■結論
・この本は書道ではなくお習字(書写)の教科書です。タイトルが不誠実です。
・しかも、お習字(書写)の教科書としてもいまいちです。特に筆の動かし方(運筆)についての解説が大変不親切(というよりほぼ皆無)で、初心者がこの本を読んでも運筆法がわかりません。
・よって、書道の教科書を求めている方にはもちろん、お習字(書写)の教科書を求めている方にも全くおすすめできません。私は結局、他の本を購入しました。
■詳細(長いので関心ある方のみお読みください)
■これは書道の教科書ではなく「お習字(書写)」あるいは「毛筆美文字」の教科書だと思います。そういう本があっても別に良いのですが、そうであれば、「習字の教科書」なり「美文字の教科書」なり名乗るべきです。「書道の教科書」で中身がこれでは不誠実かつミスリーディングです。
「習字(書写)」と「書道」は別物です。学校教育でも、小中学校の「書写」は国語科、高校の「書道」は「芸術科」です。手元に高校生用の書道の教科書(光村図書『書Ⅰ』)がありますが、冒頭に「書写では、文字を正しく整えて書く…書道では…芸術としての多彩な書の美に親しんでい」く、とあります。本書にあるのは前者、書写のみです。
具体的にみると、
・本書のメインはお手本練習です。書道でも臨書は重要ですが、書道で臨書するのは芸術性のある古典です。一方、本書のお手本は古典ではなく、小学校の「お習字字体」系の「整ってはいるが、それだけ」の芸術性ゼロの字体です(ここは好みもあるかもしれませんが)。書名に「書道」とつけておいてお手本がこの字体の本は他にないと思います。本書がダメだったので図書館で「書道入門」系の本を色々見ましたが、どれも古典ベースのお手本でした。入門だからといって「お習字字体」から入る必要はないということです。本書だけが古典ではなく「お習字字体」を使っているのは、本書が書名に反して「お習字の教科書」だからにほかなりません。
・しかも、本書には書写と書道の違いや、書道とは何か、について何も解説がありません。書道に「正解の字体」はない(本書の字体が正解ではない)点も触れません。何も知らなければ書写=書道と勘違いしかねません。
・仮に書写を書道の基礎と位置づけていると好意的に解釈しても、本書には「書写」から「書道」への発展を意識した項目がほとんどありません。古典を軽〜く紹介するおざなりなコラムが数ページあるだけで、本書を終えたあとにどうやって「書道」の勉強をすべきかは何も示されません。末尾の「発展編」的部分も、祝儀袋の表書きをキレイに書く等の「お習字」的内容のみです。こんな結びの「書道」の本があるでしょうか。
以上のように、本書は「書道」の教科書を名乗るにふさわしい内容ではありません。著者は書家ですが、「美文字研究家」とも呼ばれ、ペン習字(ペン美文字?)の著書が多数あります。おそらくそれを見た出版社から、「書道についても同じような本を出しませんか」と持ちかけられて出したのがこの本…といったところでしょう。いわば、著者は書家としてではなく美文字研究家としてこの本を書いていると思われます。だから、この本も「毛筆美文字の教科書」程度の内容にとどまっています。「書道」を期待して買うと完全に裏切られます。
■さらに、本書を「書写」の入門書として見ても、解説や図示がいまいち不親切でわかりにくいので、あえて本書を選ぶ理由はありません。
例えば、「穂先は送筆中も常に線の上端を通す」とだけ記載して、「実際どのように筆を運べばそうなるか」が説明されていない、といった具合です(ついでに言うと、「書道」には送筆中に穂先が上端を通らない楷書体もありますが、その点の解説もなし)。初心者が「穂先は上端を通す」とだけ言われて、実際の運筆法がわかるはずもありません。実際、他の入門書(書写、書道いずれも)をいくつか試しましたが、どれも図示なり写真なりで運筆法を懇切丁寧に解説しています。それだけ難しい点ということです。
また、お手本の図示も工夫がありません。本書も一応は補助線や線の間隔を示す○等はありますが、いまどき、もっと工夫されたわかりやすい表記があたりまえになっています。画から画への空中の筆の動きを示す、穂の移動経路を穂と半紙の接地面の形で常に図示するなど。本書にはそういった工夫はありません。
解説や図示のわかりやすさは実物を見比べれば一目瞭然なので、書店で見比べて購入することをおすすめします。
■まとめると、本書は「書道」の教科書とは言えず、「書写」の教科書としてもいまいちです。全くおすすめできません。私は結局この本で勉強する気になれず、他の本を買いました。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
基本が身につく 書道の教科書 単行本 – 2018/12/26
