東野圭吾さんの初期作品『秘密』、『手紙』などは素晴らしい小説と楽しませていただきました。両作品とも、特に『秘密』は、妻の中に亡くなった娘が入り込むフレームワークですから荒唐無稽といえばその通りなのですが、細部の書き込みが優れているので、読者は感情移入できるのです。村上春樹の、この世界から隣の世界への推移、伊坂幸太郎の一連の荒唐無稽小説しかりです。
この小説『夜明けの街で』で、お嬢様らしき人が、わずか半年ばかり非正規で働ける理由(事件の時効期日?)、会社での仕事の内容?、そして主人公である三十代の普通の男性サラリーマンが、今時、お嬢様に洗濯されて縮んでしまうような(高級)ウール素材のスーツを着ている。 「物語は細部にこそ宿る!!」というチープではあるが、有効な格言を知らない訳でもないでしょうに。
東野さんが最も認識しているのでしょうが、この小説は一頃テレビで流行った実質1.5時間ドラマ。こんなんで良いなら、担当編集者さん達と手分けして1カ月もあれば「一丁上がり!!」となるのでしょう。 最大の問題は、ご自身の心が、そのことに耐えられるか否かですものね(慣れかな?)。 ただ、私は祈ります、昔のように気持ちが入った作品に再び出逢えますことを。
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