"考えれば考えるほど、この『すべり台社会』には出口がない、と感じる。もはやどこかで修正を施すだけではとうてい追いつかない。(中略)問われているのは"国の形"である。"2008年発刊の本書は、構造改革、自己責任などの言説により顕在化、より深刻化してきた貧困の流れについて考えさせてくれる。
個人的には著者の本は、自身の非営利活動で取り組んでいる社会課題とも領域が近い事からこれまでにも何冊か読んできましたが、平和・協同ジャーナリスト基金賞大賞、大佛次郎論壇賞の本書は未読だったので、平成の振り返りも含めて今回手にとりました。
『貧困は単に所得の低さというよりも、基本的な潜在能力が奪われた状態と見られなければならない』本書で引用されるノーベル経済学賞のアマルティア・センの言葉ではないが。格差ではなく【貧困こそが問題】であり、憲法25条に定められた【基本的人権が(ちゃんと)守られること】が必要だとの意見、そして、その為にも単なるお金の問題、ましてや【個人の責任】として片付けるのではなく、著者の言うところの"溜め"(選択できる自由)の社会的整備が必要である。との考え方には、10年経って相変わらず個人が追い込まれて、結果的に命を絶つニュースがなくならない。日本の現状を考えて、溜息をつきたくなってしまいました。
また『金持ちの目には貧困が見えないようにできている』というのも今さらながら考えさせられる表現でした。私自身は意識して、民間企業、行政、NPOと越境しながら、それぞれのセクターを実際に見ること。そして交わされる意見に耳を傾ける様には日々しているつもりですが。やはり前提のイメージがちゃんと共有されていなければ、議論しようにも議論にならず。結局として(建前は別にして)各セクターの都合で個別に動いている【=根本的には何も解決していない】ケースは未だに散見される気がしています。そういった意味でも10年前に出された本書は、一つのモノサシとして、またこの国の形を考える上で多くの方に読んでほしいと思いました。
貧困問題に関わる方はもちろん、これから社会にでる若者、生活に苦しさを感じている誰かにオススメ。
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反貧困: 「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書) 新書 – 2008/4/22
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- ISBN-104004311241
- ISBN-13978-4004311249
- 出版社岩波書店
- 発売日2008/4/22
- 言語日本語
- 本の長さ226ページ
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
うっかり足をすべらせたら、すぐさまどん底の生活にまで転げ落ちてしまう。今の日本は、「すべり台社会」になっているのではないか。そんな社会にはノーを言おう。合言葉は「反貧困」だ。貧困問題の現場で活動する著者が、貧困を自己責任とする風潮を批判し、誰もが人間らしく生きることのできる「強い社会」へ向けて、課題と希望を語る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
湯浅/誠
1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1995年より野宿者(ホームレス)支援活動を行う。現在、反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1995年より野宿者(ホームレス)支援活動を行う。現在、反貧困ネットワーク事務局長、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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著者について
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民主主義を再考し、誰もが尊重される世の中をつくりたい。
1969年東京都生まれ。東京大学法学部卒。2008年末の年越し派遣村村長を経て、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。内閣官房社会的包摂推進室長、震災ボランティア連携室長など。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。
現在、NHK「ハートネットTV」レギュラーコメンテーター、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」レギュラーコメンテーター、朝日新聞紙面審議委員、日本弁護士連合会市民会議委員。2014年から法政大学教授就任予定(任期付)
講演内容は貧困問題にとどまらず、地域活性化や男女共同参画、人権問題などに渡る。
著書に、『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(朝日新聞出版)、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞した『反貧困』(岩波新書)『岩盤を穿つ』(文藝春秋)、『貧困についてとことん考えてみた』(茂木健一郎と共著、NHK出版)など多数。
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.1
星5つ中の4.1
147 件のグローバル評価
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殿堂入りベスト50レビュアー
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2021年8月26日に日本でレビュー済み
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貧困問題に向き合っている著者から現場のリアルについて語った本です。
著者の言うように、セーフティネットが機能していないのは社会構造の欠陥だと思いますが、貧困に苦しむ全ての人を救うことは現実的に困難です。
それを目指す社会が社会主義や共産主義であり、国単位ではうまく行かないないことは歴史が証明しています。実際に日本がかの国のような社会主義の国となれば国全体の貧困化が進み、国家は崩壊するでしょう。
そういう現実を踏まえても、貧困問題は解消してほしいと思っています。少ないですが毎月の寄付を登録しました。
評価が低いのは、視点が局所的であるからです。
著者の言うように、セーフティネットが機能していないのは社会構造の欠陥だと思いますが、貧困に苦しむ全ての人を救うことは現実的に困難です。
