この「僕等がいた」という作品は、先行してTVアニメになっていてこちらは安部純さんと武藤星児さんが担当していますが、その音楽とはずいぶん違って、まったく違う作品のサントラという感じがします。個人的には、サントラとして聴く分にはこの実写映画版の方が映像描写の添え物としてしっかりとでもじゃまにならずに、(僕等がいたの)作品世界に合っているように思います。
映画としては前後編で構成されており、実はサントラもそれに合わせて2度に分けて作られたようです。(演奏者が前後編で若干異なるとのブックレットの書き込みからの想像ですが)収録された楽曲数は28で約55分ほどのサントラですから、音楽は映像のなかで必要な最小限に抑えて作られたんじゃないかと思います。
音楽そのものは、むしろこれまでの松谷卓さんの映画のサントラのように叙情的な雰囲気が広がっていて、リズミカルだったり力強かったりするような場面の音楽はあまりなく、落ち着いた静かにたゆたゆと流れていくような楽曲がその多くを占めています。メインテーマとなる楽曲はありますが、その単なるアレンジ曲といったものはほとんどなく、多様な旋律がそれでも淡々と流れていき、作品が持つであろう優しい世界へ誘っていくようなそんな感じがしてきます。