フロイト流の夢分析/精神分析にはどうものめりこんで行くことが出来なかった自分にとって、本書、というか本書の著者のホブソンとの出会いは、まさに「喜ばしき邂逅」であった。
脳医学の関わらない夢分析/精神分析は、所詮、迷路にはまり込むしかない。
もちろん、大切な自分の意識や夢、というものを、機械による電気的な分析などで置き換えられて堪るか!という憤りや惧れは誰にも多少なりともあるだろう。
しかし、その場しのぎの「ダマシ」や、とりあえずの妥協案としてフロイト流の夢分析/精神分析を「仕方なく」導入するのならいざしらず(いや、それにも大いなる弊害があるのかもしれない)、これからの発展は、ホブソンらの脳医学に基づいた純粋に科学的な追究の方向で、なされていくものと確信できる。
ただ本書、他の彼の著作に比べ図版がほとんどなく、全部が文章。しかも、私が最初に読んだ感じでは、あまりフロイト派や一般大衆を刺激しないように(?)随分おずおずとした文体や論旨進行が時として鼻につき、ちょっとじれったい感じがした。タイトルやカバーの写真は魅力的だが、おもったより読み通すのに忍耐が必要かも。
さらに翻訳に関してだが、まだ学校で勉強中で、本書が初めてお仕事になる、という人が翻訳を担当している。それでいいのだろうか。しかもその翻訳者は、みずからあとがきの中で、自分は文系で日本語のサイエンス論文を読み通すのさえ大変、みたいな告白をしており、優秀な監訳者がいるとはいえ、一抹の不安が残る。部分的に訳が生硬なところとか、日本語の文意がちょっと不明確な部分も散見され、たとえば、青木薫みたいな人に頼んだほうが良かったのでは、という疑問も残ろう。
いずれにしろ、古いフロイト流の夢分析/精神分析にしか触れたことが無く、しかもそれに限界や疑問を感じていた人は、すぐにでも本書と格闘すべきだ。
そして出来れば、理解を深めるために、ホブソンのほかの著書にもあたってみることを強くお勧めする。
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