詰将棋的表現では「逆算」でなく「正算」で書かれた作品と思った。要するに結末をまず想定し、それに向かってキチンとまとまるように書く「逆算」でなく、舞台設定を用意して登場人物が自在に動くような創作法である。例えば本格ミステリは「逆算」創作が適しており、読んでいる時には見当も付かなかったさまざまな伏線が回収されて真相が浮かび上がった時、読者は大きな満足感を得る事が出来るだろう。本作をそのように読むと、伏線と思った謎が謎のまま残り消化不良と感じさせると思う。私が「逆算」でないと思ったのはそのためだ。
恐らく「正算」で書かれたと思われる本作は、魅力的な舞台設定の中で登場人物が生き生きと動いている。その結果、本格ミステリなら看過出来ないような謎がそのまま残ってしまっているが、それでいいのである。
恐らくスッキリ綺麗なまとめを求める人には向かない作品と思うが、何だかモヤモヤ感が残る結末も決して悪くないと個人的には思う。リアルな高校時代なんて、そんなものだから。
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