あ、と思った。しまった、悟られてはいけないと思ったけれど、間に合わなかった。「どうかした?」主催者である山田さんの目が細く光った。「すみません。この間から歯の調子が悪くて。歯医者さんに行かなきゃいけないのに苦手で、つい。子供みたいですよね」私がハンカチを口元に当てながらおどけると、周りの人達の間にさざめくような笑いが起きる。(「錆」より)SS大賞受賞、“縁・情”の作家が描く、思わずハッとする18編。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
堀/真潮
作家。2016年、処女作「瓶の博物館」でショートショート大賞を受賞。同年12月、ショートショート作品集『抱卵』でデビュー。WEB連載や企業広告への作品提供など幅広く活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)