著者は、おそらくマルクス主義労働疎外論の洗礼を受けた世代の作家です。本書は、当時の著者(やや頭でっかちな傾向をもった高学歴新入社員)が実際のサラリーマン生活を送るなかで、現代のサラリーマン労働のなかにも、人間的な充実感や達成感を見いだしうることが発見できたという体験・反省記です。
著者がその体験のなかで見いだした重要なキーワードが「仕事の人格化」(仕事における「自己表現」)です。原材料から製品を作り出し、手ずから消費者に売るという産業革命以前的な労働からはかけ離れた、われわれ現代のサラリーマンも含めて、この概念で、働くことの意味を普遍的に説明できるのではないか、それが本書の最大の示唆だと思います。これによって、「仕事とは何か」「何のために働くのか」といった問題にひとつのヒントを提示してくれます。
読者は、マズローの〈自己実現〉やアーレントの〈仕事〉等へと探求を進める出発点としても本書を楽しめると思います。
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