この本を読み切って、身をつまされる感覚を持たない人はどれくらいいるのだろうか。
物語を通して、文章は主人公の主観に沿って描かれていく。
演劇の脚本を手がける観察眼の鋭い主人公は、周囲の人間のささいな行動から、その人物の弱みや考えていることを汲み取ってしまう。
就職活動という「何者」かにならなければならない決断をせまられた状況で、主人公がアイデンティティとして求めたものは...
自身を相対化すればするほど、自分と数多の他人との境界がどこにあるのかわからなくなって、深みにはまる。
まだ企業で働いてもいないような学生がもてる真のアイデンティティは、精々人間関係くらいのものである。それも結局本人がコントロールできない、生まれ育ちによるところが大きいのではないか。
現に登場人物のミヅキは、コントロールできない人間関係の不和によって自分の進路選択を真に納得できない形でせざるをえない状況になってしまっている。その他の登場人物も、みな核となるアイデンティティが見つからないことにもがき苦しんでいる。
運良く心から選択したい進路を見つけることのできる人はまれだ。そうでない人は、これからそれを見つけるしかない。
しかし、進路を見つける機会を手に入れるには、進路を心に決めた何者かに擬態しなければならない。そのジレンマに大勢が悩む。
その状況下で、この小説の主人公は、周囲の人間を俯瞰して、「自分は周りの人間とは違う」ことを確認することで、非常に後ろ向きなアイデンティティの輪郭を形成する。
それが巧みな話運びによって衆目に晒されることで、部分的にでも主人公のひねくれた考え方に感情移入していた読者自身に潜む「何者」が、同時に浮き彫りにされたような感覚を覚える。
現代を生きる人間の内面の歪みをあまりに的確にとらえているので、自分のこととして考えすぎる人にはお勧めできないかもしれない。
私自身は、最後の数十ページで「他人にどう思われようとも、何者かを目指して行動し続けることが悩める人間の正しい姿である」という、厳しくもポジティブなメッセージを感じ取った。読後感は爽快とはいかないが、様々なベクトルでの感動があった。
購入オプション
| 紙の本の価格: | ¥693 |
| 割引: | ¥ 109 (16%) |
| | |
| Kindle 価格: | ¥584 (税込) |
| 獲得ポイント: | 6ポイント (1%) |
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
何者(新潮文庫) Kindle版
| 価格 | 新品 | 中古品 |
想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。
就活対策のため、拓人は同居人の光太郎や留学帰りの瑞月、理香らと集まるようになるが――。衝撃のラストが襲いかかる戦後最年少の直木賞受賞作。
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。
就活対策のため、拓人は同居人の光太郎や留学帰りの瑞月、理香らと集まるようになるが――。衝撃のラストが襲いかかる戦後最年少の直木賞受賞作。
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2015/7/1
- ファイルサイズ1510 KB
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。直木賞受賞作。 --このテキストは、kindle_edition版に関連付けられています。
著者について
1989年、岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞受賞。受賞作がベストセラーになり、現役大学生作家として注目される。男子チアリーディングチームを取材した書下ろし長編『チア男子!!』(第3回高校生が選ぶ天竜文学賞受賞)『星やどりの声』『もういちど生まれる』(2012年下半期直木賞候補)、『少女は卒業しない』などの小説を在学中に刊行。2012年春、大学を卒業して就職、大学時代の体験を綴ったエッセイ集『学生時代にやらなくてもいい20のこと』を刊行。2013年1月、『何者』で第148回直木賞を受賞。 --このテキストは、kindle_edition版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
朝井/リョウ
1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。’11年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、’13年『何者』で直木賞、’14年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、kindle_edition版に関連付けられています。
1989(平成元)年、岐阜県生れ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。’11年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、’13年『何者』で直木賞、’14年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、kindle_edition版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B01916B8TU
- 出版社 : 新潮社 (2015/7/1)
- 発売日 : 2015/7/1
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1510 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 273ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 8,360位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

1989年、岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。
2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞受賞。
受賞作がベストセラーになり、現役大学生作家として注目される。
男子チアリーディングチームを取材した書下ろし長編『チア男子!!』
(第3回高校生が選ぶ天竜文学賞受賞)
『星やどりの声』『もういちど生まれる』(2012年下半期直木賞候補)、
『少女は卒業しない』などの小説を在学中に刊行。
2012年春、大学を卒業して就職、大学時代の体験を綴ったエッセイ集
『学生時代にやらなくてもいい20のこと』を刊行。
