「そこのババア、まだ息してるか?」
「あんた、いつまで生きるつもり?」
「80かい。じゃ、あと2、3時間は大丈夫だな」
……などの毒舌で知られる毒蝮三太夫だが、
この本の、この箇所を読んで、ざっと鳥肌が立った。
すでに死んだ祖父を生きていることにして、家族が年金をもらい続けた事件のことである。
マムちゃんこと毒蝮三太夫は、金をだまし取っていた家族への憤りではなく、
亡くなっていた老人に目を向けて、こう言った。
「このジジイはエライよ。死んでも家族の面倒みてんだから」
この一言にこそ毒蝮三太夫の奥深さがあると思う。
毒舌の芯には、老人への尊敬、やさしさがあるのだ。
だから多くの「ババアとジジイ」に愛されているのだな。
同氏は、こうも言う。
「オレはね、チャーミングなジジイをいっぱい作って、若い女のコに、
年とは関係ない男の良さがあるってことを知ってもらいたい」
――いい言葉だなぁ。
たしかにマムちゃんだから許される言葉もある。
だれもが“実戦”で使えるような言葉ではない。
けれど、上っ面の啓蒙書よりもはるかに感動するし、元気になれる。
そして、こんな毒舌を口にしても嫌われないジジイになってみたいと
思ったりもした。
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