まず、本作、小学館文庫の表紙に食指が動かされた。長い長い中華史の君臣、将兵、民衆の苦衷や志を物語るかのような崇高なる迫力が、世界的歴史書、史記の表紙には相応しい。個人的には第2巻表紙が最も美しいと見る。
内容も素晴らしいという簡単な言葉だけでは語り尽くせぬ深みと教えを感じ取ることができ、史実を丹念に追う構成が厚みを与えている。
大長編歴史書、三国志全60巻を脱稿し、そして老境に臨み大歴史家、司馬遷公の遺した史記を前に、後世に漫画を通じて国民に歴史とは何か、国家とは何か、そして人とは何かを、等身大の主人公から中華全土を股にかけて描き切った横山先生、そして司馬遷公の歴史を超えた秀逸なる共作と言えるだろう。
時として惨忍苛烈、時として流麗優美、時として権謀術数の錯綜する深遠広大な内容で、流石にある程度の丁寧な読みが必要とはなるが、巷に散見されるような下品な作調は排した、淡々として良い意味で抑揚を抑えた的確な美しいストーリー構成が各話ごとに続いていき、一話一話ごとの主人公や歴史の流れ、顛末、そして折々に現れる故事由来や教示、解説が分かりやすい。
春秋戦国から項羽劉邦の覇権争奪、漢帝国勃興とその後を、様々な士々にフォーカスを合わせながら物語が紡ぎ出されてゆく。
国家論と見ることもできるし、人生論と見ることもできる。
私事となるが大学受験の頃、日本史ではあるが、テキストを傍目に小学館漫画セットを読み込み、センター攻略に私なりの成果を為した思い出がある。
歴史とは事実や事象を知るだけの詰め込みならば、ただ無味淡白な苦痛を強いる暗記作業に過ぎない。一方で人間味あるストーリーテリングが伴えば、そこに後世に遺し続ける人間達の足音と愉しさや哀しみを感じ取ることができるものと感じている。
死ぬまでに、そして出来得るだけ早い内に読んでおきたい優れた名著には間違いない。
太史公司馬遷の想いと、それに漫画というビジュアルに訴える息吹を与えてくれた横山先生に、僭越で過小ながらも星5つの勲章を授けたい。
史記 全11巻セット (小学館文庫) (日本語) 文庫 – 2011/3/1
横山 光輝
(著)
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言語日本語
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出版社小学館
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発売日2011/3/1
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ISBN-104091929095
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ISBN-13978-4091929099
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登録情報
- 出版社 : 小学館 (2011/3/1)
- 発売日 : 2011/3/1
- 言語 : 日本語
- ISBN-10 : 4091929095
- ISBN-13 : 978-4091929099
- Amazon 売れ筋ランキング: - 93,350位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
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2017年9月27日に日本でレビュー済み
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ぼくは連続して、11巻すべてを読破出来なかったです。
読みながら途中までで止まり、また最初から読み直しては、途中で止まりと、
読み進めるのにとても時間を要しております。それだけ考えさせられるからでしょうか。
もし中国の歴史入門(横山光輝先生の漫画で)としてこちらをお考えなら、
先に三国志の方をオススメします。
つい最近で言えば、キングダムから入るのもよいのでは?
と感じております。
ほんとうにその魅力に引き込まれますよ。(笑)
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つい最近で言えば、キングダムから入るのもよいのでは?
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