1年6ヶ月ほど都筑吃音相談室の下で訓練を受けていた者です。(合計10万円以上の出費でしたが、自由診療であるため1回あたり8000円が相場なので一概に高いとは言えませんが)
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追記 2019年9月7日
平均3年の訓練のため、8000円×36ヶ月で288000円かかる見積もりになります。しかしながら、顕著な効果が見られないにも関わらず約30万円も吃音者(クライアント)からとるなんて馬鹿な話があるのか疑問です。もし、このレビューを読んでおられる方で顕著な効果が得られなかった方がいらっしゃれば、国民生活センターに相談して見てください。きっと、力になってくれると思います。都筑先生は、生活するのに必要なお金だとおっしゃるかもしれませんが、サービスを提供している以上クライアントの要求に応えられなければ責められるのも当然です。どうか、泣き寝入りしておられるであろう吃音者の方々、そしてそのご家族にこのメッセージが届いてほしいです。自信を持ってください、あなたは決して間違えてなんかいませんよ!
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毎日与えられた拮抗刺激(イメージトレーニング)を続けてきましたが、結果的には以前よりも吃音が目立つようになりました。分かりやすく言うと、難発から連発に移行し誰がどう見てもどもっていることが分かるようになりました。都筑先生からは、これが治ってきている(楽になる)ということらしいのですが、私にはどうにもこれが楽になっているようには感じられませんでした。何故このような解釈のズレが生まれるのか、その理由は少なくとも2つ挙げられます。1つ目は、両者の間接法についての解釈に大きなギャップが存在していたこと。2つ目は、吃音の困難さを測る尺度としてBloodsteinの吃音進展段階表を採用していることが挙げられます。
まず1つ目についてですが、都筑先生本人の言葉を借りるなら、直接法は意図的操作により人為的に発話の流暢性をコントロールすることを目標としている一方で、間接法では一切の意図的操作(工夫)を手放し、ありのままの発話を目標にしているということです。簡単に言えば、どもらずに話したい人は直接法、どもったままでも(できるだけ)気にしない状態を目指したい人は間接法が向いていることです。ここに、「吃音が治る」という非常に曖昧であり、かつ多くの吃音のある方にとっては「どもらずに流暢に話せる」という意味に取られるであろう魔法のコトバを使ってしまったが為に両者の間に解釈の食い違いが生まれたのだと思います。
2つ目は、1つ目と大きく関係していますが、Bloodsteinの吃音進展段階表では、いわゆる隠れ吃音が一番深刻な状態であり(第4層)逆に目立っている人の方が軽度(第3層)であります。それに基づけば、確かに私は改善したのかもしれませんが、私は吃音で目立つことがどうしても耐えれない弱い人間なのかもしれません。ここまでくると精神論の域に入ってきているような気もしますが(汗
そもそも、PET(Positron Emission Tomography)やブレインイメージングからどもった時の脳活動は流暢に話した時の脳活動とは異なっており、発話症状は頭の中で起こっている。そして、発話行動は情動系からの影響を強く受けている。とのことですが、それとメンタルリハーサル法を行うことで脳活動レベルで吃音が改善することには一切の繋がりがありません。また、情動系という曖昧な言葉でごまかされそうになりますが、感覚的にはある程度緊張している方が話しやすい吃音のある方も一定数おられるという事実と大きく矛盾しております。それこそ、非科学的であり論理の飛躍があります。ソースがなくエビデンスレベルが低くなり申し訳ないが、吃音は無意識の自動化された発話に関する脳の障害であり、内的タイミング障害であるとも言われていることから、情動系が不安定だからどもりやすいという考えは非常に浅はかなものであり、メンタルがどうとかいう精神論になる危険性があります。
色々とお伝えしたいことがあり、まとまりのない文章になってしまい申し訳ないが、最後に1つだけ伝えたいことがあります。「脳」とか「メンタルトレーニング」、「最新の脳科学に基づく」などのワードは如何にも聞こえがよくもっともらしく思えるかもしれないが、実際には成人の吃音の治癒は現状不可能に近く、有効率74%という数字も実は全くエビデンスのない数字である可能性があることを心に留めておいてほしい。(日本音声言語医学会に2本ほど論文があがっているが、そもそも日本音声言語医学会とは世界的に権威ある学会なのか疑わしいし、国内誌と海外ではかなりのレベル差があることも忘れてはいけない。海外の研究者や臨床家に触れて淘汰されてこそ真価が問われるのである。その点、2018年の広島で行われた吃音・クラタリング世界合同会議ではあまり評価は良くなかったようだが。。。)
ここまで言っておいて説得力がないかもしれないが、幾らかの吃音のある方には効果があるとは思います。
あと、もし読んでおられるなら臨床家と研究者の方には吃音のサブグループ化を進めてもらいたいです。
以上、長文失礼いたしました。
参考文献
改定 吃音(言語聴覚療法シリーズ) 都筑 澄夫 編著 建帛社
