筆者は現役の弁護士であり、大法律事務所や企業でのインハウスロウヤーの経験もあり、現役の会社役員、自衛隊予備役でもあるレアな経歴の持主だ。その法律専門家としての調査能力を発揮して、本書では現行の大災害や緊急事態の法制の欠陥を指摘している。おそらくここまで一般向けにしっかりと法律を検討したものは本邦初であろう。
この本の焦眉はなんといっても第3章以下の自衛隊と緊急事態法制にかかる解説である。ここでは、国際貢献活動やアジアの安全保障環境の変化がもたらしている脅威に対して、海上保安庁職員や自衛隊員の生命安全が確保できず、また様々な自衛隊の活動を妨げて逆に危機を深めかねない現行法制の問題点が的確に解説されている。一般向けとはいえ、法律家が読んでも十分耐えうる論理と事実の指摘がある。これを可能にしたのは、法律の理解力だけでなく、筆者の自衛官としての経験や人的繋がりによって得られている情報の質の高さであると想像している。このような高いレベルの一般向け解説を本邦で初めて成し得た筆者の力量を称賛したい。
他方、法律的な厳密性を確保するため、条文を多用する叙述は、一般読者にはやはりハードルが高いと思われる。緊急事態法制の主要論点をカバーし尽くしている本書だけに、その点がなんとも惜しまれる。願わくば、一般向けに、大枝だけをわかりやすく示す平易な本をぜひ筆者に書いて欲しい。
筆者は憲法第9条第2項を削除し、国際紛争解決のための武力行使は禁止しつつも、自衛のための戦力保持は認め、その上で緊急事態における自衛権行使について法律によるコントロールをすべきだと主張している。筆者の意図は非常事態に憲法的秩序の下に適切に対応するため、現行の憲法の事実上の死文化を招くのではなく法の支配を貫徹すべしというものである。この主張自体には私は賛成したいが、それ以前の問題として、そもそもそういう国家が「普通の国家」であること自体が国民の間に理解されていない現実の打破が必要だ。国際社会と安全保障の環境の変化はさらに進み、隣国の軍事膨張が危機を高めている中、我が国がどんな国を目指しその中で軍事をどう位置づけるかにつき国民共通の認識を得る努力が必要だ。この点の筆者の主張に共鳴する人は多いだろう。
また、憲法第9条が平和を守ってきたという主張があるが、日米同盟や安全保障環境の変化に日本がどう対応してきたのかという事実を踏まえなければ9条、特に第9条第2項の歴史的意義は明らかにならない。私はこのような主張に懐疑的であるが、これらの点の国民的議論を推し進めるため、佐藤優氏など安全保障の専門家と筆者の対談形式の本がぜひ欲しいところである。筆者の今後のこの分野における活躍に期待したい。
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国民を守れない日本の法律――感染症、自然災害、ミサイル、侵略行為 (扶桑社新書) 新書 – 2020/11/1
田上 嘉一
(著)
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つるの剛士氏推薦!!
「感染症、自然災害、外国船の領海侵入…。
未曾有を未曾有にしないために日本の法律のこともっと知りたい!」
「緊急事態が起こってから法律をつくる」では遅すぎる!
テレビ、ラジオ、ネットメディアで活躍中の、弁護士で予備自衛官でもある著者が、
緊急事態における日本の法制度の問題点について、分かりやすく解説!
