序説で副題の「アポロンとディオニソス」というギリシャ神話の二人の芸術の神について、理知的な芸風の母方の祖父、六代目菊五郎を、英知と理性を司るアポロンに、芸術の興奮を煽り立てる父方の伯父、初代吉右衛門を、芸術の熱狂を司るディオニソスにそれぞれ例えて、勘三郎が、この異なった芸風をもつ血筋を受け継いで、「アポロンとディオニソスは同じ肉体に宿るか」という期待と宿命を背負って辿った伝統芸能の継承の道のりを、鋭い視点で検証し解説しています。
本格のイメージとして、六代目と父十七代目の姿を追い、芸のこわさ、畏れを知り、謙虚に追求してきましたが、そのイメージを自分の寸法に合わせてしまい、本格のイメージを自分のものとし確立できず、志半ばで終わってしまいました。
巷間のイメージとして、明るく元気な印象に応えるように、コクーン歌舞伎や野田歌舞伎で明るく面白芝居を強いられていた面もあり、平成歌舞伎ブームの牽引役と、本来の責務である古典歌舞伎を守ることに、ジレンマとストレスを抱えながら、精いっぱいの努力と奮闘を続けてきました。
本編では、勘三郎の演じてきた世話物、時代物、舞踊、新歌舞伎、実験歌舞伎の役々について、舞台の記憶、残された映像から、斬新な視点で検証、解析しています。
これからの舞台鑑賞をするうえからも、役立つ観点、ポイントがたくさんあるので、とても参考になると思います。
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