実際にあった埼玉愛犬家連続殺人事件を元にした映画。
出だし数秒からこの映画が良いのは分かる。
言葉じゃなく映像で語る。
序盤から無意味なパイオツカイデー(と呼ぶに相応しい記号的なメス感)が主張してくる。
胸に嫌悪を抱く何かをお持ちでない限りは、
くそっこんな単純なことで、と思いながら惹かれてしまう。
初めて園子音監督の映画を観る人にとっても、「そういう映画なんだな」と察知させてくれる。
この映画には良い点と、良いとは言い難い点がある。
良いと言い難い点は、他の方々も挙げている通り幾つかある。
・男性に比べて女性人物像の薄さ
・洗脳されるまでがチョロい
・逆襲〜ラストまでの流れが蛇足
女性登場人物は皆「エロ」という記号を体現している。
現場で自分たちが興奮したいだけなんじゃねーかとすら思える無意味なエロシーンもある。
中高生が初めて受ける性シーンという意味では良い役を担っていると思う。
大人が見るにはしばしば意味不明に感じさせられる。
おそらく、残虐で男臭い映画に華を添える程度の意味合いとして受け取れば良いのだと思う。
そんなもので心動かされない視聴者は「バカにされてるのかな」と心冷えもするし、
まんまと「サイコーだぜ!」と思う視聴者も居ると思う。
特に女性は気に入らない人が多いと思うし、女性蔑視に近いのでお勧め出来ない。
大筋に重要ではないのでスルーしても大丈夫。
洗脳されるプロセスがあまりに急展開な点。
これは「殺人犯の心の隙間に入り込む巧みさ」を現わした結果と思われる。
妙な違和感は、その巧みさを誇張して描いたものと解釈すれば理解できるだろう。
現実でも「そんなことで心酔しちゃうの?」と信じられないことはある。
当事者にしか見えない心の闇がある。
娘が洗脳されたのは鬱屈していた父親と継母への反発。
理解者、自立から得る自尊心、ワクワク。居心地の良い居場所。
ボディタッチを怪しまないのは、実は純粋に親を求める子供だったとか。
(実母愛故の反発でしたし)
嫁の寝取られ速度は、マゾヒストなら分からなくない筈。
日頃無理している人は、本音を引き出してもらうために支配に安寧する。
不自然な露出服を着てた理由は、秘めた肉欲の現れ。
プラネタリウムに連れて行くような男と付き合ったことのないということから、
以前は派手めな日常を送っていたとしたら、
「大人しい男と新鮮さで結婚したが、実は強い肉欲を鬱屈させていた」
としてもおかしくはない。派手めな日常だったなら、
過去にSM経験があったから「殴って下さい」とすんなり出てきたとか、
DVや虐待経験があったという可能性も。
最後に「結婚は失敗だった」「やり直したい」と嘆いていた通り、
下着の見える服は夫以外との情事を期待していた。
という辻褄合わせを脳内補完すれば、全くあり得ないとは言い難い。
臆病で平凡な主人公・社本が、覚醒して嫁を犯すとか殴るシーンは、
中学生がテロリスト撃退をする妄想を具現化したような非現実感でなんだか笑ってしまったけど、
園子音・監督も、やり直すなら村田嫁が刺されて笑うシーンで終わらせたいと言っていたことから、
「そうだよね」と納得する。
でもその後のシーンに監督からのメッセージが詰められている。
社本が子供を守って自殺するシーンでは、
「パパー!」と泣くと思わせて父親の死に大喜び。
「生きるってのは痛いんだよ」ってセリフからも、
監督からの「生」に対する説教じみたメッセージを感じる。
この映画の良い点について。
・連続殺人犯・でんでん氏の二面性の表現
・吹越満演じる社本の怯え方
現実でも人を引っ張ることが上手い人って、言葉巧みで、人当たりよくて、声が大きくて、最もらしい理屈を語り、諭すような優しさを見せたと思えば、強引な暴力性も見せる。こういう人、誰しも身近に思い浮かぶのでは?豪快な人物の演技は、俳優の元の人間性がとても重要。でんでん氏も、起用センスも唯一無二。
驚いている猶予も与えられないままに連続殺人を手伝わさせられる吹越満演じる社本。実際、命の危険に晒される暴力的な人間を目の前にすると、危機感なく生きてきたほどガクガクと震える。言葉も出ず、語彙を失い、「はい」しか言えなくなる。精神が追い詰められてくると、唯一の居場所である車内で精神が落ち着く思い出の言葉をブツブツと呟く(多くの人の場合は、聴き馴染んだ懐かしい曲を口ずさんだり)。ここら辺はとってもリアルに感じました。
この映画の制作秘話とかインタビューなどなど見ていませんし、
読み違いかもしれませんが、この映画のメッセージは「生きる強さを学ぶ」なのかなという気がしました。
善人面した詐欺者が我々の隣に潜んでいるかもしれない。
平和ボケとか、闘いの恐怖から逃げてないで、
搾取者に立ち向かえ!親なんか捨てちまえ!みたいなもの。
そう考えると、臆病な子羊だったことが露見した殺人犯・村田の、社本に対する説教は父性愛だったように思える。
臆病な一般人、そして多くの視聴者をメタファーしたかのような主人公・社本。
逃げないで闘うよ!ありがとう村田!
って思えるか!!
おそらく好意的に解釈すれば、この世を生き抜くためには善人面の悪人にも用心し、
立ち向かい、強く生きましょうということになると思う。
誰にもありがとうは要らないから、搾取されないよう誰しも気を付けよう。
実際にあったのだから、遠い世界のフィクションではない。
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