◎コロナ対策で法律の根拠なき自粛要請を繰り返した日本
◎日本の災害法制はシン・ゴジラに対抗できるか
◎北朝鮮のミサイル攻撃に対する「敵基地攻撃能力」は憲法に違反しない
◎マンガ『空母いぶき』が描く尖閣諸島への中国人上陸に日本は対応できない
◎有事の際でも警察と同じポジティブ・リストに縛られる自衛隊
◎特措法ばかりで基本法なし、ツギハギだらけの緊急事態法制……他
【目次】
第1章 なぜ日本の新型コロナウイルス対策は遅れたのか
新型コロナウイルスと新型インフルエンザ対策特措法/感染症法・検疫法・出入国管理法/感染症に立ち向かえる日本になるために
第2章映画『シン・ゴジラ』に学ぶ災害への対応
『シン・ゴジラ』と災害大国日本/緊急災害対策本部の設置と災害緊急事態の布告/災害対処にあたる内閣官房/自衛隊はゴジラに立ち向かうことができるか
第3章自衛隊とシビリアン・コントロール
『機動警察パトレイバー』と治安出動/警察と軍隊は何が違うか/自衛隊発足の経緯と歪められた文民統制/日本のあるべき「シビリアン・コントロールのかたち」とは
第4章日本は敵基地攻撃能力を持つことができるか
現実が虚構に追いついた『?空母いぶき』/専守防衛と敵基地攻撃能力/専守防衛はいつまで堅持できるのか
第5章『空母いぶき』の尖閣諸島中国人上陸事件を防げるのか
「切れ目のある安全保障」グレーゾーン事態/現実の脅威として存在するグレーゾーン事態/日本は目の前の脅威に対応できるのか
第6章緊急事態条項を持たない日本国憲法
「国家緊急権」とは/日本の緊急事態法制の現状/緊急事態法制の目的は人権保障にあり 第7章憲法9条をどう考えるか
「感染症、自然災害、外国船の領海侵入…。
未曾有を未曾有にしないために日本の法律のこともっと知りたい!」
「緊急事態が起こってから法律をつくる」では遅すぎる!
テレビ、ラジオ、ネットメディアで活躍中の、弁護士で予備自衛官でもある著者が、
緊急事態における日本の法制度の問題点について、分かりやすく解説!
◎コロナ対策で法律の根拠なき自粛要請を繰り返した日本
◎日本の災害法制はシン・ゴジラに対抗できるか
◎北朝鮮のミサイル攻撃に対する「敵基地攻撃能力」は憲法に違反しない
◎マンガ『空母いぶき』が描く尖閣諸島への中国人上陸に日本は対応できない
◎有事の際でも警察と同じポジティブ・リストに縛られる自衛隊
◎特措法ばかりで基本法なし、ツギハギだらけの緊急事態法制……他
【目次】
第1章 なぜ日本の新型コロナウイルス対策は遅れたのか
新型コロナウイルスと新型インフルエンザ対策特措法/感染症法・検疫法・出入国管理法/感染症に立ち向かえる日本になるために
第2章映画『シン・ゴジラ』に学ぶ災害への対応
『シン・ゴジラ』と災害大国日本/緊急災害対策本部の設置と災害緊急事態の布告/災害対処にあたる内閣官房/自衛隊はゴジラに立ち向かうことができるか
第3章自衛隊とシビリアン・コントロール
『機動警察パトレイバー』と治安出動/警察と軍隊は何が違うか/自衛隊発足の経緯と歪められた文民統制/日本のあるべき「シビリアン・コントロールのかたち」とは
第4章日本は敵基地攻撃能力を持つことができるか
現実が虚構に追いついた『?空母いぶき』/専守防衛と敵基地攻撃能力/専守防衛はいつまで堅持できるのか
第5章『空母いぶき』の尖閣諸島中国人上陸事件を防げるのか
「切れ目のある安全保障」グレーゾーン事態/現実の脅威として存在するグレーゾーン事態/日本は目の前の脅威に対応できるのか
第6章緊急事態条項を持たない日本国憲法
「国家緊急権」とは/日本の緊急事態法制の現状/緊急事態法制の目的は人権保障にあり 第7章憲法9条をどう考えるか
- 本の長さ327ページ
- 言語日本語
- 出版社扶桑社
- 発売日2020/11/1
- 寸法10.9 x 1.5 x 17.3 cm
- ISBN-104594085393
- ISBN-13978-4594085391
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
感染症、自然災害、外国船の領海侵入…。未曾有を未曾有にしないために日本の法律のこともっと知りたい!