それを目指す社会が社会主義や共産主義であり、国単位ではうまく行かないないことは歴史が証明しています。実際に日本がかの国のような社会主義の国となれば国全体の貧困化が進み、国家は崩壊するでしょう。
そういう現実を踏まえても、貧困問題は解消してほしいと思っています。少ないですが毎月の寄付を登録しました。
評価が低いのは、視点が局所的であるからです。
2017年11月16日に日本でレビュー済み
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貧乏生活になって、良い機会だと思ったので読んだ。ホームレスの支援活動をするNPOもやい の代表による日本の貧困の告発本。はじめにある夫婦の状況をワーキングプアとして例示したのち、貧困が自己責任で語りえないほど一般的な社会問題になっている事を説明する。自治体の福祉課の生活保護申請に対する嫌がらせ、非正規労働者に対してのセーフティネットの不在、経団連や政府の貧困に対する無関心などか告発されたのち、貧困に対する全国での運動の広がりが取り上げられている。個人的には、UBIと社会保障の関係性を意識しながら読んだ。
2009年5月24日に日本でレビュー済み
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著者の湯浅さんは最近よくテレビで見かけますが、怠惰な連中を擁護しているとして
かなり批判されているイメージが強いように感じられます。
誰の不評を買っているのか、そこから今の社会の仕組みが見えてくるような気がします。
この本で紹介されている事例でも、テレビで見たいくつかの事例でも、苦しい境遇にあ
る人たちは驚くほど忍耐強く、この日本人の生真面目さが益々自分を苦境へと追い込み、
果ては餓死したり、自殺したりという結果に繋がっているのは残念なことです。
重要なのは、著者が言うように格差ではなく貧困こそが問題なのであり、憲法25条に
定められた基本的人権が守られることが必要だということです。
その対策が、単に政府がお金をばらまけばいいという問題でないのは確かですが、
それ以前に政府の認識は不十分であり、対策も的外れなものとなりがちです。
著者の希望は、このような問題を共有する人たちのネットワークの形成です。
実際に若い人たちが、自分たちの問題として立ち上がっている様子も聞こえて来ます。
いずれにしても、まずは現状を正確に知るということが第一歩です。
この本は、社会を動かす一つの切っ掛けとして、大きな役割を果たす本だと思います。
かなり批判されているイメージが強いように感じられます。
誰の不評を買っているのか、そこから今の社会の仕組みが見えてくるような気がします。
この本で紹介されている事例でも、テレビで見たいくつかの事例でも、苦しい境遇にあ
る人たちは驚くほど忍耐強く、この日本人の生真面目さが益々自分を苦境へと追い込み、
果ては餓死したり、自殺したりという結果に繋がっているのは残念なことです。
重要なのは、著者が言うように格差ではなく貧困こそが問題なのであり、憲法25条に
定められた基本的人権が守られることが必要だということです。
その対策が、単に政府がお金をばらまけばいいという問題でないのは確かですが、
それ以前に政府の認識は不十分であり、対策も的外れなものとなりがちです。
著者の希望は、このような問題を共有する人たちのネットワークの形成です。
実際に若い人たちが、自分たちの問題として立ち上がっている様子も聞こえて来ます。
いずれにしても、まずは現状を正確に知るということが第一歩です。
この本は、社会を動かす一つの切っ掛けとして、大きな役割を果たす本だと思います。
VINEメンバー
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雇用・社会保険・生活保護というセーフティーネットは今やズタズタに寸断され、まっしぐらに貧困に落ちていく「すべり台社会」が出現しつつあるにも拘らず、人々にプレッシャーとなって追い討ちをかける「自己責任論」。本書は、野宿者支援事業を中心に長らく貧困問題に携わってきた著者による「自己責任論」批判であり、具体的な活動を紹介しつつオルタナティブな社会への課題を語るものである。
具体的なエピソードの紹介を通して衝撃的な日本の貧困の現実を突きつける。のみならず、著者はそうした貧困に喘ぐ人々の苦境を「自己責任」で片付ける議論を打破するために、日本社会が抱える構造的な問題を丁寧に析出していく。他の多くの評者がレビューしている通りなので多くを紹介する必要はもはやないだろうが、最も印象的だったのは、「がんばるためには条件(溜め)が要る」という指摘だ。親の経済力という「溜め」(=余裕)なくして学歴は身につかず、結果不安定な非正規雇用に就かざるを得なくなる。失業しても、最低限の金銭的「溜め」がなければ仕事を選んでいる暇はない。給料日までの1ヶ月を遣り繰りできる金銭的「溜め」がなければ月給の仕事か日払いの仕事かという選択肢すら失ってしまう。貧困は家族や友人といった人間関係という「溜め」をも損ない、そのことが再び精神的拠り所や頼れる相手の喪失という形で貧困に拍車を掛け、絶望感を助長し、生きる気力を削いでいく。著者が見聞きしてきた具体的エピソードを通して見えてくるものは、貧困は自身の主体的選択の結果だとする「自己責任論」ではどうにもならない、「這い上がろうにもそれを支える社会の仕組みがない」構造的な問題である。政治と社会が「溜め」を作ることを手助けしていく必要性を痛感させてくれる。公設派遣村への逆風が激しく吹き荒れたように、自己責任論はまだまだ根強く存在する。本書が広く読まれることを願ってやまない。
具体的なエピソードの紹介を通して衝撃的な日本の貧困の現実を突きつける。のみならず、著者はそうした貧困に喘ぐ人々の苦境を「自己責任」で片付ける議論を打破するために、日本社会が抱える構造的な問題を丁寧に析出していく。他の多くの評者がレビューしている通りなので多くを紹介する必要はもはやないだろうが、最も印象的だったのは、「がんばるためには条件(溜め)が要る」という指摘だ。親の経済力という「溜め」(=余裕)なくして学歴は身につかず、結果不安定な非正規雇用に就かざるを得なくなる。失業しても、最低限の金銭的「溜め」がなければ仕事を選んでいる暇はない。給料日までの1ヶ月を遣り繰りできる金銭的「溜め」がなければ月給の仕事か日払いの仕事かという選択肢すら失ってしまう。貧困は家族や友人といった人間関係という「溜め」をも損ない、そのことが再び精神的拠り所や頼れる相手の喪失という形で貧困に拍車を掛け、絶望感を助長し、生きる気力を削いでいく。著者が見聞きしてきた具体的エピソードを通して見えてくるものは、貧困は自身の主体的選択の結果だとする「自己責任論」ではどうにもならない、「這い上がろうにもそれを支える社会の仕組みがない」構造的な問題である。政治と社会が「溜め」を作ることを手助けしていく必要性を痛感させてくれる。公設派遣村への逆風が激しく吹き荒れたように、自己責任論はまだまだ根強く存在する。本書が広く読まれることを願ってやまない。