梨木さんの小説は何冊も読んでいて、優しくて、時に奇妙な物語を楽しんでいた。しかし、この作品は違った。都会の中で奇跡的に残った(それは奇跡じゃなくてある人の強い思いからなのだが)緑の森の中の旧家に、たまたま集うことになった少年少女たちの物語。しかし、その、特に大事件が起きるわけではない物語の中で、人間が知らぬうちに人を、とりかえしがつかないほど、傷つけること。今の一見平和に見える日本にも、前世紀の前半、日本が陥った地獄への深淵が潜んでいることを目の前に突きつけられる。そして、自分自身の中にある意図しない悪、いや、実はうっすら気づいているのだが、目をそらしてきた悪を照らし出されて狼狽することになる。
世界中にゆっくり、しかし確実に広がりつつあるポピュリズムの霧に対し、実は傍観者になっていた自分もまた、その霧を肯定しているのではないか。深刻な思いにかられるが、最後の4行の呼びかけに救われた気がした。
多くの人に読んでほしい傑作です。
僕は、そして僕たちはどう生きるか (岩波現代文庫) (日本語) 文庫 – 2015/2/18
梨木 香歩
(著)
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本の長さ304ページ
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言語日本語
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出版社岩波書店
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発売日2015/2/18
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ISBN-104006022581
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ISBN-13978-4006022587
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
やあ。よかったら、ここにおいでよ。気に入ったら、ここが君の席だよ―『君たちはどう生きるか』の主人公にちなんで「コペル」と呼ばれる十四歳の僕。ある朝、染織家の叔父ノボちゃんがやって来て、学校に行くのをやめた親友ユージンに会いに行くことに…。そこから始まる、かけがえのない一日の物語。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
梨木/香歩
1959年生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1959年生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2015/2/18)
- 発売日 : 2015/2/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 304ページ
- ISBN-10 : 4006022581
- ISBN-13 : 978-4006022587
- Amazon 売れ筋ランキング: - 12,758位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年12月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前半は、淡々としたストーリーで梨木さんにしては若干軽いかと思っていましたが、途中庭でのコペルと友人の会話が深まるに連れて、”からくりからくさ”に見るような梨木さんの世界観が展開されて、一気に引き込まれて読みました。読んだあと、人が集団になったときの恐ろしさと自分もまたその人であるのだという認識に、心が痛くなりました。ただ一人、自分のことばで自分の考えを持つことが、どんなに生きていくことを厳しくそして切なくしていることでしょう。人と違う意見を自由に述べ、それを認め合っていくというのは理想的ですが、人間は集団で生きていく生き物なので、社会・集団と対立する個人は大きな圧力を受け、自分の場所を見出すことが苦しくなっていくものだと痛感しました。
2018年3月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作者さんの年齢によるのかも知れませんが、ちょっともう、今の子供たちの感覚とは乖離が大きすぎるんではないかなーと、30代のおばさんは思いました。
これを小学校や中学生の子たちが読んで、響くものがあるかなぁ…
意図せずAV作品に出演してしまった様な女の子が(コレは案外有り得るとしても)、何故かダンゴムシに詳しいとか、ちょっと現実味なさ過ぎて。
こんな子いるよね!
こんな喋り方する子いるよね!
って、キャラがいない。
読んでて感情移入ができず、浮世離れしたファンタジー読んでる様な気しかしなかったのです。ファンタジーとしても、面白くなかった。ゴメンナサイ。
西の魔女とか裏庭とか大好きだったんですけどね。
あの頃の文章はとても好きでした。
これを小学校や中学生の子たちが読んで、響くものがあるかなぁ…
意図せずAV作品に出演してしまった様な女の子が(コレは案外有り得るとしても)、何故かダンゴムシに詳しいとか、ちょっと現実味なさ過ぎて。
こんな子いるよね!
こんな喋り方する子いるよね!
