本書のタイトルにある『絶対秘密文書』とは、「2011年」に著者が「中・朝貿易」に関係する友人(中国)から、「デジタルカメラ用のメモリーカード」で入手したもので、北朝鮮の「検察」等が纏めた言わば「経済事件」の捜査関係報告資料(「5件」ほどの事案らしい)を指している(以上「はじめに」及び13〜20頁)。当該「文書」の写真も掲示されているが(15頁)、当然に表紙はハングル文字なので、私自身は何であるかは判断できないし、本件「文書」に係わる『絶対秘密』性の客観的評価も即断できるものではない。しかし本書の筆致・内容・具体性のほか、現在の知りうる北朝鮮(以下「北」と略記する)の独裁事情及び情報統制などから察するに、右「文書」が真正とすれば広く一般に(そして対外的に)公開されるべきものでないことは確かと思われる。本書は右「文書」の事案報告の分析結果を中心にして、便宜的に著名の取材記録や経験談を織り混ぜながら、「北」の政治・経済実態、特に社会主義経済の行き詰まり、統治機構(行政や軍部の腐敗)に対する懸念、「擬似市場経済」の影響などを考察し、「北」の王朝崩壊の可能性を示唆するものである。著者は「毎日新聞」の現職記者であるが、本件「文書」(真偽は別論として)に基づく詳細なレポートと取材・体験に基づく裏付けなど、「北」の内部実態、殊に国民経済実態、「二重経済」(表面上の機能しない配給制度と形式上は存在できない“ヤ ミ”の市場経済の同居)など非常に興味深いトピック構成である。構成・内容はこのページの上の「商品の説明」及び「目次を見る」に譲り、以下では個人的に興味を惹いたトピックを幾つか紹介したい。
まず第1章では「北」に勃興する「起業家」について、本件「文書」の報告から詳細な分析がある。本来は共産主義国家では存在しえない、一般「労働者」の言わば「起業家」への“転身”の経緯において、行政機関や警察組織の腐敗に加え、「自力再生」の名目の下、軍部の関与までも炙り出されている。そこには独裁王朝の上層部が否定し或いは排除・抑止しようとしても不可避の実情ーー統制経済の機能不全に伴う必然的な「私企業」の発生と、その需要が歴史因果的に「市場経済」を志向しこれをもたらす皮肉な現実ーーが見えて興味深いレポートになっている。このような事情は、ちょうど中国の「先富論」をスローガンとした改革解放経済の非公式(ミニチュア)版を彷彿とさせる。かかる「私企業」経済のエスカレートが、第3章での「放射性物質」(本文では「硝酸トリウム」とある)の密売事業である。市場経済が成立するには、売り主と買い主の存在が前提となるが、ここで買い主として登場するのはやはり“あの国”である(129頁以下)。「放射性物質」が通常の工場に必要でないはずで、やはり「軍需工場」や「人民軍」系列の「貿易会社」が絡んでいるようである(124〜134頁)。このほか「麻 薬(覚 醒 剤)」の実態や、国家を「食 い 潰 す」として、「文化遺産」の密売、これに関与する軍部、行政機関等の腐敗が詳細にレポートされており(第5章)、「北」の経済(政治)の実態を知る上で読み応えがある。
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北朝鮮・絶対秘密文書: 体制を脅かす「悪党」たち (新潮新書) 単行本 – 2015/2/16
米村 耕一
(著)
国境を越えて秘かにもたらされたあの国の事件捜査記録。金鉱山のヤミ採掘、放射性物質の密輸出、世界遺産地区からの文化財窃盗――。その文書には、国家の統制に抗う「悪党」たちのたくましいまでの姿が描かれていた。
- 本の長さ255ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2015/2/16
- ISBN-104106106086
- ISBN-13978-4106106088
- UNSPSC-Code
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
