料理は本来、味覚や嗅覚で感じるものなので、視覚表現（しかもたいてい白黒）だけで説明しなければならない漫画は最初から制約がかなり大きいですね。そこで紙面で味覚を表現するために発展してきたのがいわゆる「リアクション」だと思います。本作の場合、普段は仏頂面・堅物・少し遅れてきた反抗期のような妹が、兄の料理を口にして相好を崩すデフォルメで表現しています。
でも、このデフォルメは味の表現だけによるものでしょうか？
発酵食品を軸としたレシピと意味ありげなドラマで展開する本作に出される料理には、味だけでなく、兄の思いがつまっています、たぶん。料理は愛情、という有名なフレーズもありますが、家族や大事な人のために作られる料理には特別な思いが込められていると思います。
妹はお肉が大好きで便秘気味と読み取れますが、兄は妹の健康を気遣いつつも、妹の好きな肉を主軸とした料理を作っているんです。妹が大好きなんですね。
作中でも触れられている通り、発酵と腐敗は生物学的に見ると同じ現象ですが、人にとって都合がいいと発酵、都合が悪いと腐敗と言われます。いままで親代りに妹を育ててきた兄が直面しているらしい教育での何かの問題と、「発酵と腐敗」には、共通点があるような気がします。
保護者や教員、友人にとっての都合のいい・悪いでレッテルを貼られる学校の生徒たち、兄は何をもどかしく感じているいるのでしょうか。
紹介されているレシピも手軽なものが多く、家庭料理になっています。大事な家族に普段食べさせる料理、そのリアクションとしてのデフォルメ、「発酵と腐敗」と教育問題、実はいろいろな要素が絡み合っているストーリーだと思います。うまく収束してくれるといいなと願い、続きを楽しみにしています。
ただ、タイトルは、もうちょっと考えても良かったのでは…
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