って、キャラがいない。
読んでて感情移入ができず、浮世離れしたファンタジー読んでる様な気しかしなかったのです。ファンタジーとしても、面白くなかった。ゴメンナサイ。
西の魔女とか裏庭とか大好きだったんですけどね。
あの頃の文章はとても好きでした。
2015年4月19日に日本でレビュー済み
日本の児童文学に詳しい人は、このタイトルで、あっと気づくと思います。
岩波少年文庫の吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を。
気づいた通り、この作品は、その本の主人公と同じ「コペル」という名を
あだ名に持った、現代の少年が主人公です。
吉野さんの、「君たちは」はコペル君と仲間の物語を、コペル君のおじさんの視点で
その時代を背景に、「生きる」事を考えさせました。(その時の時代は戦争が抜き難いものとしてありました)
もちろん、読み手は作中人物の気持ちをなぞって、コペル君たちと共に考えさせられたのです。
この梨木果歩さんの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」は、今、現代の社会に生きる若者たち
の物語です。なので、さらに一人一人が個性的で、抱えている事情も様々です。
また、大人は少ししか出てきませんし、普通の人とはちょっと違う人が、主人公たちに
ヒントやアドバイスを与える役割で登場します。
そうして、互いの違いを乗り越えて、この社会の中で共通の「どう生きるか」を考えよう!
という若者へのメッセージが、この本のテーマだろうと読み取れます。
真正面から「どう生きるか」とまっすぐに問いかける姿勢が、今では貴重な気がします。
一方で、私は、私たち大人はどう生きてきたか?これから、どう生きるのか?も、
強く問いかけられているように思えます。
今は文庫版ですが、2011年4月に、この本は刊行されています。しかも、メディア版での連載を
まとめた形だったのです。
2011年4月、この時期にこういう本が出ていたということ。
あれから、4年もたってしまったのに、あの時、いっとき、皆が真剣に考えたはずのことは、かすんでしまっている。
もう一度、文字化して考えないといけない。何が起こり、どのような事が分かり、駄目になった事と、
もし、あるとしたら、良くなった事を見つけるとか。
時間やネットの空間で有った、起ったことを活字の本で、もう一度確かめよう。
この本の、もう一つの存在意義はここにもあるように思える。
細やかさ、繊細さと言った、何の評価も当らない、でも、優れて人間的な事を
大事にしたい。
考え方の違う人の話を、安易な同調ではなく、受け止めて考えよう。
そういう考えの存在を知ろう。そういう、作者の呼びかけが行間から聞こえてくる。
ぜひ、大人だけでなく中高生に勧めたい一冊。
岩波少年文庫の吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を。
気づいた通り、この作品は、その本の主人公と同じ「コペル」という名を
あだ名に持った、現代の少年が主人公です。
吉野さんの、「君たちは」はコペル君と仲間の物語を、コペル君のおじさんの視点で
その時代を背景に、「生きる」事を考えさせました。(その時の時代は戦争が抜き難いものとしてありました)
もちろん、読み手は作中人物の気持ちをなぞって、コペル君たちと共に考えさせられたのです。
この梨木果歩さんの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」は、今、現代の社会に生きる若者たち
の物語です。なので、さらに一人一人が個性的で、抱えている事情も様々です。
また、大人は少ししか出てきませんし、普通の人とはちょっと違う人が、主人公たちに
ヒントやアドバイスを与える役割で登場します。
そうして、互いの違いを乗り越えて、この社会の中で共通の「どう生きるか」を考えよう!
という若者へのメッセージが、この本のテーマだろうと読み取れます。
真正面から「どう生きるか」とまっすぐに問いかける姿勢が、今では貴重な気がします。
一方で、私は、私たち大人はどう生きてきたか?これから、どう生きるのか?も、
強く問いかけられているように思えます。
今は文庫版ですが、2011年4月に、この本は刊行されています。しかも、メディア版での連載を
まとめた形だったのです。
2011年4月、この時期にこういう本が出ていたということ。
あれから、4年もたってしまったのに、あの時、いっとき、皆が真剣に考えたはずのことは、かすんでしまっている。
もう一度、文字化して考えないといけない。何が起こり、どのような事が分かり、駄目になった事と、
もし、あるとしたら、良くなった事を見つけるとか。
時間やネットの空間で有った、起ったことを活字の本で、もう一度確かめよう。
この本の、もう一つの存在意義はここにもあるように思える。
細やかさ、繊細さと言った、何の評価も当らない、でも、優れて人間的な事を
大事にしたい。
考え方の違う人の話を、安易な同調ではなく、受け止めて考えよう。
そういう考えの存在を知ろう。そういう、作者の呼びかけが行間から聞こえてくる。
ぜひ、大人だけでなく中高生に勧めたい一冊。