購入を強化する
書道の基礎をしっかり学びます。
書法の土台となる点や線の書き方から、点や線のバランスとのとり方、文字を構成する部分の組み立て方、全体の形の整え方へと、細部から全体をとらえる流れで解説しています。
課題に適した文字のお手本を見ながら書き進めることで、筆づかいや字形のコツがつかめ、「毛筆力」がアップすることを目指します。
特に、第2章では、朱墨と薄墨の2色で書いた文字を紹介し、朱色で筆の穂先が通る位置がよくわかるので、筆づかいの練習に役立ちます。また、お手本は、習字がしやすいように右側のページに大きく掲載しています。
最後の章では、日常生活に役立つ実用例(年賀状、のし袋、色紙、短冊、命名紙など)、筆を持って書きたくなるような言葉を紹介。ためらわず、いろいろなシーンで毛筆を使ってみてください。
書法の土台となる点や線の書き方から、点や線のバランスとのとり方、文字を構成する部分の組み立て方、全体の形の整え方へと、細部から全体をとらえる流れで解説しています。
課題に適した文字のお手本を見ながら書き進めることで、筆づかいや字形のコツがつかめ、「毛筆力」がアップすることを目指します。
特に、第2章では、朱墨と薄墨の2色で書いた文字を紹介し、朱色で筆の穂先が通る位置がよくわかるので、筆づかいの練習に役立ちます。また、お手本は、習字がしやすいように右側のページに大きく掲載しています。
最後の章では、日常生活に役立つ実用例(年賀状、のし袋、色紙、短冊、命名紙など)、筆を持って書きたくなるような言葉を紹介。ためらわず、いろいろなシーンで毛筆を使ってみてください。
- 本の長さ159ページ
- 言語日本語
- 出版社池田書店
- 発売日2018/12/26
- ISBN-104262154238
- ISBN-13978-4262154237
この商品を見た後に買っているのは?
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
筆使いや字形の整え方のコツをつかんで“毛筆力”をアップ!
著者について
横浜国立大学教育学部教授。書家・美文字研究家。書写・書道に関する研究や学校教員の育成をはじめ、文部科学省検定教科書の手本執筆(毛筆・硬筆)や編集も行う。NHK「ためしてガッテン」「あさイチ」「高校講座 書道I」をはじめ、数多くのテレビ番組に出演するなど、手書き文字に関するコツや書表現のスキルをわかりやすく指南し、書写・書道の魅力を広めている。『DVD付き 大人の美文字が書ける本』(講談社)、『美文字を自在に 筆ペン練習帳』(NHK出版)など、著書多数。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
青山/浩之
横浜国立大学教育学部教授。書家・美文字研究家。書写、書道に関する研究や学校教員の育成をはじめ、文部科学省検定教科書の手本執筆(猛筆・硬筆)や編集も行う。数多くのテレビ番組に出演するなど、手書き文字に関するコツや書表現のスキルをわかりやすく指南し、書写・書道の魅力を広めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
横浜国立大学教育学部教授。書家・美文字研究家。書写、書道に関する研究や学校教員の育成をはじめ、文部科学省検定教科書の手本執筆(猛筆・硬筆)や編集も行う。数多くのテレビ番組に出演するなど、手書き文字に関するコツや書表現のスキルをわかりやすく指南し、書写・書道の魅力を広めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1分以内にKindleで 基本が身につく 書道の教科書 (池田書店) をお読みいただけます。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
登録情報
- 出版社 : 池田書店 (2018/12/26)
- 発売日 : 2018/12/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 159ページ
- ISBN-10 : 4262154238
- ISBN-13 : 978-4262154237
- Amazon 売れ筋ランキング: - 66,249位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 9,192位趣味・実用
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
5つ星のうち3.8
星5つ中の3.8
35 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。