著者について
田上嘉一(たがみよしかず)
弁護士・予備自衛官。1978(昭和53)年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学法学部、同大学院法学研究科卒(法学修士)、ロンドン大学クィーン・メアリー校修士課程修了(法学修士)。アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて、企業のM&Aやファイナンス、危機管理などに携わり、外資系投資銀行やIT企業にて企業法務に従事した経験を持つ。現在は弁護士ドットコム株式会社取締役。陸上自衛隊三等陸佐(予備自衛官)でもあり、毎年の訓練に参加しつつ、防衛法学会、戦略法研究会に所属し、安全保障法制、国際法の研究を行っている。TOKYO MX「モーニングCROSS」などテレビ・ラジオ番組やYahoo!ニュース、東洋経済オンラインなどのインターネットメディアにて、国際政治や安全保障について法律の観点から幅広く発信している。
弁護士・予備自衛官。1978(昭和53)年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学法学部、同大学院法学研究科卒(法学修士)、ロンドン大学クィーン・メアリー校修士課程修了(法学修士)。アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて、企業のM&Aやファイナンス、危機管理などに携わり、外資系投資銀行やIT企業にて企業法務に従事した経験を持つ。現在は弁護士ドットコム株式会社取締役。陸上自衛隊三等陸佐(予備自衛官)でもあり、毎年の訓練に参加しつつ、防衛法学会、戦略法研究会に所属し、安全保障法制、国際法の研究を行っている。TOKYO MX「モーニングCROSS」などテレビ・ラジオ番組やYahoo!ニュース、東洋経済オンラインなどのインターネットメディアにて、国際政治や安全保障について法律の観点から幅広く発信している。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
田上/嘉一
弁護士・予備自衛官。1978(昭和53)年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学法学部、同大学院法学研究科卒(法学修士)、ロンドン大学クィーン・メアリー校修士課程修了(法学修士)。アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて、企業のM&Aやファイナンス、危機管理などに携わり、外資系投資銀行やIT企業にて企業法務に従事した経験を持つ。現在は弁護士ドットコム株式会社取締役。陸上自衛隊三等陸佐(予備自衛官)でもあり、毎年の訓練に参加しつつ、防衛法学会、戦略法研究会に所属し、安全保障法制、国際法の研究を行っている。テレビ・ラジオ番組やインターネットメディアにて、国際政治や安全保障について法律の観点から幅広く発信している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
弁護士・予備自衛官。1978(昭和53)年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学法学部、同大学院法学研究科卒(法学修士)、ロンドン大学クィーン・メアリー校修士課程修了(法学修士)。アンダーソン・毛利・友常法律事務所にて、企業のM&Aやファイナンス、危機管理などに携わり、外資系投資銀行やIT企業にて企業法務に従事した経験を持つ。現在は弁護士ドットコム株式会社取締役。陸上自衛隊三等陸佐(予備自衛官)でもあり、毎年の訓練に参加しつつ、防衛法学会、戦略法研究会に所属し、安全保障法制、国際法の研究を行っている。テレビ・ラジオ番組やインターネットメディアにて、国際政治や安全保障について法律の観点から幅広く発信している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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カスタマーレビュー
5つ星のうち4.0
星5つ中の4
24 件のグローバル評価
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年12月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