記者が秘かに入手した、あの国が「絶対秘密」と指定する内部文書。そこには、統制に抗い、管理から外れた「悪党」たちのたくましいまでの行動が描かれていた。金鉱山のヤミ採掘、放射性物質の密輸出、世界遺産地区からの文化財窃盗―。数々の経済犯罪は、市場経済の拡大から露呈した国家管理の限界でもあった。文書分析と北朝鮮住民たちへの直接取材の積み重ねから、閉鎖国家の現在と、その体制崩壊への道筋に迫る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
米村/耕一
1972(昭和47)年熊本県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。1995年、西日本新聞社入社。1997年、同社を退社後、韓国留学を経て毎日新聞社入社。福島支局、政治部などに勤務の後、北京特派員。現在、外信部記者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1972(昭和47)年熊本県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。1995年、西日本新聞社入社。1997年、同社を退社後、韓国留学を経て毎日新聞社入社。福島支局、政治部などに勤務の後、北京特派員。現在、外信部記者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2015/2/16)
- 発売日 : 2015/2/16
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 255ページ
- ISBN-10 : 4106106086
- ISBN-13 : 978-4106106088
- Amazon 売れ筋ランキング: - 559,367位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 196位朝鮮半島のエリアスタディ
- - 1,062位新潮新書
- - 7,570位政治入門
- カスタマーレビュー:
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犯罪事件は、社会を映す鏡である。
内容は、国家が恥部と考える治安機関編集の「検察文書」の分析である。体制側からは、「犯罪者・悪党」と呼ばれる者たちの蠢きであるがそれは、取りも直さず経済崩壊の埋め合わせであり資本主義の芽生えでもある。
問題は、犯罪の性質が一党独裁と合わせ鏡の「コネ・賄賂」と密接に結びついているので無くなる事はないという事である。
社会主義陣営の崩壊、中国の改革開放路線等、北朝鮮も90年前後からその影響を着実に受けていた。直接的には、交易マーケット及び経済支援を一挙に失ったのである。飢饉が続出し、衛星が写し出した夜間の漆黒の闇が象徴する国家経営の失敗は、住民にも覆い隠せなくなった。住民たちは、自ら食い扶持を探すしかなかった。その意味では北朝鮮は、90年頃から崩壊過程に入ったと言っていい。社会構造・住民意識変化は、確実に進んでいる。
北朝鮮は、地下資源が豊富である。金・トリウム・石炭の他高麗王朝の世界文化遺産等々国営企業の下請けとしてあるいは、秘密に非エリートの農民上がりが賄賂を使い精錬し盗み、中国に流していたのである。中国は、「ATM]の機能も果たしている。
また、そこには多数の人間と組織とルートが築かれているということである。当局が動向を捕捉できないグループが各地に族生しているのである。
そして、平壌のマンションさえ利用権が認められ売買が行われている。これは、市場経済である。固定給与で固定価格で暮すという経済体系と市場経済体系には100倍の価格差があり最早、併存は難しい。国家も「コントロール不能」と判断しているものと思われる。
起業ブームが起こり小さな企業家が輩出している。配給が滞るようになり自力更生しかなかったのである。
