっている事は、これまでにも「民主党の大統領」が「共和党の大統領」に代わった時に行なわれてきた事の「繰り返し」に過ぎないのである。ただ、それをやった人間がトランプという、ただの「無能」に留まらない、「精神鑑定」が必要では無いかと思わせるほどの大バカであったが故に、事柄が「強調」されているに過ぎないという事なのである。要するに「近年の共和党大統領の最悪の部分」を、これ以上無いほどに「濃縮」し、万人にわかりやすい形で提示したのがトランプ、という事だ。
著者は、「自分たちにとって全く有益では無い」政策を推進するにも関わらず共和党の大統領をヨイショする「南部白人」の「無知蒙昧」ぶりを全く容赦無くこき下ろしているのだが、何の事は無い。今の「トランプのコアな支持層」も全く同じだし、わが国の「安倍政権信者」にも同じ物を感ずる。要は、「自分たちに都合の悪い事は他の誰かのせいにして、自己研鑽もしないで誰かにしがみついていたい」人々の行動様式は、洋の東西を問わず同じという事であろう。またレーガン大統領の、あの「レーガノミクス」が、結果的に巨大な「双子の赤字」を生み出す大失敗をやらかし、続く大統領がその「負の遺産」を払拭するために多大な労苦を強いられた事を読むと、「トランプの大減税」の尻拭いをさせられる「次の大統領」の苦労が今から目に見えるようであるし、極東の某島国の「アベノミクス」破綻後の後始末を押し付けられる「次の首相(と国民)」の「地獄の日々」も目に見えるようだ。
その他、例の摩訶不思議な「選挙人」制度や、大統領選挙をめぐる「ドロドロ」の極みと思える権謀術数の凄まじさ(中国共産党の権力争いも裸足で逃げ出しそうなレベルである)に関する記述も本当に面白い。米国の政治や近現代史に関する基本的な知識や関心が無い方にはややハードルの高い書とは思うが、独特の存在意義を堅持した「暴れ馬」的な好著と申し上げたい。こんな大爆笑の書を「エリア・スタディーズ」の1冊として堂々と出版する明石書店の懐の深さと大胆さには(皮肉でなく)最大限の敬意を表したいと思う。
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大統領選からアメリカを知るための57章 (エリア・スタディーズ 97) 単行本 – 2012/5/8
越智 道雄
(著)
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アメリカ大統領選は4年ごとに行われる国民挙げての祝祭である。本書はその複雑な制度に秘められた文化的意味合いを解明し、今日の共和党右派に巣食う病巣をえぐりつつ、2012年本選のゆくえを占う。
- 本の長さ384ページ
- 出版社明石書店
- 発売日2012/5/8
- ISBN-104750335878
- ISBN-13978-4750335872
商品の説明
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
越智/道雄
1936年愛媛県生まれ。明治大学名誉教授。城西国際大学大学院非常勤講師(アメリカ文化摩擦)。日本翻訳家協会評議員、日本ポップカルチャー学会顧問、日本ペンクラブ会員(元理事、元国際委員長)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1936年愛媛県生まれ。明治大学名誉教授。城西国際大学大学院非常勤講師(アメリカ文化摩擦)。日本翻訳家協会評議員、日本ポップカルチャー学会顧問、日本ペンクラブ会員(元理事、元国際委員長)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 明石書店 (2012/5/8)
- 発売日 : 2012/5/8
- 単行本 : 384ページ
- ISBN-10 : 4750335878
- ISBN-13 : 978-4750335872
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,029,539位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 763位アメリカのエリアスタディ
- - 14,425位政治入門
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
5つ星のうち3.3
星5つ中の3.3
4 件のグローバル評価
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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ベスト1000レビュアー
