垣根涼介と言えば、「ワイルドソウル」や「ヒートアイランド」のアップテンポの現代的な作品を想像するが、この初めての
時代小説では全く過去のイメージに囚われない質の高い作品に仕上げたことにまず驚く。とはいえ、今でも
謎の多い明智光秀の「動機」、なぜ光秀が自分を引き立ててくれた信長を裏切ったのかという謎解きを、
光秀が持っていた自分なりの「定理」という概念で説明している。実質的にこの作品の中心的キャラクターは
愚息という名の破戒僧である。この世捨て僧侶と剣の達人である新九郎という二人の想像上の人物を
登場させ、彼らの目から見た光秀を描くことで光秀の性格や哲学を照らし出すという手法を取っている。
信長という絶対的な魔王をなぜ光秀は撃ったのか。歴史的な日本人的性質という観点から光秀という
人物を描き出していくのも新しい発想で面白い。表面的にはオーソドックスな時代小説の形を取りながら観点や
アングルを変えることで史実プラスアルファの面白い作品となった。
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光秀の定理 (単行本) 単行本 – 2013/8/30
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永禄6年、京都。3人の男たちが出会った。貧乏侍・新九郎、なぞの坊主・愚息、浪人中の明智光秀。やがて3人は歴史の重い扉を開いていく。戦国の世に一瞬の光芒を遺した男たちの軌跡を描いた新感覚の歴史小説!
- 本の長さ409ページ
- 言語日本語
- 出版社角川書店
- 発売日2013/8/30
- ISBN-104041105226
- ISBN-13978-4041105221
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
永禄3(1560)年、京の街角で三人の男が出会った。食い詰めた兵法者・新九郎。辻博打を生業とする謎の坊主・愚息。そして十兵衛…名家の出ながら落魄し、その再起を図ろうとする明智光秀その人であった。この小さな出逢いが、その後の歴史の大きな流れを形作ってゆく。光秀はなぜ織田信長に破格の待遇で取り立てられ、瞬く間に軍団随一の武将となり得たのか。彼の青春と光芒を高らかなリズムで刻み、乱世の本質を鮮やかに焙り出す新感覚の歴史小説!!
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
垣根/涼介
1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞し、デビュー。04年『ワイルド・ソウル』で大籔春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞と、史上初の3冠受賞に輝く。05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞し、デビュー。04年『ワイルド・ソウル』で大籔春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞と、史上初の3冠受賞に輝く。05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 角川書店 (2013/8/30)
- 発売日 : 2013/8/30
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 409ページ
- ISBN-10 : 4041105226
- ISBN-13 : 978-4041105221
- Amazon 売れ筋ランキング: - 196,611位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 2,636位歴史・時代小説 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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ベスト1000レビュアー
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2017年1月17日に日本でレビュー済み
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時代小説とみせて、実はちがう。
この本を手に取るヒトの多数が、本能寺の光秀を想像するに違いないが、ある意味その期待は外れることになる。
とはいえ、この本が惹きつけないか、といえばそれは違う。
僕など、電子版の途中であまりに感銘したので、改めて文庫購入したくらいだ。
もちろん、作中で本能寺の変の考察はなされる。
しかし、それはエピローグとしてであり、本編の主人公たる2人-破戒僧の愚息と、流れ武芸者の新九郎の述懐で語られるに過ぎない。
…そこは少し不満の残る箇所ではある。
ヒトが生きるのに必要なのは何か…金か名誉か、あるいは…?
この本において理(ことわり)とは、ヒトの寄る辺を指す。
光秀は寄る辺を出世に求めたが、それは元来が少年のように潔癖な光秀自身が望み、楽しみを見いだせるものだったか…
自身の幸せを知っている、自由な渡世人の目にうつる光秀の苦悩。
この問いかけは、エピローグで語られるには惜しい。
光秀なりの葛藤や格闘の末に本能寺があったはずで、
この小説の前半の濃密さで本能寺を描けば、あるいは
サラリーマン小説としても一大傑作になったかもしれない。
非常に面白い作品であるだけに、
正直なところ後半のリブートを作者にお願いしたく思った。
この本を手に取るヒトの多数が、本能寺の光秀を想像するに違いないが、ある意味その期待は外れることになる。
とはいえ、この本が惹きつけないか、といえばそれは違う。
僕など、電子版の途中であまりに感銘したので、改めて文庫購入したくらいだ。
もちろん、作中で本能寺の変の考察はなされる。
しかし、それはエピローグとしてであり、本編の主人公たる2人-破戒僧の愚息と、流れ武芸者の新九郎の述懐で語られるに過ぎない。
…そこは少し不満の残る箇所ではある。
ヒトが生きるのに必要なのは何か…金か名誉か、あるいは…?
