馬鹿馬鹿しい。社会調査の基本的なポイントを一つも押さえていない、バラまき「テスト」に年間数十億円もかけていたなんて。日本の教育現場は何年もの間、この馬鹿げた調査の順位を気にして、現状を正しく認識するどころか歪めてきた。
なぜ、筆者は学力「調査」ではなく、学力「テスト」というのか。それは、学力「テスト」が、社会調査のポイントを踏まえず、単なるバラまきテストだったからだと筆者は言う。
「なぜ、こんなこと(全国学力テストが指導に役立つどころか、自治体間・学校間の順位競走や平均正答率競走を引き起こした挙句、教員がテストの結果に過敏に反応せざるを得なくなった)のでしょうか。その答えは、科学的な大規模学力調査の方法論を知らないまま、無理矢理に全国学力テストを設計・実施してしまったからです。現行の全国学力テストは全国学力・学習状況『調査』とは名乗っていますが、大規模学力調査の方法論をほとんど踏まえておらず、単に教室で実施する学力テストを全国規模でバラまくだけの代物になってしまっています。私が、全国学力・学習状況『調査』ではなく、全国学力『テスト』と呼ぶ理由はそこにあります。(「はじめに」P.7)
私も、筆者の主張に賛同したい。
筆者はまず、「都道府県や市町村の平均正答率を明らかにすべき」といった声が錯綜する現状の混乱について述べる(第1章)。
次に、全国学力テストの歴史や、稚拙な調査設計について明らかにしていく(第2章)。
そして、PISAから学力調査の基本的なポイントについて整理し、「どのような力をどのように測るのか」という稚拙な設計により、学力の調査になっていないこと、「指導のためのテスト」と「政策のためのテスト」という目的が錯綜し、中途半端になっていること、それらの根本として社会調査の基本的なポイントを踏まえていないことを述べていく(第3〜4章)。
そして批判で終わらず、現状できる分析(国勢調査などと組み合わせる)や、教育政策を適切に評価する「政策のためのテスト」への転換を謳っている(第5章)。
私が特にダメだとと思ったのは、本来学力と強い相関があるはずの、家庭の状況や地域の実態が調査対象ではないこと。筆者によれば、補完的に調査をしようとしても(本調査はほとんど使えない…)、個人情報の壁や、果ては「役に立たない調査には強力しない」と言われ、公教育の充実のために必要なデータが得られないそうだ。これでは、ひたすらに学校や教員の指導不足ばかりが追及・批判・攻撃され、正確な分析ができない。
結果、学校は全国学力テスト「対策」に躍起になり、何時間もかけて過去問をやらせることになる…その方が良い結果が出るから。教員が社会調査の基本的な考え方を学び、批判的スタンスを持つことは大事だ。
何より、筆者も認めるように、国は批判を恐れ、思いつきの教育改革をやりっぱなしにして、適正な評価・修正をしない。それを変えるためにも、私たち一人一人が現状を認識し、より良い在り方を追及し続けることや、教育の充実のためにも、調査に関心を寄せることが必要かと思う。
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全国学力テストはなぜ失敗したのか――学力調査を科学する 単行本 – 2020/9/5
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注目されるのは都道府県順位ばかり、テスト設計は中途半端、分析や活用も不十分、そもそも目的もブレブレ……莫大な予算をかけて、なぜこんなテストが行われているのか? 学力調査の専門家がその問題点と調査の考え方をわかりやすく解説するとともに、現状のテストを望ましい学力調査にするための道筋を提言。
- 本の長さ202ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2020/9/5
- 寸法12.9 x 1.5 x 18.8 cm
- ISBN-104000614193
- ISBN-13978-4000614191
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
全国学力テストの何が問題?どんな学力調査が望ましい?専門家がイチから徹底解説&提言。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
川口/俊明
福岡教育大学教育学部准教授。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。専門は教育学・教育社会学。文部科学省「全国的な学力調査に関する専門家会議」委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
福岡教育大学教育学部准教授。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。専門は教育学・教育社会学。文部科学省「全国的な学力調査に関する専門家会議」委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2020/9/5)
- 発売日 : 2020/9/5
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 202ページ
- ISBN-10 : 4000614193
- ISBN-13 : 978-4000614191
- 寸法 : 12.9 x 1.5 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 292,745位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 635位学校教育一般関連書籍
- - 11,947位教育学一般関連書籍
- カスタマーレビュー:
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2020年9月21日に日本でレビュー済み