7人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2018年1月12日に日本でレビュー済み
とても良い本です、政治潮流に対する深い分析と、過去から現在までの事件・エピソードに対する該博な知識で、とても参考になりました。
TeaPartyや南部白人を「てけれっつのパー」とか言っていますが、本当にてけれっっのパーだから仕方ない。語り口はベランメエ調ですが分析や客観性を損なうものではなく、快感と興奮でした。
否定的なレビューがありましたが、専門は政治とは関係無いですが留学したり赴任したり平均的日本人よりは知識がある(はず)の私にも、目から鱗的な分析が多数ありました。
TeaPartyや南部白人を「てけれっつのパー」とか言っていますが、本当にてけれっっのパーだから仕方ない。語り口はベランメエ調ですが分析や客観性を損なうものではなく、快感と興奮でした。
否定的なレビューがありましたが、専門は政治とは関係無いですが留学したり赴任したり平均的日本人よりは知識がある(はず)の私にも、目から鱗的な分析が多数ありました。
2012年7月23日に日本でレビュー済み
これまでに読んだ「○○を知るための×章」シリーズはどれも充実した内容だった。特に、現代アメリカ社会、コロンビア、ペルー、グアテマラは良かった。
しかし、この『大統領選からアメリカを知るための57章』は最悪。そして、これが某大学の名誉教授の執筆した本であることに驚愕してしまう。
まず、最初の数ページ、「本書のねらい」を読んだ時にすでに嫌な予感はした。「今日のアメリカの失業者には、貧ずれば鈍すで、共和党のこの悪辣な手口がわからない。」「普通なら中流以下はこの共和党の手口に猛反対するはずなのに、貧ずれば鈍すで逼塞したまま、あまつさえオバマを非難する始末。」など、共和党を支持するアメリカ国民を愚弄する言葉が続く。
次に、各章のタイトル。たとえば27章。「衆愚政治と暴民政治、腐敗した民主主義を操る共和党」などなど、汚く感情的な言葉が続く。
アメリカ研究を行っている者として、共和党を批判するのはもちろん自由だ。だが、研究者である以上は、あくまで冷静にアカデミックに議論を展開すべきだ。本書を読んでも、共和党という悪の組織とそれにだまされる愚かなアメリカ国民への筆者の愚痴以外に頭に残らない。1936年生まれの筆者、これが遺作になるとしたら、それはあまりに晩節を汚す行為である。
しかし、この『大統領選からアメリカを知るための57章』は最悪。そして、これが某大学の名誉教授の執筆した本であることに驚愕してしまう。
まず、最初の数ページ、「本書のねらい」を読んだ時にすでに嫌な予感はした。「今日のアメリカの失業者には、貧ずれば鈍すで、共和党のこの悪辣な手口がわからない。」「普通なら中流以下はこの共和党の手口に猛反対するはずなのに、貧ずれば鈍すで逼塞したまま、あまつさえオバマを非難する始末。」など、共和党を支持するアメリカ国民を愚弄する言葉が続く。
次に、各章のタイトル。たとえば27章。「衆愚政治と暴民政治、腐敗した民主主義を操る共和党」などなど、汚く感情的な言葉が続く。
アメリカ研究を行っている者として、共和党を批判するのはもちろん自由だ。だが、研究者である以上は、あくまで冷静にアカデミックに議論を展開すべきだ。本書を読んでも、共和党という悪の組織とそれにだまされる愚かなアメリカ国民への筆者の愚痴以外に頭に残らない。1936年生まれの筆者、これが遺作になるとしたら、それはあまりに晩節を汚す行為である。
2012年6月22日に日本でレビュー済み
目次をざっと見ると、かなり面白そうだと期待したのだが。
文章がわかりにくい。もう少しわかりやすく書いてもらいたかった。
それと、やたらと「詳しくは拙著××を参照」と、自著を紹介しているが、そんなに売れ行きが悪いんですか?
最後に、細かいことだが、人名等のカタカナ表記違和感があり、読みにくさの原因のひとつかもしれない。
ジェファーソン→ジェファースン、ニクソン→ニクスン、ジョンソン→ジョンスン、
ルーズベルト→ローズベルト、キッチン→キチン等。
こだわりがあるのでしょうか。でも、読みにくいです。編集者は気にならないのかな?
文章がわかりにくい。もう少しわかりやすく書いてもらいたかった。
それと、やたらと「詳しくは拙著××を参照」と、自著を紹介しているが、そんなに売れ行きが悪いんですか?
最後に、細かいことだが、人名等のカタカナ表記違和感があり、読みにくさの原因のひとつかもしれない。
ジェファーソン→ジェファースン、ニクソン→ニクスン、ジョンソン→ジョンスン、
ルーズベルト→ローズベルト、キッチン→キチン等。
こだわりがあるのでしょうか。でも、読みにくいです。編集者は気にならないのかな?