表面は、社会主義で中身は資本主義である。これをプロパガンダで取り繕っているが、国民感情のコントロールには抜群に巧い。
張成沢は、日韓では「改革開放派」であるかのように言われていたが粛清以前から北朝鮮住民の評判は悪かった。派手好みで私腹を肥やし権益を中国に売り渡しているという噂が平壌には拡がっていたのである。
これには、次のような話が参考になる。「君たちは、金元弘や崔龍海が力を持っているとか言っているだろう。表に名前が出たり出なかったりするが、そんな事は何の意味もない。全てのそうした人物の背後には、同等の力を持ち、監視し牽制する人間がいる。」
北朝鮮独裁体制が持つ智慧である。
なのに、張成沢は、ナンバー2になってしまい悲惨な結末を迎えたのであろう。
他に、平壌高層マンションの倒壊は、幹部から作業員まで鉄筋やセメントを少しづつ持ち出し市場でカネにした。その結果の強度不足だったのであったという話もある。
また、北朝鮮では、覚醒剤が蔓延しているそうである。
この本は、具体の積み上げで組立てられているので北朝鮮の将来について大きく間違うことは無いだろう。
具体的事実が多く労作である。
内容は、国家が恥部と考える治安機関編集の「検察文書」の分析である。体制側からは、「犯罪者・悪党」と呼ばれる者たちの蠢きであるがそれは、取りも直さず経済崩壊の埋め合わせであり資本主義の芽生えでもある。
問題は、犯罪の性質が一党独裁と合わせ鏡の「コネ・賄賂」と密接に結びついているので無くなる事はないという事である。
社会主義陣営の崩壊、中国の改革開放路線等、北朝鮮も90年前後からその影響を着実に受けていた。直接的には、交易マーケット及び経済支援を一挙に失ったのである。飢饉が続出し、衛星が写し出した夜間の漆黒の闇が象徴する国家経営の失敗は、住民にも覆い隠せなくなった。住民たちは、自ら食い扶持を探すしかなかった。その意味では北朝鮮は、90年頃から崩壊過程に入ったと言っていい。社会構造・住民意識変化は、確実に進んでいる。
北朝鮮は、地下資源が豊富である。金・トリウム・石炭の他高麗王朝の世界文化遺産等々国営企業の下請けとしてあるいは、秘密に非エリートの農民上がりが賄賂を使い精錬し盗み、中国に流していたのである。中国は、「ATM]の機能も果たしている。
また、そこには多数の人間と組織とルートが築かれているということである。当局が動向を捕捉できないグループが各地に族生しているのである。
そして、平壌のマンションさえ利用権が認められ売買が行われている。これは、市場経済である。固定給与で固定価格で暮すという経済体系と市場経済体系には100倍の価格差があり最早、併存は難しい。国家も「コントロール不能」と判断しているものと思われる。
起業ブームが起こり小さな企業家が輩出している。配給が滞るようになり自力更生しかなかったのである。
表面は、社会主義で中身は資本主義である。これをプロパガンダで取り繕っているが、国民感情のコントロールには抜群に巧い。
張成沢は、日韓では「改革開放派」であるかのように言われていたが粛清以前から北朝鮮住民の評判は悪かった。派手好みで私腹を肥やし権益を中国に売り渡しているという噂が平壌には拡がっていたのである。
これには、次のような話が参考になる。「君たちは、金元弘や崔龍海が力を持っているとか言っているだろう。表に名前が出たり出なかったりするが、そんな事は何の意味もない。全てのそうした人物の背後には、同等の力を持ち、監視し牽制する人間がいる。」
北朝鮮独裁体制が持つ智慧である。
なのに、張成沢は、ナンバー2になってしまい悲惨な結末を迎えたのであろう。
他に、平壌高層マンションの倒壊は、幹部から作業員まで鉄筋やセメントを少しづつ持ち出し市場でカネにした。その結果の強度不足だったのであったという話もある。
また、北朝鮮では、覚醒剤が蔓延しているそうである。
この本は、具体の積み上げで組立てられているので北朝鮮の将来について大きく間違うことは無いだろう。
具体的事実が多く労作である。
