事典の名称は著者が「おわりに」の項で述べているように、当初の構想では事典形式で執筆する予定だったが、制作中にこの案は放棄された。勿論一冊の単行本でロ-マの世界全体を事細かに検索することは不可能だし、彼らは盛り込む内容に対する紙幅の制限などから読者に、より興味が持てる読み物としての軌道修正をしたようだ。確かにその点では解説、資料共に専門書の域に達していて決して期待外れではなかったが、日本語による本格的なロ-マ史事典は現行において存在しないので、途中で計画を変更せざるを得なかったことは残念だ。例えばカ-ル=ヴィルヘルム・ヴェ-バ-の『古代ロ-マの日常生活』は文字通りアルファベット順に語彙を解説する事典だが、非常に興味深く検索も苦にならない。本書ではロ-マ小史までは正確を期するあまり慎重になり過ぎて、筆致に勢いを欠いて説得力に今ひとつの感がある。歴史的に解明されていない部分に関してはどっちつかずの説を展開すると、かえって難解という印象を与えかねない。その点ではコンセプトは異なっているが、むしろ著者の主張を強く前面に出したモンタネッリの『ロ-マの歴史』や、最近出版された本村凌二氏の『教養としてのロ-マ史の読み方』が流暢で面白く読める。
全体は入門編と古代ロ-マの社会と生活の2部から構成されていて、後半部分は比較的事典に近い形式でロ-マ時代の様々な事象、政治体制や文化、生活など専門的な範疇に踏み込み、コラム欄では特に注目すべき題材を詳細に扱って更に史実の補填となっている。本文と同ページの下段に註欄が設けられていて、即座に解説に目を移すことができるのは親切な配慮だ。ただ随所に掲載してある写真はすべて小さなモノクロなので、サイズを大きくしてカラ-の口絵ぺ-ジなどをつければ、一般的な歴史ファンや入門者にも気軽に手にすることができるのではないだろうか。
尚固有名詞に関してはラテン語の発音に準じてカタカナ表記されているが、例えば習慣的に呼ばれているアッピア街道は、何故かアッピウス街道と書かれている。確かに街道のオ-ダ-者は当時の監察官アッピウス・クラウディウスだが、ラテン語でもAPPIAはアッピア街道を意味するし、現在イタリア語でも正式名称はVIA APPIAなので、わざわざ拘る必要はないと思う。
古代ローマを知る事典 (日本語) 単行本 – 2004/9/1
長谷川 岳男
(著)
著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます
この著者の 検索結果 を表示
あなたは著者ですか?
著者セントラルはこちら
|
樋脇 博敏
(著)
著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます
この著者の 検索結果 を表示
あなたは著者ですか?
著者セントラルはこちら
|
-
本の長さ380ページ
-
言語日本語
-
出版社東京堂出版
-
発売日2004/9/1
-
ISBN-104490106483
-
ISBN-13978-4490106480
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
この商品を買った人はこんな商品も買っています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、Get your Kindle here Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、Get your Kindle here Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
古代最強の帝国はどのように誕生したのか、そこで人々はどのような暮らしを営んでいたのか、永遠の都ローマの歴史・政治・経済から、人口・寿命・結婚など素顔のローマ人の生活まで、今もなおヨーロッパ世界の基盤となっている古代ローマの多様な世界をさまざまな視点から解説。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
長谷川/岳男
1959年生まれ。神奈川県出身。上智大学大学院文学研究科を単位取得のうえ退学。駒沢大学、国学院大学などの非常勤講師を経て、現在、鎌倉女子大学児童学部助教授
樋脇/博敏
1964年生まれ。宮崎県出身。東京大学大学院人文科学研究科を単位取得のうえ退学。博士(文学)。東京大学文学部助手、東京大学大学院人文社会系研究科助手、電気通信大学電気通信学部講師を経て、現在、東京女子大学文理学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1959年生まれ。神奈川県出身。上智大学大学院文学研究科を単位取得のうえ退学。駒沢大学、国学院大学などの非常勤講師を経て、現在、鎌倉女子大学児童学部助教授
