著者の経歴から推して、「ビジネスマン向きに世界史をわかりやすく要約した本だろう」とたかをくくっていたら、それどころじゃなかった。
「訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は1万冊を超える。」との紹介は伊達ではない。下巻の巻末に、細かい文字でびっしりと、14ページに及ぶ参考文献が列挙されているが、「さもありなん。」という感じ。
アマチュアの、しかし筋金入りの知識人が、探求心の赴くままに数多の書籍を読みこなし、その内容を存分に咀嚼して、やわらかな口調で書き下ろした本だ。
全編を貫くのは、長年にわたって現場で活躍してきたリアリストの精神だ。史実がただ列挙されるのではなく、「これこれの要因が重なってこうなった。」と、因果律がきっちり語られる。だから、学校の歴史の授業でギモンに思いつつ、「なんだかなあ」と割り切れぬまま過ぎていったあれこれが、すっきりと腑に落ちる。
東えりかさんの「解説」から引用させていただく。
「……学生時代に習ったようなヨーロッパ史やアメリカ史みたいな縦割りでなく、その時代、世界はどう動いていたのか、気候は、経済は、文化は、どう連動していたのか。/人類がなぜ戦争を起こすようになったか、なぜ宗教が必要となったのか、なぜ国という概念ができたのか。さまざまな文献に記された事実を組み合わせ、大きな事件や戦争が鮮やかに解読される。歴史というより人類の大きな物語を読むようだ。」
「西洋史」「東洋史」みたいな縦割り……と書いたほうがいいように思うが、同感である。もうひとつ特筆すべきは、とかく看過されがちな中央アジアの民の動静が重んじられているところ。
高校で使うカラー刷りの「世界史図説」(1000円くらいで手に入る)をかたわらに置いて、年表や地図や系図を参照しながら完読すれば、世界史の大枠はおおむねアタマに入るはず。受験生の頃にこの本があったら……と本気で思うが、もちろん社会人でも、勉強を始めるのに遅すぎるってことはない。
文庫になってさらにお得、上下あわせて1500円ほどで買えるんだから、むしろ読まないほうが損、と言いたいくらいの一冊(上下二冊だけど)です。
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全世界史 上巻(新潮文庫) Kindle版
歴史に国境なし。つながるからわかる、わかるから面白い!最高の世界史教科書の登場
「全世界史」という言葉はちょっと聞き慣れないかもしれません。普通、歴史は東洋史とか西洋史という形で勉強しますし、書店でもそのように棚が作られています。しかし、世界は本当に東洋と西洋に分かれているのでしょうか? 本書にはそういう予断をいとも簡単に反証してしまう例が満載されています。たとえば紀元前三百年頃のアショーカ王時代のインドには、遠くギリシャから通商使節が訪れていますし、紀元千年の宋の都、開封にはユダヤ人街があったそうです。インドにギリシャ人、中国にユダヤ人と聞くだけで、歴史ファンとしてはワクワクしてしまいます。
本書は、出口治明さんが2017年末に会長職から退任したライフネット生命を起業する前に草稿を書き終えていたそうですので、構想から数えれば10年、まさにライフワークというべき作品です(当初は「小説5000年史」というタイトルだったそうです)。
上巻のカバーを飾るのはアケメネス朝ペルシャの首都ペルセポリスの遺跡の写真。この遺跡のハイライトはなんといってもペルシャ風スフィンクスで象られた「万国の門」(Gate of All Nations)。スフィンクスといえばエジプトですが、アケメネス朝の王カンビュセスがエジプトに遠征、支配したため、こうしてペルシャにスフィンクスが残っているのです。
「全世界史」という言葉はちょっと聞き慣れないかもしれません。普通、歴史は東洋史とか西洋史という形で勉強しますし、書店でもそのように棚が作られています。しかし、世界は本当に東洋と西洋に分かれているのでしょうか? 本書にはそういう予断をいとも簡単に反証してしまう例が満載されています。たとえば紀元前三百年頃のアショーカ王時代のインドには、遠くギリシャから通商使節が訪れていますし、紀元千年の宋の都、開封にはユダヤ人街があったそうです。インドにギリシャ人、中国にユダヤ人と聞くだけで、歴史ファンとしてはワクワクしてしまいます。
本書は、出口治明さんが2017年末に会長職から退任したライフネット生命を起業する前に草稿を書き終えていたそうですので、構想から数えれば10年、まさにライフワークというべき作品です(当初は「小説5000年史」というタイトルだったそうです)。
上巻のカバーを飾るのはアケメネス朝ペルシャの首都ペルセポリスの遺跡の写真。この遺跡のハイライトはなんといってもペルシャ風スフィンクスで象られた「万国の門」(Gate of All Nations)。スフィンクスといえばエジプトですが、アケメネス朝の王カンビュセスがエジプトに遠征、支配したため、こうしてペルシャにスフィンクスが残っているのです。
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2018/7/1
- ファイルサイズ23062 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
