とっつきやすそうなカバーや帯から想像した内容と違った。
僕はてっきり「仕事中毒の人が自分を解放して、趣味(ホビー)でマンガを描く第一歩を踏み出すための本」かと思ったのに。読んでみると「生きる目的(ワーク)の探求と自己改革を目的としてマンガを描くための本」だった。
重てぇ……。400ページもあるブ厚い本ののっけから「趣味で仕事の苦痛が取り除かれることはないと断言する、戦うためにマンガを描く方法について論ずる」ときて、「なぜ描くか」「マンガとは何か」という禅問答的探求が始まって、すこぶる重たかった……。
僕がマンガを描きたい理由は「仕事漬けの毎日にくたびれてるから、せめて自由時間は好きなマンガキャラのおっぱいとかパンツ描いて癒されてえ」なんだけれども。
この本は徹頭徹尾、「人に見せないと意味がない(キリッ!)」な主旨のもと、なぜ描くかを哲学し、マンガとはいかなるものかを哲学し、描いたマンガを人に見せることで起こる自己の変革を探求する本だった。そこんところが、「まずは趣味で描きたい、くたびれきった労働者が心を開放して趣味に打ち込むヒントが欲しい」僕には合わなかった……。
著者さんは美少女アニメ「アイドルマスター」の二次創作イラストを描いたことがマンガ制作のきっかけだったそうだ。僕が思うに、著者さんのマンガ制作も最初は「ささやかなホビー」「気分転換」「現実逃避」だったんじゃないかと思うんだよ。むしろ僕はそのへんの心の動きや解放のヒントが読みたかったんだ。仕事中毒な人間には、自分を解放して好きなもんを好きに描く、たったそれだけのことが難しい。そんな労働者が少しだけでも自分の時間を取り戻す過程やヒントを見たかったんだ……。マンガを描くつかの間、誰にも気兼ねせず、自分勝手になり、自由になり。誰にも邪魔されず、ひとりで、静かで、豊かで……。
なのにこの本は一切の「ホビーの時期」をすっとばして、著者さんが何年もかけて紆余曲折の末たどり着いただろう「マンガを通したライフワークの探求」を、いきなり400ページもの特大ボリュームで一介の労働者にでーんと提示してくるもんで、重たいんよ……。
実際、どうなんだ、この著者さんは自分が最も擦り切れていた時、「自己変革およびライフワークの探求」なんてハイブロウな動機でアイマス同人誌作ってたか!? 作れたか!? どうなんだ!? もっと単純に「アイマスのりっちゃん描いて癒されてえ」とかそんなもんだったんじゃないのか!?
つーわけで、僕みたいな疲れ切ったイチ労働者には意識高すぎる本だった。マンガ『重版未定』のほうが面白かった。「最初は現実逃避的文脈だっていいじゃないか、僕だって思いっきし現実逃避でアイマス同人誌作ってたよ。本職の校了日前にねハハハハ」とかそういう路線で描き方入門をやってほしかった……。
この本が合わなかった人におすすめのマンガは、「へうげもの(1) (モーニングコミックス)」。戦国のツラい世を生きる武将の古田織部が趣味の「茶の湯」にハマって大暴走し、やがてライフワークにたどり着くお話。武将という「ジョブ」ではいまいち活躍できてない古田織部が、「超レア物の茶釜をゲットしてえ!」「おっぱいデザインの茶碗作りてえ!」等々、物欲まみれの趣味に打ち込む姿がすごくバカで面白くイキイキと描かれてる。そういう「ホビー」が丹念に描かれてるからこそ、彼が千利休と出会い、やがて「ライフワーク」を見つけるさまが魅力的なんだ。
『へうげもの』では、「仕事(ジョブ)」と「生きる目的(ワーク)」に加えて「趣味(ホビー)」が極めて大事な柱として描かれている。だから趣味を見つけることから始めたい労働者でも面白おかしく読めて、少しずつ生きがいについても考えさせられる名作だと思う。
労働者のための漫画の描き方教室 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2018/7/24
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。

Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
Cyber Monday (サイバーマンデー)
今年最後のビッグセール、サイバーマンデー開催中。12月9日(月)まで。
今すぐチェック。
今すぐチェック。
商品の説明
内容紹介
労働者よ、ペンを執れ!
過重労働から心を守るためには、漫画を描こう。30日連続出勤かつ残業200時間超という経験をした著者から、懸命に働くすべての労働者へ贈る、忙しい日常でも実践できる、生き抜くための方法論。働きながら表現しよう。
== 目次 ==
はじめに
序章 本書の意義と本書における漫画の意味
第1部 内実編
第1章 漫画を描く動機
第2章 漫画を描く目的
第3章 漫画と言葉
第4章 漫画と編集
第2部 技法編
第5章 漫画を描くための基礎技術
第6章 漫画を描くための応用技術
第7章 漫画を素早く描くための諸技術
第3部 発表編
第8章 漫画を発表する
第9章 漫画を継続する
あとがき
内容(「BOOK」データベースより)
これを読めば漫画が描けるようになります。働くことも、ちょっと楽しくなります。労働者よ、ペンを執れ!
商品の説明をすべて表示する
登録情報
|