投稿者自身はとくにボカロ曲にもミクにも興味はありませんが、少なからずブームを起こし、狭からず定着した文化的背景を知りたいと思って読みました。
やや強引に自説や文脈に引き寄せてしまったり、それは盛りすぎでしょうってところはありますが、音楽ヒストリーものの本ではよくあることなので、いったんは素直に話を聞くほうがいいと思います。少なくとも、読者を煽る文章ではないと感じます。
初音ミクがある種のアイコンになったのは外野から見ても確かですが、どこかの天才プロデューサー様が広告代理店と一緒になってがっつり計画を立てて売り込んでいったのではありません。
この本で書かれているのは、個々のファン、ボカロソフトメーカーの担当者、絵師、……がそれぞれの立場で、これだと思ったことを好きにやっていて、その点が呼び合って線に、線が呼び合って面になっていく様子であるように思えます。不思議なほどにブームを統括する人がいないのです。
とても乱暴に言えば偶然なのですが、偶然を引き起こしたのは各人がそのように意志を持って動いた必然だったわけです。たくさんの取材や寄稿が、いまどきの自然発生的なムーブメントの背景にある世界をよく描き出してくれます。
いまでもミクそのものには興味が薄い投稿者ですが、とても楽しく読めた1冊です。
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