功利主義倫理や徳倫理、ケアの倫理、責任倫理…といった倫理学全体をひとつの視座から概観できるような本を探していました。
「倫理」(「〇〇すべきである/〇〇すべきでない」)と「倫理学」(「〇〇すべきであるのはなぜか?/〇〇すべきでないのはなぜか?」)の違いの確認から始まり、その違いを強調し、そしてそれを基調として本書は、倫理学というある種の営為を理解するうえで、とても良い入門書であると思います。
「自分自身の倫理観に確固たる自信をもち、他人を教導しようと考えるような倫理好きなひとのなかに、その信念に疑問を投げかける学問である倫理学を嫌うひとがいてもおかしくありません。逆に、世間を教導する倫理は嫌いだが、世間に流通している倫理観にあえて反省を加える倫理学には関心があるというひともいるかもしれません」(同頁)というくだりでは、いつの世でも倫理“学”が求められる所以を感じました。倫理(道徳)が帯びている権威の正当性を問うという出発点を、正義論も、共同体主義も、討議倫理も、ケアの倫理も、責任の倫理も有しているとわかったことは大きな収穫でした。
特にケアの倫理と責任倫理については、著者の他の著作『正義と境を接するもの: 責任という原理とケアの倫理』(2007, https://www.amazon.co.jp/dp/4779501644) にあたってみたいと思いました。
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