複雑きわまる世界史も、たったひとつの歴史=全世界史として読めばもっとわかる、もっと面白い。歴史書一万冊を読んできた著者ならではの切り口で文字の誕生から混迷の現代までを縦横無尽に語る。古代オリエントからローマ、中国、イスラム、モンゴルの歴史がひとつに融合することで日本史の見え方も一新する。現代社会を見る目が変わる、世界史教科書の新・定番。 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
出口/治明
1948(昭和23)年三重県美杉村生れ。立命館アジア太平洋大学学長。京都大学法学部を卒業後、’72年日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006(平成18)年に退職。同年、ネットライフ企画株式会社(現ライフネット生命保険株式会社)を設立。’17年会長職を退任。’18年より現職。京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では歴史の講座を受け持った(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
1948(昭和23)年三重県美杉村生れ。立命館アジア太平洋大学学長。京都大学法学部を卒業後、’72年日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006(平成18)年に退職。同年、ネットライフ企画株式会社(現ライフネット生命保険株式会社)を設立。’17年会長職を退任。’18年より現職。京都大学の「国際人のグローバル・リテラシー」特別講義では歴史の講座を受け持った(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
出版社より
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---|---|---|---|
全世界史 上巻 | 全世界史 下巻 | 「働き方」の教科書―人生と仕事とお金の基本― | |
【新潮文庫】出口治明 作品 | 歴史に国境なし。オリエントから古代ローマ、中国、イスラムの歴史がひとつに融合。日本史の見え方も一新する新・世界史教科書。 | 今いる場所で懸命に試行錯誤する。でも仕事が人生のすべてじゃない。仕事と人生を楽しむ達人が若者に語る、大切ないくつかのこと。 |
登録情報
- ASIN : B07GZNJVGW
- 出版社 : 新潮社 (2018/7/1)
- 発売日 : 2018/7/1
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 23062 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 389ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 74,294位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 268位歴史学 (Kindleストア)
- - 372位歴史学 (本)
- - 2,297位新潮文庫
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上位レビュー、対象国: 日本
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2018年10月15日に日本でレビュー済み
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107人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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ベスト500レビュアーVINEメンバー
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本書の上巻のみのレビューです。
紀元前の文明から説き起こし、メソポタミア文明、エジプト文明、黄河文明、インダス文明など、それぞれ独立して発達したように見えるが、実は文明同士相互に影響しあっていたという、東西俯瞰的な著者の見方は斬新で、これからの成り行きに興趣をそそられました。
しかし、読み進むうちに、東西の歴史イベント、それに関係した人物名など、ほとんど1~2行で説明を終わり、
ドンドンこの調子で記述が進んでいくので、読む気が失せました。
ほかのレビュアーの方も☆一つで「人名の羅列で読む気を失った」と書いておられます。
それなら、書物ではなくて「世界史年表」みたいなものを眺めているのと変わりません。
下巻は読む気が無くなりました。
紀元前の文明から説き起こし、メソポタミア文明、エジプト文明、黄河文明、インダス文明など、それぞれ独立して発達したように見えるが、実は文明同士相互に影響しあっていたという、東西俯瞰的な著者の見方は斬新で、これからの成り行きに興趣をそそられました。
しかし、読み進むうちに、東西の歴史イベント、それに関係した人物名など、ほとんど1~2行で説明を終わり、
ドンドンこの調子で記述が進んでいくので、読む気が失せました。
ほかのレビュアーの方も☆一つで「人名の羅列で読む気を失った」と書いておられます。
それなら、書物ではなくて「世界史年表」みたいなものを眺めているのと変わりません。
下巻は読む気が無くなりました。
ベスト1000レビュアー
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悠久のユーラシア大陸の西のヨーロッパ、