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北朝鮮発信のニュースは、たびたび、日本、そして世界を震撼させます。日本人拉致、ミサイル発射、核実験、人権問題、
最近では、粛清人事・・・・・・・
そして、本書によると、外からは見えにくいですが、北朝鮮の情勢は、急速に動いていて、
中期的に北朝鮮は、崩壊するとみているようです。
著者の米村耕一さんは、毎日新聞に入社し、北京特派員を務め、中朝国境から朝鮮半島をウオッチしています。
そんな米村さんが、このような結論に達した根拠は、北朝鮮ウオッチャーとして、取材活動で得てきた様々な情報は当然の事ですが、
北朝鮮が、「絶対秘密」に指定している「国家が恥と考えているものを国家公認で編集した文書」を入手したことによります。
その文書の中には、金鉱山のヤミ採掘、放射性物質(硝酸トリウム)の密輸出、世界遺産地区から盗んだ文化財の密輸出、
送電用の銅線の密売、等が記されています。これらのことは、当事者だけでできることではなく、
当然、もっと上層部の関与が示唆されます。これはまた同時に、北朝鮮に市場経済が大波が押し寄せていることを示していて、
事実、5~10万ドルの現金を有する富裕層は、人口の1%、24万人いると推定され、
資産10万ドル程度の資産家なら、平壌市内にはゴロゴロいるそうです。
そして、倉田通りの高層マンションが10万ドルを軽く超える値段で売買されているそうです。
これらのことは、市場経済の拡大によって生じた、北朝鮮社会の統治システムの緩みを如実に示しています。
本書では、さらに北朝鮮崩壊への道筋にまで話は及んでいます。
最近では、粛清人事・・・・・・・
そして、本書によると、外からは見えにくいですが、北朝鮮の情勢は、急速に動いていて、
中期的に北朝鮮は、崩壊するとみているようです。
著者の米村耕一さんは、毎日新聞に入社し、北京特派員を務め、中朝国境から朝鮮半島をウオッチしています。
そんな米村さんが、このような結論に達した根拠は、北朝鮮ウオッチャーとして、取材活動で得てきた様々な情報は当然の事ですが、
北朝鮮が、「絶対秘密」に指定している「国家が恥と考えているものを国家公認で編集した文書」を入手したことによります。
その文書の中には、金鉱山のヤミ採掘、放射性物質(硝酸トリウム)の密輸出、世界遺産地区から盗んだ文化財の密輸出、
送電用の銅線の密売、等が記されています。これらのことは、当事者だけでできることではなく、
当然、もっと上層部の関与が示唆されます。これはまた同時に、北朝鮮に市場経済が大波が押し寄せていることを示していて、
事実、5~10万ドルの現金を有する富裕層は、人口の1%、24万人いると推定され、
資産10万ドル程度の資産家なら、平壌市内にはゴロゴロいるそうです。
そして、倉田通りの高層マンションが10万ドルを軽く超える値段で売買されているそうです。
これらのことは、市場経済の拡大によって生じた、北朝鮮社会の統治システムの緩みを如実に示しています。
本書では、さらに北朝鮮崩壊への道筋にまで話は及んでいます。
2015年4月14日に日本でレビュー済み
北朝鮮の検察文書から、電線などの国有物資横領・転売、文化財窃盗のほか、ヤミ鉱山の運営、覚醒剤密売など「資本主義的犯罪」が横行していることを明らかにしている。90年代数十万人が餓死したといわれる「苦難の行軍」以後、北朝鮮社会の人心が荒廃しきっている様子が伺える。「純朴で党の指示通り食糧を供出したものから死んだ」という時代、法を犯して生き残った国民は遵法意識が極めて薄い。警察や監視役も指導部に絶対忠誠ではなく、金次第でどうにかなる。軍隊も「自力更生」の名の下に、「自分の食い扶持はバイトで稼ぎ、党へのボランティアもやり、その上で訓練の練度も上げろ」という無理な要求をされているため、「副業」をせざるを得ない状況だという。
