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司馬遼太郎

司馬遼太郎全講演[4] 1988(2)-1991 (朝日文庫) 文庫 – 2003/12/12

by 司馬遼太郎 (著)

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商品の説明

内容（「BOOK」データベースより）

江戸期における日本とオランダの関係性を丹念に追った「オランダの刺激」や、倫理面から日本仏教を鋭く読み説いた「日本仏教に欠けていた愛」、手探りで文章日本語を構築した明治の文豪への思いを語った「漱石の悲しみ」など、講演18本を収録したシリーズ第4巻。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

司馬/遼太郎
1923年大阪府生まれ。大阪外国語学校蒙古語部卒業。60年「梟の城」で第42回直木賞を受賞。75年芸術院恩賜賞受賞。93年文化勲章受章。96年死去。主な作品に、『国盗り物語』(菊池寛賞)『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)『ひとびとの跫音』(読売文学賞)『韃靼疾風録』(大仏次郎賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

文庫: 411ページ
出版社: 朝日新聞社 (2003/12/12)
言語: 日本語
ISBN-10: 4022643226
ISBN-13: 978-4022643223
発売日： 2003/12/12
梱包サイズ: 14.8 x 10.6 x 2 cm
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精神の輝きを印象深く表現！

2013年2月15日

形式: 文庫Amazonで購入

筆者・司馬遼太郎さんの事を「ものを見る達人」の一人であるとの解説者のコメントがある通り、誠に偉大な表現者の一人でありました。本書において繰り広げられた講演は、昭和六十三年から平成三年の四年間で十八本もの多数にのぼってゐます。どれ一つとっても手を抜くといふ事はなく、思ひを振り絞るやうに珠玉の名品として豊かに紡いでゐるのであります。日本史の中に潜んでゐる輝きのさまをこれでもかこれでもかと連鎖してつくり上げて行ってゐるのであります。その中で、特に印象深く私の心に残ってゐるのが、「義務について」の話であります。会社の朝礼においても心を籠めて話させていただきました。キリスト教変革期に起きたプロテスタンテイズムの清い精神の勃興のドラマを適格に表現してゐます事に驚きを感じると共に、それを江戸期の武士にも類比した精神を自らの営為として創作してゐた事に感動しました。このやうに筆者は精神の輝きを大切にしたのであります。よりよく生きるためのよき糧であります。

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ゲバジジ

日本を支えてきた「倫理観」とこれからの日本

2004年4月7日

形式: 文庫

司馬遼太郎全講演はどれも凝縮度の高い知識の宝庫ですが、この4巻は私の関心事項も大きく取り上げられており、大変面白く、自分の為のメモノートまで作りました。講演は88年から91年のものですが、この時期、ベルリンの壁とソ連の崩壊、バブル経済の崩壊など世界は大激動期でした。いまだ、日本は立ち上がれず、ビジョンももてない状態が続いていますが、司馬氏の講演を読むと我々の進むべき進路と我々が精算すべきことが書かれているような気がします。ここでは一つのキーワードに集約してみます。「義務」という概念です。ここでは主に公への義務とします。いまでは当たり前のように使っているこの言葉も、明治までの日本語にはなかった。dutyの翻訳語として義務という言葉を作ったのです。同様に明治20年くらいまでに２万近い新しい言葉が作られました。驚きですね。翻訳の過程では、プロテスタントの厳しい自律心がベースになっており、さらには、侍の精神にも通じるところがあったのでしょう。こうして、勤勉、正直といった近代における日本人のキャラクターが定着し、キリスト教のような規範のない社会でそれにかわる役割を果たした。そして、「和魂洋才」でわずか数十年で近代化になんとか成功します。ところが、そのあとがいけません。太平洋戦争という馬鹿な戦争をし、あげくの敗戦、戦後は経済第一の復興、経済成長の道を歩みましたが、それも崩壊、いまあるのは未来に対する不安です。司馬氏は、日本は一度も「世界の大人の組合」に入ったことがないと言います。もう入らなければいけない時期に来ているとも。それは政府だけでなく我々一人ひとりが。そして、その覚悟が必要だとも。後期の司馬さん作品の多くは、日本の未来を危惧するとともに、「遺言」のように大事な言葉を残されている。そんな感じを強く持った本です。みなさん、ぜひ、読んでください。

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とし坊

世界の文明基準から、日本を見極められる司馬さんの洞察に感嘆。

2005年5月3日

形式: 文庫

　これは、1988年から91年の間に講演されたものを集めたものです。
　89年に昭和が平成と改元されたのですが、司馬さんの視点も明治と昭和を意識した内容が含まれています。「大隈重信が目指した文明」や「オランダの刺激」などは、その象徴的講演です。
　この時期の司馬さんの講演は、「宗教」「国家」「文明と文化」などを基調にしたものが印象的です。「心と形」「日本仏教に欠けていた愛」などでは、宗教の本質と哲学的な思考に力をいれられており、国家と文明に係わる宗教の役割が事細かに語られている点は、興味深いものがあります。
　また、「義務について」「踏み出しますか」などは、世界からみた日本の文明基準を客観的に述べられているばかりでなく、国連の常任理事国入りを例に出して「常任理事国であろうとなかろうと、それは形にすぎません。日本が精神として、世界のオトナとして、世界の面倒がみられるか、つまり、文明の基準たりうるか、そういうことです」と、婉曲に日本の精神を問いかけておられます。
　宗教をはじめとして哲学的な視点から、現実的な世界事象を見極められている司馬さんの広く深い洞察に、いつもながら感嘆してしまいます。

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ゲバジジ

私は仏教徒ですと、なぜ、胸をはって言えないのか。

2004年4月7日

形式: 文庫

４０くらいまで、外国人から宗教について聞かれた時、「私は無宗教です」と答えていました。しかし、いまでは変わりました。余計な誤解は与えないほうがいいので、「仏教徒です」と答えるようにしています。
正直、心の中は釈然としません。なぜなのか。この本のなかの「心と形」を読むと日本人の宗教心を古来からの歴史と神道、仏教、さらにはキリスト教との関係にも触れながら、じつに簡明に話してくれています。目からウロコとはこのことでしょうか。いまの日本人にとって、仏教と聞くと、すぐ連想するのが「葬式」でしょう。葬式と法事以外にはほとんど縁がありません。それも、ありがたい、というより仕方がないという感情の方が強いのではないでしょうか。その意味で日本の仏教は堕落したと司馬氏は言っています。一言で仏教といっても、ブッダの原始仏教から大乗仏教、小乗仏教とあり、さらに、それぞれの土地、地域の土着の信仰との習合もあるので、一口には言えませんが、ここではあくまで日本の仏教に限定します。なぜ、死んだら戒名をつけなければいけないのか。葬式以外に日本の寺、坊主はなにをしているのか。この混迷した時代に仏教界からの発言は皆無に近い。司馬さんによると、僧侶が葬式に関与しだしたのは室町時代からとのこと。それも金が目的でした。そして、いつのまにか、寺内に墓地までつくるようになりました。江戸時代には幕府から戸籍管理でもある宗門人別帳を任され、それがさらに大きな利権になっていきます。仏教の悪口ばかり書いているようですが、司馬さんは本来仏教好きだそうです。私もそうです。古神道も好きです。特定の宗派への信仰はありませんが、古神道を含めた世界に、信じられるサムシングを感じます。そう思ってきた、私にとってこの本の「心と形」という講演はまさに珠玉のような内容です。私は死んでも葬儀はしない、墓も造らない、散骨と決めていますが、そうした気持ちを歴史的に、あるいは宗教的に支えてくれました。「一切空」。とても共感しました。

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