反原発運動は、核の平和利用という戦後民主主義の中途半端さを反映させた思想とせめぎ合ってきた。そこから生み出された反原発運動の思想と実践の変転を追い、3・11経過後の課題を本書は突き付ける。焦眉の問題は、安全論議の土俵に乗せられると、より安全な原発、より環境保護に適合する原発、という筋立てで逆手を取られ、エコロジーといった原発に対抗するはずの思想が骨抜きにされてしまうことだ。そして反原発運動自体も、エコロジーに群がるロハスやヒッピーの省エネ生活や食の安全に切り縮められ日常へと連れ戻される、ことを読解できる。実際に、3・11から数年でそうなった。
原発は、資本主義の無限の拡大再生産を保証する動力源であり神殿であった。物財が過剰となる中、利ザヤで利ザヤを生むしかない新自由主義が成り立つのも、原発から湧き出す兆大な熱エネルギーに対する信用あればこそである。今でも原発に執着する人が多いのは、高度経済成長という戦後日本社会を支えた、大きな物語が切断されることへの恐怖からだろう。また高度経済成長は、多くの社会運動を分配主義に誘導し細分化させ包摂した。本文中でも述べられているが、反原発運動は資本主義、新自由主義の根幹に原発があることを見据える射程が必要だ。さもないと我々は原発復活を引き寄せ、フクシマを繰り返すことになる。
本書の発行年である2012年時点で著者は、3・11以後日本の原発が発展途上国に輸出されるという形で復活し、原発と資本主義の問題がクローズアップされると予測している。帝国主義国による植民地国の搾取という古典的図式だが、その後の歴史は意外な展開を辿る。確かに原発輸出は画策されたのだが、軒並み日本の原発輸出は頓挫してしまった。これは反原発運動の世界的広がりと共に、日本が先進国から脱落しつつある事を示す。今求められているのは、没落国日本における反原発運動だ。そのためにまず、溶け落ちた880トンの核燃料デブリの前では、戦後民主主義や高度経済成長という大きな物語に担保され繋がれた様々な差異ですら溶け合わされることを思い知るべきだろう。
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反原発の思想史―冷戦からフクシマへ (筑摩選書) 単行本 – 2012/2/1
スガ 秀実
(著)
- 本の長さ357ページ
- 出版社筑摩書房
- 発売日2012/2/1
- ISBN-104480015361
- ISBN-13978-4480015365
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
日本の反原発運動は、毛沢東理論の「誤読」による近代科学批判が大きな転機となった。それが「1968年」を媒介にニューエイジ・サイエンスやエコロジーと結びつき、工作舎や「宝島文化」を背景にしたサブカルチャーの浸透によって次第に大衆的な基盤をもつようになったのである。複雑に交差する反核運動や「原子力の平和利用」などの論点から戦後の思想と運動を俯瞰し、「後退りしながら未来へ進む」道筋を考える。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
〓/秀実
文芸評論家・近畿大学国際人文科学研究所教員。1949年生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
文芸評論家・近畿大学国際人文科学研究所教員。1949年生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2012/2/1)
- 発売日 : 2012/2/1
- 単行本 : 357ページ
- ISBN-10 : 4480015361
- ISBN-13 : 978-4480015365
- Amazon 売れ筋ランキング: - 455,416位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 190位核・原発問題
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カスタマーレビュー
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上位レビュー、対象国: 日本
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2015年7月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
依然としてスガの一連の1968年論はキワモノ視されているようで、この本も一種の便乗本と受け止められたのか、あまり真剣に読まれていないようである。『われわれは、あくまで近代に踏みとどまるべきであり、そうすることしかできない』と始まり、『ホンネは本当に「正しい」のか』と問いかけるこの本はミもフタもないという意味で正論の塊だが、運動を実のあるものにするために考えなければならないポイント(それは狭義の『原発問題』に留まらない)が懇切丁寧に列挙されている。学問を状況にフィードバックさせるという意味では誠実きわまりない問題提起を行っていると思うのだが、残念ながらそれは現場には求められていないものであったようだ。この本は市民運動論として現場の人間たちにこそ真剣によまれるべきものだと思うのだが、いわゆる『脱原発』とは違う角度からの運動を模索している友人に感想を聞いても、その評価は芳しくなかった。運動への実用性、という点では失敗しているのか。3.11後のSF業界での小松左京/「日本沈没」再評価論に違和感を抱き、一方で、6・11デモで初めて実物に遭遇した在特会に、『市民運動』神話の崩壊とサブカル的『ホンネ』信仰の末路を感じた僕にとっては、読んでおくべき本、なのだが。
レビューへの反響(2017年11月3日現在)・・・参考になった4票 参考にならない1票
レビューへの反響(2017年11月3日現在)・・・参考になった4票 参考にならない1票





