数学の本には、完結した美しい理論を解説するタイプのものと、研究対象と道具立てを解説して今後の研究の方向を指し示すタイプのものと、少なくとも二種類あるが、本書は明らかに後者に属していると思う。
本書の目的はその「まえがき」に、「基本群とラプラシアンのスペクトルの間の関係を明確にするのに用いられる概念が、基本群の表現に付随した平坦ベクトル束である。特に無限次元ユニタリ表現に対する平坦束を考えることは、コンパクト多様体の普遍被覆空間(一般には非コンパクト)上で定義されたラプラシアンのスペクトル問題への手掛かりを与え、基本群の構造とスペクトルの性質が、互いに影響し合うことがこの考察の副産物として示される」として端的に語られている。また、『現代数学の広がり1』(岩波)の中に著者による素敵な解説(「ゼータ関数から見た数学の世界」)があり、それを一読すれば本書の理論構成とその理解のレベルを確認することが出来るので、ぜひ参照される事をお薦めしたい。
本書の初版(1988年)から四半世紀以上経過しているが、今日でも数学愛好家が一度は読みたい「抜群に面白い書」であることに変わりはないと思う。数論と微分幾何学が交錯する美しい情景を目の当たりに出来るという面からも、数学ファンには絶対に外せない一冊となるだろう。
【付記】
本書を読んだ当時に印象に残ったことを書いた感想文が残っているので、コメントとして投稿させて頂きます。個人的な印象を含めてかなり内容に踏み込んで書かれているので、本書を通読してみようという方に参考になることがあれば幸いです。
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基本群とラプラシアン―幾何学における数論的方法 (紀伊国屋数学叢書) 単行本 – 1988/3/1
- 本の長さ218ページ
- 言語日本語
- 出版社紀伊國屋書店
- 発売日1988/3/1
- ISBN-104314004991
- ISBN-13978-4314004992
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
多様体上の大域解析学の重要な対象として、ラプラシアンと呼ばれる基本的な楕円型偏数分作用素がある。本書は、そのスペクトルと多様体の幾何学的構造(特に基本群)のあいだの関係を、著者自身が開発した数論的方法を用いて明らかにしようとする。読者は、この本で、微分幾何学、位相幾何学、位相解析学、調和解析学、群論、数論などの数学の様々な分野が大域解析学のもとで相互作用する現場を目のあたりにできるだろう。現代数学の魅力をいっぱいに含んだ一冊。
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