ネヲさんの大ファンで、「十二因縁」シリーズがノベライズ化されると知った時は物凄く喜びました。
しかも執筆者は他の著作で妖怪ものを担当されている方。相当期待して読んでみたのですが……読後の感想は「あぁ……十二因縁……うん……面白かったよね……うん」と、こういう感じでした。
確かにつまらなくはなかった。世界観は割合しっかりしているし、ストーリーはポンポンポーンとテンポ良く進むし、キャラ設定も良かった。でも、「惜しいなぁ……」と感じる部分が随所に見受けられるのです。
まず、ストーリーが非常にぼんやりしている点について。お話はいくつかの章に分かれているのですが、全体として見るとそこそこ面白いお話が、章ごとに見ると何だかイマイチというか……起承転結がはっきりしてないというか……なんというか。
そもそも、ストーリーの進行が「何か大変な事が起こりました」→「結:私めっちゃ忙しいからお前代わりに解決してね」→「とりあえず話を聞きに行きます」→「何か突然重要人物が現れました」→「何かよく分からないけど解決したようです」→<めでたし>っていう、凄くライトなテイストなんですよ。合間にどら焼き食ったりホットサンド食ったりしてるだけで。
主人公が受け身な事もあってかいまいちメリハリに欠け、どの章も「え、もう解決したの?」という感じでした。
一応盛り上がるシーンもあるのですが、描写が淡々としているのでカタルシスはほとんどありません。
ネタバレになりますが序盤の鬼VS鬼とか、本作唯一のバトルシーンなのに物凄くもっさりしてるし、僅か一ページ足らずであっさり終わってしまいます。
後半の、主人公が自分の神使にある事をして窮地を脱するシーンも、そこに至るまでがコメディタッチなうえに危機感が全く感じられない描写なので唐突に感じました。
一応、一番盛り上がる筈の場面なのに……。友麻さんの癖のない文章が逆に仇となった感じです。
それから、ところどころに矛盾や疑問点が見受けられる事。結はどうして「神様になって!」と言ってまで繋の前に現れたのに、何故すぐにそこで繋を神様にしなかったの? 真澄家は代々神様の神使をしていたらしいけど、人間とあやかしって眷属同士になっちゃいけないんじゃないの? 神様だからOKなの? 等々、細かなところがほったらかしにされています。
そして、ここが一番気になったのですが、一部のキャラに全く見せ場がないまま終わっている点について。
特に遥。本作の主要人物で、しかも過去のネヲさんのイラストではどでんと真ん中にいて、しかも「大物」という設定で、キャラデザにも気合いが感じられる! これはきっととんでもない活躍をしてくれるに違いない! 期待大!
と、思ったのですが、本編で彼がした事は「お面盗まれて、どら焼き食べて、くっさいコート被せられた」だけ。本当にこれだけです。ギャグかと思いました。
そのうえ変身をあっさり見破られるわ、緊急事態なのにへらへら煙管ふかしてるわで大物感皆無だった遥さん。おそらく緊急事態にもかかわらず泰然としているという部分で大物感出そうとしたのだと思うのですが、どーんと構えているというよりひたすらへらへらしているだけなので、正直ただの阿呆にしか見えませんでした。
本体(狐の姿)の描写も威厳全くないし。何だよ「トコトコ寄ってきた」って。子犬か。可愛過ぎか。
遙、何か大物っぽい事したかなぁ……真澄家の結界破ったぐらい? でも、化け猿あっさり逃がしちゃう真澄の人が張った結界だから、そんなに強力とも思えないし……。
と、ここまでグダグダ書いてきましたが、私は決して本作がつまらないとは思いません。
むしろ、こういった「ストーリー後付け型」ノベライズ作品にしては、とても上手く出来ていると思います。
イラストの世界観は壊れていないし、舞台となる街の和風な雰囲気や、主人公とその叔母さんの心情描写はとても丁寧に書かれていたと思います。妖怪同士の複雑な派閥や掟の設定も良かった。ただ、上に挙げた細かな点が個人的にはとても気になり、また期待が大きかった為にやや厳しい評価となってしまいました。
という事で、ネヲさんファンまたは友麻さんファンの方、ユルい和風ファンタジーが好きな方ならば買って損はないのではと思います。
ネヲさんも友麻さんもよく知らないという方は、お二人の他の作品を見て、興味を持ったら手に取られてみてはいかがでしょうか。
もし続編が出るというのであれば、本作で気になった点がいくつか解消されていれば良いなと思います。
その時にはぜひとも遥に見せ場を! それから「風変わりな主人公を理解してくれる友人ポジション」をまんまと多々良君に奪われた川上君に救済を!
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