テレビやインターネットの情報を見ていると、どうしても自分の意見に近いものを収集してしまうものですが「法律」というフィルターを通して見るだけで、より一層、発信者の意図や提示している問題点が浮き彫りにできるという意味で、良著であると考えています。
本文では、コロナウイルスの話題から、自衛隊の話まで。現行の法制度について、丁寧に説明を試みながら、ご自分の趣味であろう「シンゴジラ」や「パトレイバー」の話題をチョイチョイ挟んで、より深い考察と、理解を深めようとして要ることも興味深いです。
コロナ禍のような不測の事態において、自らが判断する上で、カントの言う「カテゴリー」ではないが、この本を傍においておくことによって、情報を切り分けることが出来るのではないかと考えた次第です。(実際に私は、その様に利用しております)
しかし、現役予備自衛官という立場からか、「ゴーストップ事件」など、旧日本軍の事件については、多くのページをさいておられますが、「田○神論文問題」や某隊長の「駆けつけ警護発言」などには言及されず、シビリアンコントロールと文民OR文官統治の議論がなされていることに、若干の不満がありました。。。。
何れにしても、法律家の立場から、膨大な資料から、私も含めた一般市民に一つの判断する基準を与えてくれる必読の書であると思います。
本文では、コロナウイルスの話題から、自衛隊の話まで。現行の法制度について、丁寧に説明を試みながら、ご自分の趣味であろう「シンゴジラ」や「パトレイバー」の話題をチョイチョイ挟んで、より深い考察と、理解を深めようとして要ることも興味深いです。
コロナ禍のような不測の事態において、自らが判断する上で、カントの言う「カテゴリー」ではないが、この本を傍においておくことによって、情報を切り分けることが出来るのではないかと考えた次第です。(実際に私は、その様に利用しております)
しかし、現役予備自衛官という立場からか、「ゴーストップ事件」など、旧日本軍の事件については、多くのページをさいておられますが、「田○神論文問題」や某隊長の「駆けつけ警護発言」などには言及されず、シビリアンコントロールと文民OR文官統治の議論がなされていることに、若干の不満がありました。。。。
何れにしても、法律家の立場から、膨大な資料から、私も含めた一般市民に一つの判断する基準を与えてくれる必読の書であると思います。
2021年3月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
保守論客の本は難しいモノが多いが、この本は分かり易い。
2020年11月18日に日本でレビュー済み
新型コロナウイルスから入って災害、国防の問題点に触れながら、最後は改憲の必要性にたどり着く流れになっています。
改憲というと敬遠する方もいると思いますが、予測不能な事態が起きた際、「人の支配」でなく「法の支配」を効かせるために、改憲や緊急事態条項を持つ法整備を求めるという論旨は、イデオロギーと関係なく広く読まれて良い本だと思いました。
あと、政治家と自衛隊の微妙な距離感を感じさせるあたりは、勉強になりました。
ただ、やはり条文などが並んでいたり、使われている言葉に馴染みが薄いものが多いなど、内容が難しい部分があります。新書のわりには、割と腰を据えて、じっくり読む必要のある本だと思いました。
改憲というと敬遠する方もいると思いますが、予測不能な事態が起きた際、「人の支配」でなく「法の支配」を効かせるために、改憲や緊急事態条項を持つ法整備を求めるという論旨は、イデオロギーと関係なく広く読まれて良い本だと思いました。
あと、政治家と自衛隊の微妙な距離感を感じさせるあたりは、勉強になりました。
ただ、やはり条文などが並んでいたり、使われている言葉に馴染みが薄いものが多いなど、内容が難しい部分があります。新書のわりには、割と腰を据えて、じっくり読む必要のある本だと思いました。
2020年12月11日に日本でレビュー済み
歴史や外国の法制にも十分目配りのある、とても冷静かつ論理的な論旨で、大変説得力があります。
マスコミや学者、政治家は、これくらいの基礎をもって、真面目に仕事をしてほしい。
マスコミや学者、政治家は、これくらいの基礎をもって、真面目に仕事をしてほしい。
2020年12月3日に日本でレビュー済み
第一線で活躍する若手弁護士にして予備自衛官の著書だからこそ説得力を持つ、本気の「叩き台とすべき提言」。日常の平和を守るためには、非常時についてしっかり考えて準備しなくてはならないと納得。


