ロボットとの恋を描いた作品って少ないものの他にもありますよね。
この作品の特異性を挙げると、
主人公がロボットをお店で(しかもリサイクルショップで中古)で購入していること。
ロボットがその世界の最先端ではなく、上位モデルが存在している廉価版であること。
この2つが私にとっては衝撃でした。
普通の感性の人が描くと、ロボットに人格が認められている世界観だったり、
もしくは時代の最先端のロボットを自分か周囲の人が発明したり・・・
どこかの遺跡で古代文明のロボットを見つけたり・・・
といったものになるでしょう。
だってロボットとの恋を描くんです。
”そのロボットが特別”であるか、”そのロボットがほとんど人間と同じとして扱われている状態”であるかはかなり重要なはずです。
そうじゃないと、主人公も作中で言っている、
「頭がいい炊飯器に話しかけているようなもんだ」
という考えがどうしても読者の頭にチラつき、楽しめません。
それなのにこの作品はそういったものを用意しません。
ミーナはその辺のお店でサラリーマンが買える値段で売っているロボットなんです。
そんなロボットとの恋をちゃんと描ける作者のセンスは本当に素晴らしいです。
センスというよりはバランス感覚といえるかもしれませんが。
このバランス感覚とはどういうことかというと、
読者が抱くだろう違和感や気持ち悪さを先回りして潰してくれているんですね。
「ロボットなんだから恋愛感情なんてわからないだろう」
↓
ミーナは自分の役割や職務をかなり真面目に守ろうとする。
でもその縛りの中で主人公の感情に寄り添おうとしている描写が多くある
「ロボットなんだからそりゃ人間の言いなりになるだろ。そこに付け込んでるだけ」
↓
主人公は何かをしてもらうときに必ず許可を取っている
嫌がることは絶対にしないだろうと読者が彼を信頼できる
ミーナが主人公と暮らすことで幸せになると確信できる
「ロボットと恋愛するなんて家族に知られたら問題だろう」
↓
異種族間恋愛フェチの妹を登場させることで緩和する
(もちろん解決ではないけれど)
特にちょっと変態といってもいいくらいの妹を登場させたことが素晴らしいです。
二人の関係を全肯定し応援までしてくれる妹がいるので、
読者は安心して二人の温かい関係を見守れるように思います。
さらに同性?の存在がミーナの衣装をかわいくしたり髪型を変えたりする変化も生み出しています。
もし主人公が女性ものの衣装をお店で買ってきて着せたら、かなり気持ち悪い絵面になると思います。
主人公が女性誌を読んでミーナを可愛い髪形にしたら・・・やっぱり読者からしたら気持ち悪いのではないでしょうか。
そういった気持ち悪いエピソードを描かずにミーナの外見をさらに魅力的にする、
それが可能なのはこの妹あってこそです。
本当によくできているな、と感じます。
そのほかにも、表情をほとんど変えないミーナの感情表現として間を上手に使ったり、顔に影を落としたり、過剰にならない表現を上手に使っていることにも本当に感心しました。
これが表情豊かなスーパーミーナだったらそういうプログラムをされてるんだろうとしか思いませんが、廉価版の表情がほとんどないミーナだからこそ出る魅力がありますね。
特別じゃないはずの存在を特別な存在に変えている、
そんな素晴らしい作品だと思います。
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