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12人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2020年12月7日に日本でレビュー済み
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現場の教員です。全国学力調査もですが、県独自の学力・学習状況調査が毎年実施されています。実施にあたっての事務的負担、その後「調査の活用」の名の下に各校に強いられる分析の負担が大きく、調査の意義よりも弊害を感じてきました。悉皆調査であることは学校間(および所属する教員間)の競争を生み出しています。そのため、低い得点が予想される不登校傾向の生徒には受験をさせない、あるいは本来の教育から逸脱したテスト対策の実施、さらには不正を行うなどの行為のインセンティブを作り出しており、全国や県による学力調査は教育を歪めるものであると考えてきました。
こんなもの、やめればいいのに。
そう思っていた私でしたが、本書は、教員としてだけではなく、この国の社会の一員としての客観的な視点で、学力調査について考えることを可能にしてくれました。まず調査の歴史と概要が俯瞰的に語られます。その上で現行の調査について、目的が両立の難しい「政策のため」と「指導のため」の間でぶれてしまっていること、調査内容がテスト理論や大規模調査の方法論をふまえずに作られていることなど、問題点を具体的に教えてくれます。さらに著者は問題点の指摘にとどまらず、子どもたちのために、学校、社会をよりよくするために、学力調査をどう作り上げていくかについて提言しておられます。本書で一貫しているその誠実な姿勢が顕著なのは、「おわりに」のp.168に書かれた、2020年度の全国学力調査の中止に対する著者の意見です(詳しくは本書をお読みください)。私にはない視点で、感動してしまいました。
教育を改善していくこと、ひいては世の中をよくしていくためには、私たち一人一人が声を上げていく責任があると感じましたので、現場の一教員としてレビューを書かせていただきました。
こんなもの、やめればいいのに。
そう思っていた私でしたが、本書は、教員としてだけではなく、この国の社会の一員としての客観的な視点で、学力調査について考えることを可能にしてくれました。まず調査の歴史と概要が俯瞰的に語られます。その上で現行の調査について、目的が両立の難しい「政策のため」と「指導のため」の間でぶれてしまっていること、調査内容がテスト理論や大規模調査の方法論をふまえずに作られていることなど、問題点を具体的に教えてくれます。さらに著者は問題点の指摘にとどまらず、子どもたちのために、学校、社会をよりよくするために、学力調査をどう作り上げていくかについて提言しておられます。本書で一貫しているその誠実な姿勢が顕著なのは、「おわりに」のp.168に書かれた、2020年度の全国学力調査の中止に対する著者の意見です(詳しくは本書をお読みください)。私にはない視点で、感動してしまいました。
教育を改善していくこと、ひいては世の中をよくしていくためには、私たち一人一人が声を上げていく責任があると感じましたので、現場の一教員としてレビューを書かせていただきました。
2021年9月1日に日本でレビュー済み
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海外のように日本でも沢山のエビデンスが蓄積されるといいですね。未来を創っていく子どもたちに、効果的な投資をしてあげたいものです。
殿堂入りベスト50レビュアー
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①著者の指摘に共感する。全国学力調査の成績のみを判断材料とし、生徒の学力を評価し、教師の資質まで評価するのはいかがなものであろうか、
②大阪府の実態は、まさに政治権力の教育への介入である。生徒が暮らす家庭環境や生育歴、地域の経済力等の背景的要因をすべて無視し、点数のみを一元的に判断材料とする。営業マンの売上の金額のみで、実績を決定するのと同じである。
③生徒の平均点が芳しくない場合、いかなる指導(授業)を受けて、どのような解き方をしたのか、振り返りは必要である。もし教師の指導力不足が確認しましたされるのであれば、指導力を育成する研修と授業研究を段階的に積み上げる必要がある。
④指導力もまた経験値に比例する。初任者研修はともかく、経験年数に応じた教員研修をどこまで体系的に実施しているのであろうか?
⑤今回、著者の指摘の中で最も参考になるのは、この全国学力テストの作問自体の妥当性と適否への疑問である。
PISA(国際学力調査)を無条件(無批判)に信頼し、真似している作問が見られる。
作問者の作問能力自体も問われるのである。
全面的な見直し、この調査自体の改廃も問われてしかるべきだ。
参考になる論点が満載だ。
お勧めの一冊だ。
②大阪府の実態は、まさに政治権力の教育への介入である。生徒が暮らす家庭環境や生育歴、地域の経済力等の背景的要因をすべて無視し、点数のみを一元的に判断材料とする。営業マンの売上の金額のみで、実績を決定するのと同じである。
③生徒の平均点が芳しくない場合、いかなる指導(授業)を受けて、どのような解き方をしたのか、振り返りは必要である。もし教師の指導力不足が確認しましたされるのであれば、指導力を育成する研修と授業研究を段階的に積み上げる必要がある。
④指導力もまた経験値に比例する。初任者研修はともかく、経験年数に応じた教員研修をどこまで体系的に実施しているのであろうか?
⑤今回、著者の指摘の中で最も参考になるのは、この全国学力テストの作問自体の妥当性と適否への疑問である。
PISA(国際学力調査)を無条件(無批判)に信頼し、真似している作問が見られる。
作問者の作問能力自体も問われるのである。
全面的な見直し、この調査自体の改廃も問われてしかるべきだ。
参考になる論点が満載だ。
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