この本において理(ことわり)とは、ヒトの寄る辺を指す。
光秀は寄る辺を出世に求めたが、それは元来が少年のように潔癖な光秀自身が望み、楽しみを見いだせるものだったか…
自身の幸せを知っている、自由な渡世人の目にうつる光秀の苦悩。
この問いかけは、エピローグで語られるには惜しい。
光秀なりの葛藤や格闘の末に本能寺があったはずで、
この小説の前半の濃密さで本能寺を描けば、あるいは
サラリーマン小説としても一大傑作になったかもしれない。
非常に面白い作品であるだけに、
正直なところ後半のリブートを作者にお願いしたく思った。
2019年1月14日に日本でレビュー済み
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明智光秀というと、すぐに”本能寺の変” が連想されると思いますが、本書には”本能寺の変”自体は出てきません。
愚息と新九郎という流れ者の坊主、侍の視点から明智光秀という日本の歴史を動かした男の人物像について詳しく描かれています。
”明智光秀”という人物に関して歴史の教科書では ”信長の暴君ぶりに怒りが爆発したため本能寺の変を起こした” 程度のことしか書かれていませんが、本書を読むことにより彼にどういう背景があり、何故信長に多大な恩義を感じていたにも関わらず最終的に裏切る事になったのか、非常に面白く書かれています。
人間真面目過ぎ、優秀過ぎは良くないという事ですね。気楽でほどほどが一番。。
愚息と新九郎という流れ者の坊主、侍の視点から明智光秀という日本の歴史を動かした男の人物像について詳しく描かれています。
”明智光秀”という人物に関して歴史の教科書では ”信長の暴君ぶりに怒りが爆発したため本能寺の変を起こした” 程度のことしか書かれていませんが、本書を読むことにより彼にどういう背景があり、何故信長に多大な恩義を感じていたにも関わらず最終的に裏切る事になったのか、非常に面白く書かれています。
人間真面目過ぎ、優秀過ぎは良くないという事ですね。気楽でほどほどが一番。。
ベスト500レビュアーVINEメンバー
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「ワイルドソウル」も「君たちに明日はない」シリーズも大好きですが、こちらの本は「月は怒らない」の延長線上にあるように思います。月は怒らない、は大変興味深い作品でした。垣根氏の人生の探索が見え隠れする。こちらも同じように感じます。
この本は、題名にある光秀が主人公ではなく、光秀を憎めない愚息という僧と、剣の達人新九郎が主人公です。
愚息は、きっと垣根さんの理想でしょう。余りに恰好良すぎて光秀をかなり食います。
「光秀の定理」という題名はちょっと重たかった。最後に、愚息と新九郎が、本能寺の変をしでかした光秀の心のうちを探ります。ワクワクしました。でも、垣根氏の解釈にも迷いがあるように、愚息もいつもの切れがなかった。
それより、最初の方に、光秀がイヤイヤ信長を討った、としか思えない、と書かれていますが、面白い解釈でした。それこそ、真実ではないか、と思います。
愚息の海賊時代の作品を書いて欲しいと思います。
この本は、題名にある光秀が主人公ではなく、光秀を憎めない愚息という僧と、剣の達人新九郎が主人公です。
愚息は、きっと垣根さんの理想でしょう。余りに恰好良すぎて光秀をかなり食います。
「光秀の定理」という題名はちょっと重たかった。最後に、愚息と新九郎が、本能寺の変をしでかした光秀の心のうちを探ります。ワクワクしました。でも、垣根氏の解釈にも迷いがあるように、愚息もいつもの切れがなかった。
それより、最初の方に、光秀がイヤイヤ信長を討った、としか思えない、と書かれていますが、面白い解釈でした。それこそ、真実ではないか、と思います。
愚息の海賊時代の作品を書いて欲しいと思います。
2021年2月13日に日本でレビュー済み
