(全巻を通した感想です)
ほぼ8割方主人公である斎藤道三はいわゆる典型的なサイコパスであり、これはそのサイコパスの出世物語である。
自分の欲望を叶える為(だけ)に行う滅茶苦茶に対して、かなり無理矢理な義をでっち上げそれを強引に正当化し続ける。
僧侶の出でありながら仏などは一切信じず、商人になったかと思えば、僧侶として語れば偉人も平民の心も動かせる事を知りつくしており、必用とあればそれをフルに活用したり、そこら中で浮気(出世の道具として)をしながら「別人格なので問題ない」と奥方に真顔で言い切ったり、といったエピソードが全編を通して満載だ。
それに対して次の主人公である織田信長は義などは考えずにただただ自分の考えを押し通すワンマン創業者で、
最後主人公になる明智光秀は優秀だが真面目で、現代で言えば社長や知事になったのに性善説全開の堅物で、正論ばかりで色々と上手くいかない少し痛い人になっている。
これらの性格は今の時代でも自分達含め我々の周りにいる典型的なタイプであり、そう考えて歴史としての結果と照らし合わせると、何が正しくて何が間違っているのか少し分からなくなったりもする。
作者がこれを書いたのは氏が43歳の時であり、その時点でこれだけの人格像を認識していたという点は驚きである。
多くの歴史小説はどうしても登場人物全員がある程度作者の分身感が否めないモノが多い中で、実際の3人がこういう人物であったかどうかは別として、歴史上の著名人がそれぞれの性格の元でそれぞれの激動の人生を歩く様は非常に興味深く、全巻あっという間に読めてしまった。
- 文庫: 544ページ
- 出版社: 新潮社; 改版 (1971/12/2)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4101152047
- ISBN-13: 978-4101152042
- 発売日: 1971/12/2
- 商品パッケージの寸法: 14.8 x 10.5 x 2 cm
- おすすめ度: 65件のカスタマーレビュー
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