自然の恵みと恐怖と共に生きている。
第五千年紀前半
「地球の温暖化や農業技術の革新などもあって
(ヨーロッパでは)農業の生産性が急上昇しました」
その後
「地球の寒冷化が招いた異常気象がユーラシアの西へも波及してきたのです」
そしてヨーロッパは飢饉に襲われ、ペストが猛威を奮った。
ペストで死と隣り合わせの時、ルネッサンス盛期を迎えた。
「明日死ぬかもしれないなら、今日はお酒を飲もう、恋をしよう、愛し合おう」
芸術家のパトロンとなったメディチ家のロレンツォの詩である。
生きる強さがルネッサンスを生んだ。
本書はユーラシア大陸の歴史が堪能できる。
自然の恵みと恐怖と共に生きている。
第五千年紀前半
「地球の温暖化や農業技術の革新などもあって
(ヨーロッパでは)農業の生産性が急上昇しました」
その後
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そしてヨーロッパは飢饉に襲われ、ペストが猛威を奮った。
ペストで死と隣り合わせの時、ルネッサンス盛期を迎えた。
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芸術家のパトロンとなったメディチ家のロレンツォの詩である。
生きる強さがルネッサンスを生んだ。
本書はユーラシア大陸の歴史が堪能できる。
2020年1月17日に日本でレビュー済み
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上下巻併せて800頁強にまとめられた世界史の入門書です。
本書を読むのが辛ければ、より大雑把な「 世界全史 」がお勧めです。
ただ、社会人が、教養として身に着けるべきは、これらの旧来型世界史(国の歴史)より「 サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福 」、「 サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福 」、すなわち国の枠組みを超えた歴史ではないかと感じています。
本書を読むのが辛ければ、より大雑把な「 世界全史 」がお勧めです。
ただ、社会人が、教養として身に着けるべきは、これらの旧来型世界史(国の歴史)より「 サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福 」、「 サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福 」、すなわち国の枠組みを超えた歴史ではないかと感じています。
2020年3月11日に日本でレビュー済み
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著者の博識と、歴史上の人物に対する積極的、好意的な記述には非常に好感を受けました。ただ、その一方で、やはり世界史を文庫本ただ2冊で記載することは無理があるな、とも感じました。実際の所、全ページが人名、王朝名、地名、年代が羅列に終始し、デパートののディスプレーを外から見ている感じです。この本を本気で理解しようとすれば、予め個々の歴史書を読む必要があり、それを読んでいる人にとっては中身はあまりにお粗末でしょう。その一方で、一般の歴史書と違って、北方民族の南下や地域の繁栄を気球気温の温暖化、寒冷化と結び付けて詳細にされているところと、地球規模での地域ごとの歴史の相互の関連を述べられているところは新鮮な感じを受けました。
2020年5月9日に日本でレビュー済み
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世界史を通史で読んだのは高校の授業依頼なので約30年ぶりです。
この本は正確には「出口さんが書いた」というより「出口さんの知識をライターさんが記述した」というもののようです。
ただ、そもそもの出口さんの知識量が凄いのと、わかりやすいまとめ方が読みやすさを高めています。
特に上巻は歴史的イベントのサイクルが長いので、100年単位で振り返った時の温暖化・寒冷化の気候的変動と経済発展の関係性や、鉄器・騎馬・銃と歩兵などの軍事の歴史に関する視点、そしてシルクロードを支配した中央アジアの国々の変遷に関する描写など、歴史の流れと絡み合いを感じることができます。
こうした出口さんの博識な歴史観を共有してもらえたことで、最後まで楽しく読み終えました。
なお、下巻になるともっと短い期間に数多くのイベントが発生するため、イベントの羅列のような印象が強まり、上巻ほどには楽しめませんでした。
この本は正確には「出口さんが書いた」というより「出口さんの知識をライターさんが記述した」というもののようです。
ただ、そもそもの出口さんの知識量が凄いのと、わかりやすいまとめ方が読みやすさを高めています。
特に上巻は歴史的イベントのサイクルが長いので、100年単位で振り返った時の温暖化・寒冷化の気候的変動と経済発展の関係性や、鉄器・騎馬・銃と歩兵などの軍事の歴史に関する視点、そしてシルクロードを支配した中央アジアの国々の変遷に関する描写など、歴史の流れと絡み合いを感じることができます。
こうした出口さんの博識な歴史観を共有してもらえたことで、最後まで楽しく読み終えました。
なお、下巻になるともっと短い期間に数多くのイベントが発生するため、イベントの羅列のような印象が強まり、上巻ほどには楽しめませんでした。