吃音は治せる (有効率74%のメンタルトレーニング (ビタミン文庫シリーズ)) 都筑 澄夫著 マキノ出版
間接法による吃音訓練 自然で無意識な発話への遡及的アプローチ ー環境調整法・年表方式のメンタルリハーサル法 都筑 澄夫 編著 三輪書店
追記
現在この本は絶版になっていますが、http://www.tsuzuki-kitsuon.jp/に都筑先生本人による詳しい説明が書かれているのでわざわざ中古で買う必要はありません。
あと、現状このRASS(Retrospective Approach to the Spontaneous Speech)における年表方式のメンタルリハーサル法が心理療法の範疇を出ることはなく(何故STが行うのか甚だ疑問でありますし、臨床心理士などの専門分野なのでは?)、先生が仰る正常域に対して流暢な発話を期待することはあまり現実的ではありません。また、効果についても他のCBT(認知行動療法)とあまり遜色ないように思われます。
追記プラスα
この年表方式のメンタルリハーサル法の背景に何があるのか考察してみようかと思い追記させていただきます。
メンタルリハーサル法の核であるキーワードは「過去」であり、この「過去」に焦点を当てた療法が精神分析や交流分析と呼ばれるものです。特に交流分析では「毒になる親」のようないわゆる毒親で知られた、現在の困難は幼少期の親の接し方に問題があるという立場を取ります。そして、ここから派生したものが愛着障害であると私は捉えています。愛着障害については都筑先生本人も言及していたものです。簡単に言えば、吃音のある人が吃音で悩んだり、そもそも吃るのは親の愛情不足であるということです。本当にそうでしょうか?確かに、一部の吃音のある人の中には劣悪な家庭環境で育てられた人もいますが、多くは愛情のある優しい家庭で育ってきた方が多いように思います。これは吃音のある人が一般的に人に優しい傾向にあることからも分かります。つまり、現実と矛盾している訳です。また、現在のCBTの臨床家からは、このような過去に原因を求める方法は否定されて(時代遅れとされて)きています。
以前から言われていることですが、吃音のある人は何かしらの発達障害を併発している傾向が高く、7割の吃音のある人がHSP(Highly Sensitive Person)であるとも言われていますから、吃音のある方が吃音で悩み、時に命を絶ってしまうのは上記の理由から考えたほうが妥当なのではないでしょうか?
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追記 2019年11月10日
効果がなかったのが(感じられなかったのが)、自分だけなのかと思っていたのですが、Twitterの吃音コミュニティを覗いてみると同じような方が続出しており、正直ホッとしました。というか、呆れました。
少し専門的なお話をすると、Menziesらによれば認知行動療法で吃音による不安や鬱などの二次障害を改善させることは可能ですが、吃音の流暢性自体を改善、向上させることは報告されておりません。
また、医学の世界ではエビデンスレベルという有名な尺度があり、レベルⅠ〜レベルⅥまであり数字が小さい方がエビデンスレベルが高いことになります。しかしながら、おそらくこのRASSにおける年表方式のメンタルリハーサル法はエビデンスレベルⅤであり記述研究(症例報告など)レベルです。残念ながらまだまだ研究段階にある治療法であると言えます。勿論、この程度では海外の学会で発表なんてできません。
しかしながら、なぜこのMR法が重宝されるのでしょうか?理由は単純で、比較的容易に講習会を受けたSTなら誰でも行えるからです。お金も大してかかりません(専用の機材やソフトウェアがいらないという意味です)。セラピスト、クライアント両者にとって大した労力もかかりません。難しい技術も必要ありません。極みつけは、成人の吃音者に行える数少ない治療法ということです。他の流暢性形成法や軟起声、統合的訓練についてはあまり統一的なマニュアルが確立されているわけでもなく、おそらくST各々が手探りで進めることになります。カナダでは、包括的吃音訓練(Comprehensive Stuttering Program)。オーストラリアでは、キャンパーダウン(Camperdown)が有名ですがどれもSLPがある程度継続的に指導する必要があり、人手不足が問題になります。
そういった意味で、セラピスト、クライアントの両者にとって救世主的な存在なのかもしれません。また、平均3年かかる訓練であるため、比較的長くクライアントを繋ぎ止めておくことができるというのも魅力なのかもしれません。クライアント側も、平均3年かかるから効果がなかなか出なくても、まだまだ訓練が足りないのかもしれない。努力不足なのかもしれない。と思い込むことで、なかなか辞める勇気が持てないこともあって相乗効果でダラダラ続いていくのだと考えております。
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以上で終わりとなります。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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