そして、北朝鮮の一般住民の声を中朝国境地域で多く聞いた著者は、閉鎖国家とはいえ、北朝鮮住民が洗脳され「金王朝に絶対忠誠」という伝えられ方が一面的であると指摘する。その一方で金王朝の誕生日に繰り広げられる花火やマスゲームに「食い物もないのに」という西側の批判に「食い物は食えばそれで終わり。イベントをやるから国を誇りに思い、未来に希望を持つ気持ちを持つことで国の安定になる」と北朝鮮当局者は話す。ただの見栄ではなく統制の道具として、政治的な意味があるものだと気付かされた。北朝鮮の政治動向は、暴発、見栄っ張りのように見えても必ず裏に何か実利的な目的がある。提示された物語の真意を読むことこそ重要だと感じる。
著者は社会の荒廃や国に隠れた禁制品の密売網が張り巡らされている北朝鮮では、自壊の可能性が高まっているとし、「10年以内に金王朝に取って代わる政治的リーダーが生まれる素地ができる」と予期している。金正恩が政治・経済の開放を指向すれば崩壊はしないが、体制が現状のままなら、存立は厳しいと。本書を読んでもなお、管理体制が崩壊しつつとまで言い切れないと感じ、ゆえに「北は10年後もさほど変わっていない」と思う私は、著者の考えには与さない。とはいえ、大胆なポジションを張る著者のスタンスに好感を持った。「食を去らん。信なくば立たず」と論語にいう。北の場合、食も去り信も失った。食は戻ったが信はなく、国は立ちいかなくなりつつある。
そして、北朝鮮の一般住民の声を中朝国境地域で多く聞いた著者は、閉鎖国家とはいえ、北朝鮮住民が洗脳され「金王朝に絶対忠誠」という伝えられ方が一面的であると指摘する。その一方で金王朝の誕生日に繰り広げられる花火やマスゲームに「食い物もないのに」という西側の批判に「食い物は食えばそれで終わり。イベントをやるから国を誇りに思い、未来に希望を持つ気持ちを持つことで国の安定になる」と北朝鮮当局者は話す。ただの見栄ではなく統制の道具として、政治的な意味があるものだと気付かされた。北朝鮮の政治動向は、暴発、見栄っ張りのように見えても必ず裏に何か実利的な目的がある。提示された物語の真意を読むことこそ重要だと感じる。
著者は社会の荒廃や国に隠れた禁制品の密売網が張り巡らされている北朝鮮では、自壊の可能性が高まっているとし、「10年以内に金王朝に取って代わる政治的リーダーが生まれる素地ができる」と予期している。金正恩が政治・経済の開放を指向すれば崩壊はしないが、体制が現状のままなら、存立は厳しいと。本書を読んでもなお、管理体制が崩壊しつつとまで言い切れないと感じ、ゆえに「北は10年後もさほど変わっていない」と思う私は、著者の考えには与さない。とはいえ、大胆なポジションを張る著者のスタンスに好感を持った。「食を去らん。信なくば立たず」と論語にいう。北の場合、食も去り信も失った。食は戻ったが信はなく、国は立ちいかなくなりつつある。
2015年4月21日に日本でレビュー済み
著者は毎日新聞元北京特派員。毎日新聞入社前には韓国留学もしているとのこと。
内容については既にいくつかレビューがあるが、著者が入手した北朝鮮の検察が研修用にまとめた経済犯罪事例についての資料をメインに、北朝鮮社会に起きている変化について詳述したものである。
特に良い点は、検察資料と言う単独でも面白い素材だけに満足せず、欧米の一流者の研究者のメジャーな文献も消化したうえで書かれており、バランスが取れていることと、起業家の存在、疑似市場経済、職場離脱者、文化財泥棒などの内部犯行者等、かなり生々しく目新しい情報を面白い切り口で伝えていること。最近の北朝鮮関係の日本語の本では、出色の面白さだと思う。
内容については既にいくつかレビューがあるが、著者が入手した北朝鮮の検察が研修用にまとめた経済犯罪事例についての資料をメインに、北朝鮮社会に起きている変化について詳述したものである。
特に良い点は、検察資料と言う単独でも面白い素材だけに満足せず、欧米の一流者の研究者のメジャーな文献も消化したうえで書かれており、バランスが取れていることと、起業家の存在、疑似市場経済、職場離脱者、文化財泥棒などの内部犯行者等、かなり生々しく目新しい情報を面白い切り口で伝えていること。最近の北朝鮮関係の日本語の本では、出色の面白さだと思う。