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評価の難しい作品である。
博打好きの僧侶愚息と兵法家の新九朗という魅力的な人物が随所で物語を盛り上げるが、主役である光秀の影が薄い。
司馬遼太郎の「国盗り物語」の光秀と比べると凡庸で魅力がない。
また、信長に仕えるまでに多く筆を割き、仕えてからが駆け足のように過ぎて行き、少々強引な形で本能寺の変へと至る。
そこに至るまでには、幾重にも互いの感情の行き違いがあったはずだが、そこがあまり描かれていない。
最終章でその下りは、愚息と新九朗によって語られ、中世日本の有り様まで語られる下りは圧巻であるが、物足りなさを感じる。
ただしかし、著者の他の作品を読んでみたいという興味は十分そそられた。
博打好きの僧侶愚息と兵法家の新九朗という魅力的な人物が随所で物語を盛り上げるが、主役である光秀の影が薄い。
司馬遼太郎の「国盗り物語」の光秀と比べると凡庸で魅力がない。
また、信長に仕えるまでに多く筆を割き、仕えてからが駆け足のように過ぎて行き、少々強引な形で本能寺の変へと至る。
そこに至るまでには、幾重にも互いの感情の行き違いがあったはずだが、そこがあまり描かれていない。
最終章でその下りは、愚息と新九朗によって語られ、中世日本の有り様まで語られる下りは圧巻であるが、物足りなさを感じる。
ただしかし、著者の他の作品を読んでみたいという興味は十分そそられた。
2019年9月9日に日本でレビュー済み
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レヴューが良かったので購入しましたが残念でした。司馬遼太郎の国盗り物語の光秀に魅せられていたので興味を持って購入しました。この本はこの取るに足らない定理とやらを伝えたいもので、光秀も信長も材料にすぎません。新しい光秀像などはないと思います。よってサブキャラクターと思っていた愚息などが主体です。最初あまりにもページを割いているので、もしやと思いましたがそうでした。光秀目当てなら失望するでしょう。作家の頭の中の遊びに付き合うならよろしいんじゃないでしょうか。
2021年2月27日に日本でレビュー済み
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「光秀だけが、信頼できる」
歴史が勝者のものであることを学んだ後に、戦国武将が活躍する古の著書の読後感だ。
それから十数年。大河で描かれた光秀は、それを凌駕し、更なる魅力的な人物として戦国の世を駆け抜けた。
光秀をもっと知りたくて、手に取った本書。謎の多い人物であると言われているが、それを逆手にとり、第三者の目を主軸に展開したことが効を奏している。また、最大のミステリーと言われる「本能寺の変」に至るまでの心情を、表題でもある「定理」と銘することで、大いに納得する結果となっている。期せずして、大河の解説ともなっている部分も随所に見られ、双方の著者の光秀観が共通しているのもファンには嬉しい。
因みに「光秀」は、諱で亡くなった後に使われる名前で、存命のときは、「十兵衛」とのこと。叶うことなら十兵衛に会いたい。
歴史が勝者のものであることを学んだ後に、戦国武将が活躍する古の著書の読後感だ。
それから十数年。大河で描かれた光秀は、それを凌駕し、更なる魅力的な人物として戦国の世を駆け抜けた。
光秀をもっと知りたくて、手に取った本書。謎の多い人物であると言われているが、それを逆手にとり、第三者の目を主軸に展開したことが効を奏している。また、最大のミステリーと言われる「本能寺の変」に至るまでの心情を、表題でもある「定理」と銘することで、大いに納得する結果となっている。期せずして、大河の解説ともなっている部分も随所に見られ、双方の著者の光秀観が共通しているのもファンには嬉しい。
因みに「光秀」は、諱で亡くなった後に使われる名前で、存命のときは、「十兵衛」とのこと。叶うことなら十兵衛に会いたい。