樋脇/博敏
1964年生まれ。宮崎県出身。東京大学大学院人文科学研究科を単位取得のうえ退学。博士(文学)。東京大学文学部助手、東京大学大学院人文社会系研究科助手、電気通信大学電気通信学部講師を経て、現在、東京女子大学文理学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 東京堂出版 (2004/9/1)
- 発売日 : 2004/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 380ページ
- ISBN-10 : 4490106483
- ISBN-13 : 978-4490106480
-
Amazon 売れ筋ランキング:
- 377,821位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 129位古代ローマ史
- - 1,463位ヨーロッパ史一般の本
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.7
星5つ中の4.7
7 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
殿堂入りベスト500レビュアー
Amazonで購入
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2008年4月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ローマの統治制度のほぼ全てとローマ社会が網羅的に紹介されています。
紹介されている内容
ローマの政治制度 (皇帝と元老院と地方自治)
ローマの歴史 (王政から帝政まで)
ローマの人口 (最盛期の帝国全土の人口や5000万その変化の経緯)
ローマの軍事力 (どのように軍事制度が変化したか)
ローマの法
ローマの税
ローマの経済力 (GDPや政府支出のGDP比、その他産業技術や産業力など)
ローマの生活 (平均寿命や都市生活や文化)
これを読めば、ローマがどのような社会だったのか概ね分かるでしょう。
ただ気になったことが二つあります。
一つは、歴史を善悪で見ようとしていること、例えば、ローマに侵略する気があったかどうかなどを長々と論じていますが、強い国が弱い国を侵略するのは歴史のサガなのだから、あまり意味のない話だと思います。その他、当時の慣習や文化をあまりにも今の価値観で語りすぎている気がしてちょっと目障りでした。
二つめは、ローマの網羅性についてです。
政治・法・税などのカテゴリごとの分類は分かりやすかったのですが、ローマの長い歴史の中で様々に変化している変化の経緯が掴みづらかったです。
この本でもそれなりに記述されているのですが、時間経過に対する網羅性という点では不満が残ります。
政治や税や法や軍事や他国の状況を時間軸で表などで整理してくれたら、何故ローマは拡大し、何故ローマの繁栄は維持され、何故ローマは滅んだのか、掴みやすいと思うわけです。
紹介されている内容
ローマの政治制度 (皇帝と元老院と地方自治)
ローマの歴史 (王政から帝政まで)
ローマの人口 (最盛期の帝国全土の人口や5000万その変化の経緯)
ローマの軍事力 (どのように軍事制度が変化したか)
ローマの法
ローマの税
ローマの経済力 (GDPや政府支出のGDP比、その他産業技術や産業力など)
ローマの生活 (平均寿命や都市生活や文化)
これを読めば、ローマがどのような社会だったのか概ね分かるでしょう。
ただ気になったことが二つあります。
一つは、歴史を善悪で見ようとしていること、例えば、ローマに侵略する気があったかどうかなどを長々と論じていますが、強い国が弱い国を侵略するのは歴史のサガなのだから、あまり意味のない話だと思います。その他、当時の慣習や文化をあまりにも今の価値観で語りすぎている気がしてちょっと目障りでした。
二つめは、ローマの網羅性についてです。
政治・法・税などのカテゴリごとの分類は分かりやすかったのですが、ローマの長い歴史の中で様々に変化している変化の経緯が掴みづらかったです。
この本でもそれなりに記述されているのですが、時間経過に対する網羅性という点では不満が残ります。
政治や税や法や軍事や他国の状況を時間軸で表などで整理してくれたら、何故ローマは拡大し、何故ローマの繁栄は維持され、何故ローマは滅んだのか、掴みやすいと思うわけです。