異論はあるようだが、小説を読む限り乃木将軍は戦下手として描かれている。203高地の激戦を制し、旅順要塞を陥落させた日露戦争の功績者として有名で、「軍神」とまで崇められているけれど、あえて世評に逆らうような描き方をした司馬遼太郎の意図をくみ取りたい。日露戦争の勝利で正確な国際情勢の分析を怠った日本が、無謀な日米戦争で破滅を迎えたと言う反省である。
確かに日露戦争で日本は勝ったが、乃木将軍に象徴される日本人が優れていたために大国ロシアを倒した、と言うような認識は誤りだし危険だと司馬遼太郎は言いたいのだろう。今巻では帝政ロシアの硬直して腐敗した官僚主義の弊害が、外交を怠ったバルチック艦隊の大航海の迷走や、日本軍を過大評価して失敗した陸軍の敗戦として現れたと強調されている。つまり本来勝てる筈がない戦力の日本が勝ったのは、ロシアの敵失のおかげに過ぎなかったわけだ。
乃木将軍は人間的には非常に立派な人物として描かれており、ロシア側ですら彼に大きな敬意を払っている。反対の描写も見られ、日露戦争は人が人と戦った最後の戦争だったのではなかろうか。
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- 推定ページ数: 363 ページ
- 出版社: 文藝春秋 (1999/2/10)
- 販売: 株式会社 文藝春秋
- 言語: 日本語
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