ご存知の方も多いだろうが、物語シリーズの初期には話数にナンバーが振ってあった。
当時としてもすでに流行りとは言えなかった第零話構成が採用された背景としては単に長すぎて読み切り連載には不向きという側面があったからだろうか。
しかしながら原作読破済みの方ならご承知の通り、本来の化物語第五話である『つばさキャット』はぶっちゃけると意味不明である。
突然猫が現れて、突然鬼が喋り出す。語られない事件を前提に、結末だけが示される。
それもその筈。物語シリーズとは実は鬼と猫の物語でもある。
猫か鬼か。鬼か猫か。
それは常に対比されてきたといってもいい。
故に。
蛇の物語が語られ終わったタイミングを待つまでもなく僕は予想をしておくべきだったのだ。
全ての始まり。物語の最初にして最大の分岐点。
全ての者が大なり小なりの傷を負った、バッドエンドの物語が始まることを。
「ところで忍。正直、作画担当によって僕のイメージが大変な方向に捻じ曲げられている気がするんだが」
「そうかの。むしろアニメから入ったものにとっては原作のお前様の行動がドン引き過ぎる気がするがの。いや、アニメも相当であったか。しかし社会人が金髪幼女をチャイルドシートに緊縛して喜ぶとかどんだけなんじゃ。コミカライズ版のある種の再現度の高さはこの儂をしても驚かされる。むしろアニメ版はあれでも自主規制の塊だったと言うべきじゃな」
僕は過去を振り返らない。大人の男は常に前を見て進むものだからだ。
「劇場アニメ三部作として公開されたけど、明確にTVアニメの芸風が足を引っ張った感はあるな」
実験的アニメというのも善し悪しで、ヒットした時芸風を簡単に修正できないというのはしかし贅沢な悩みだ。
もはやなろう発アニメは爆死が約束され、ラブコメは世界戦略に対応できないという時代には。
「劇場と言えば、劇場特典も凄かったの」
「ああ、書き下ろしの短編が複数あったんだよな。後に混物語として発売されたっけ」
「世界線が違う事を良い事に、お前様の暴虐は凄まじかったの。思うに、原作でもあそこまでやった相手はおらんのではないか。お前様の本性が番外編で暴かれたという感じかの」
全部が全部そうではない。筈だ。僕的には大セーフである。決して治外法権とかそんな事を思ったわけではない。
「おっと、そんな未来の話は僕には関係ない。大事なのは現在を大切に生きる事さ」
「かかっ。現在を大切に生きる事か。何度も命を投げ出したものがよくも言う。反省も後悔もないか。やはりお前様は向いておるのやもしれんな」
何に向いているのかは問うまい。その選択肢は僕にはすでに存在しない。
「ところでお前様よ。世界線と言って思いだした話じゃが、ルートXの話を覚えておるか?」
更に先の物語をネタバレする気か忍。さすがは鉄血にして熱血にして冷血の(元)吸血鬼。
そこに痺れたり憧れたりはしないが。
「あの話はこの世界線と平行する別の世界線の話ではあるが、一つ腑に落ちぬ事がある」
「腑に落ちない?」
「うむ。あの世界の原因は儂なのじゃが。この世界で同じような事が起きるとしたら、それは誰が原因になるんじゃろうな?」
「いや、あれはだって、そうなったかもしれない世界の話だろ」
「違う。分岐した世界ではないのなら、何らかの相似性ある事件が起きる可能性は否定できんと考えるべきじゃ」
有り得ない、とは言えない。20世紀から21世紀。世界的な危機は幾らでも起きた可能性はあった。
それこそ冷戦時代に多くの人間が妄想した世紀末世界への引き金は、幾らでも引かれていたかもしれない。
「かかっ、ついでにもう一つお前様に課題を出そう。もしお前様が鬼を捨て猫を抱きしめていたとしたら。一体どうなっていたじゃろうな?」
それは僕が完全に人間に戻ったと仮定するべきか。
羽川についてもしかしたらあの時点でそうなっていたかもしれないという可能性はある。
でも有り得ない。もしそうなら僕はその後生き延びる事など出来はしない。
「そうかの? 儂を選ぶか、猫を選ぶか、おそらくそれは等価じゃ。儂がお前様と共に歩んだように、猫もまたお前様と寄り添うであろう。ほれ、意外と大丈夫な気がするじゃろ? であれば、世界の脅威となる者もまた、儂の対極におるものよ」
「かかっ。お前様に与えられていたGOODエンドへの選択肢をお前様はガン無視したのやもしれんぞ?」
これから語られるのは傷の物語。
登場した誰もが大きく傷を残した。
唯一人を除いて。
唯一人のその傷は微かだった。
だけど微かな傷が運命を大きく左右するということもあろう。
「ま、何かあった時のため、ミスタードーナツの情報は常に把握しておくのじゃな。人間には保険積立というものがあるじゃろ? これからは心を入れ替え毎日のドーナツ保険積立を儂に捧げるがよい」
「結局ドーナツかよ!」
忘れてはならない。
全ての始まり。第零話。猫と鬼の物語。
意識せずとも僕は猫を手放し、鬼の手を取った。
忘れてはならない。
傷の物語で僕が選んだのは『バッド』な選択肢じゃない。
おそらくは世界そのものを巻き込むであろう
『バッドエンド』の選択肢だ。
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西尾維新
(著)
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言語日本語
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出版社講談社
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発売日2020/2/17
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VINEメンバー
Amazonで購入
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役に立った
2020年2月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今回は本編の方が個人的に面白かったです。
次の巻はシリアスが続きそうなのでサービス回だなと感じました。
ただ、特装版を買い続けていると表紙やおまけの問題で特装版が欲しくなると言う所です。
個人的にはポストカードにCDや本の表紙でよく見る中村氏の作品があったので満足です。
本編のカラー部分もきちんとカラーで収録されているのでその部分も満足出来ると思います。
・カラーページが見たい人
・前の巻の表紙の文字なしが見たい人
・特装版のおまけ要素が見たい人
この3点に当てはまる人は買いだと思います。
次の巻はシリアスが続きそうなのでサービス回だなと感じました。
ただ、特装版を買い続けていると表紙やおまけの問題で特装版が欲しくなると言う所です。
個人的にはポストカードにCDや本の表紙でよく見る中村氏の作品があったので満足です。
本編のカラー部分もきちんとカラーで収録されているのでその部分も満足出来ると思います。
・カラーページが見たい人
・前の巻の表紙の文字なしが見たい人
・特装版のおまけ要素が見たい人
この3点に当てはまる人は買いだと思います。
