もっか、大学入試をめぐる状況が混沌としています。
2012年の新課程実施と引き続く移行措置、2015~16年の新課程入試施行、
そして第二弾として来る2020年からのポストセンター試験移行などと動いており、
教育の現場では、それと軌を一にする形で、アクティブラーニングプログラムが始動しており、
10年越しの教育改革が進行中です。そうした背景には、おそらくは国際化の波とか、
これまでの実施経験をかえりみた制度化へのフィードバックなどが考えられ、
事実、「待ったなしの改革」なのでしょう。
本書は、やや遡りますが、「大学入試の戦後史」と銘打って、教育畑の著者により、
おもに生き残りをかけた大学間競争(淘汰)とその受験生への必至の影響や、
小論入試のブームと沈静化~再燃、AO入試の二重の戦略性と今後の展望、
国大協と学事行政、高大接続という棚上げ問題、多様な入試制度の裏面と思惑、
メリトクラシーと逆平等主義の格差などをテーマとして、教育という見地から、
それぞれに興味深い議論が展開されています。このうちとくには、本書の趣旨もあり、
すすむ大学間競争と受験生の再分配、そしてその動因を提供している、
従来の力学構造とそれへの反駁的潮流、即ちあらたな教育価値の台頭による揺さぶりと戻り、
といった塩梅でしょうか。
そこに一貫してみられるのはやはり、時に軋んだり調和したりする伝統的な大学間関係であり、
また系列内によっては、蜜月かと思うや、一転して離散してしまう受験生獲得競争なのであり、
それを拍車しているのが昨今歯止めがかからぬ少子化傾向であってみれば、
そのことはそのまま受験業界の動向にも影を投げ、統合再編を加速しているという現状、
章立てというよりは本書全体の随所から、それと感じられるわけです。
いずれ、公益的見地から破綻を予防するための規制強化と緩和(いわば鞭と飴)の揺動のはざまで、
各学部の主体性も揺れ動きつつ、大学当局のふるまいいかんもまた、
微妙な力学の渦中にあるといっても過言ではないかもしれません。
今後、ポストセンター試験への移行など、広く教育をめぐる状況も様変わりすることも予想されるので、
当面は推移を見守らなければならないでしょうが、大きく目測を誤らぬためにも、
この際に本書を含め、少しく戦後の教育制度の変遷を辿った書籍をおすすめしたい次第です。
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