2013年1月、『何者』で第148回直木賞を受賞。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.1
星5つ中の4.1
624 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
クライマックスの大どんでん返しに、読みおわってからすごい動悸がしてしまうほどでした。そして、どこか自分と拓人を重ね合わせてしまい、自分のこれまでの言動や考え方を振り返させられます。朝井リョウさんの本は初めて読ませていただきましたが、一冊で朝井リョウさんの虜になりました。ミステリー好きの方にもオススメの一冊です。
このレビューの画像
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年10月3日に日本でレビュー済み
違反を報告する
Amazonで購入
101人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2019年5月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ほとんどがセリフで構成され(地の文も、主人公による独白調)、ライトノベルのような読みやすさです。表現も変ったものがいっさいなく、このまま脚本になるのではないかというほどわかりやすい。実際、映画になっていますね。
とくに、終りに近くなって、登場人物同士のぶつかりあいになるところ、なかなか作家の力量が見事です。
また、就職活動に挑戦する大学生にもある意味で役立つところもある小説でしょう。
しかし、すべての登場人物が類型的で、多かれ少なかれ、よくいるタイプであり、今の規格化社会のなかにはまっていくというストーリーで、文学としての面白みに欠けます。就活をしないギンジという登場人物も、今はとりあえず演劇一本なんだろうけれども、これじゃあ、何時まで持つか分からないという凡庸な人物に描かれていて、まったく危険な匂いがしない。文学には、もうちょっと危険で、アブナイ、規格外の要素があった方がいいでしょうね。
とくに、終りに近くなって、登場人物同士のぶつかりあいになるところ、なかなか作家の力量が見事です。
また、就職活動に挑戦する大学生にもある意味で役立つところもある小説でしょう。
しかし、すべての登場人物が類型的で、多かれ少なかれ、よくいるタイプであり、今の規格化社会のなかにはまっていくというストーリーで、文学としての面白みに欠けます。就活をしないギンジという登場人物も、今はとりあえず演劇一本なんだろうけれども、これじゃあ、何時まで持つか分からないという凡庸な人物に描かれていて、まったく危険な匂いがしない。文学には、もうちょっと危険で、アブナイ、規格外の要素があった方がいいでしょうね。
2019年1月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
隣同士でSNSしてコミュニケーションする世代。SNSに載せる自分の内容も、SNSで見る誰かの内容も、実際よりもってみたり、もっていると推測したり...昭和世代からすると高度ではあるけれどある意味ドロドロとしたコミュニケーションが描かれている。最近のニュースでSNSによるいじめも問題になっているが、そんなことも起こるだろうなと感じる。
SNSは気軽に発信できる反面、「ほんとうにたいせつなこと」が「隠れ」たり「埋もれたり」すると表現している。「現実の中にいる」先輩(SNSを使わない)や、現実に立ち戻ろうとする仲間との交流を通して、主人公が変わる姿を描いている。その描き方が鮮やかで、至る所に散りばめられた伏線が最後の最後に繋がり、主人公が周囲からどう見られていたかが分かり主人公と共に読者も恥ずかしさを感じるように設計されている。昭和世代よりゆとり世代の方が主人公との共感部分が大きく、恥ずかしさもなおのことだろう。
SNS世代の大変さが分かり、昭和は平和だったと思う。便利さに埋もれて、却って無駄なことをしたり、大切なことを見失ったりすることがほかにもたくさんあるのだろう。
SNSは気軽に発信できる反面、「ほんとうにたいせつなこと」が「隠れ」たり「埋もれたり」すると表現している。「現実の中にいる」先輩(SNSを使わない)や、現実に立ち戻ろうとする仲間との交流を通して、主人公が変わる姿を描いている。その描き方が鮮やかで、至る所に散りばめられた伏線が最後の最後に繋がり、主人公が周囲からどう見られていたかが分かり主人公と共に読者も恥ずかしさを感じるように設計されている。昭和世代よりゆとり世代の方が主人公との共感部分が大きく、恥ずかしさもなおのことだろう。
SNS世代の大変さが分かり、昭和は平和だったと思う。便利さに埋もれて、却って無駄なことをしたり、大切なことを見失ったりすることがほかにもたくさんあるのだろう。
ベスト1000レビュアー
Amazonで購入
たくさん心に響いたメッセージはあったが、特に、格好悪くてもがむしゃらに自分をさらけ出すことの大切さを改めて感じさせられた。
「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」
「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」
2019年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私にとっては、とても若い作家がとても若い人たちを描いた作品。
途中、読んでいて恥ずかしくなるほどに、登場人物たちがロマンチストでナルシスト。若い頃ってこんなだったかしらと読み進むと、ラストに仕掛けが。なるほど。
しかし、読み終わっても、この作者さんはロマンチストでナルシストであると思います。
若いなあ。自分の歳を思い知らされました。
途中、読んでいて恥ずかしくなるほどに、登場人物たちがロマンチストでナルシスト。若い頃ってこんなだったかしらと読み進むと、ラストに仕掛けが。なるほど。
しかし、読み終わっても、この作者さんはロマンチストでナルシストであると思います。
若いなあ。自分の歳を思い知らされました。
2022年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これから就活本番ですが、あ〜こういう就活生いるいると声を上げて笑っちゃうくらい共感できたし、近しい人が選考進むとその企業についてご近所さんの息子をなじるが如く調べて勝手に一喜一憂する様など描写が的確過ぎて自分から見た癖に気分が悪くなりました。笑 でも面白いから一気読みしちゃいました。
強いて言うならES手書きとかリアル会場行って説明会→面接などは本当にコロナ前って感じがしますね。というかそうだったんだ!って感じ。絶賛コロナ禍の就活生である自分からすると、よくまぁそんな非効率なことやるなって思っちゃいます。パソコンあるのに何で使わないねん。いやここでツッコんでもしょうがないですけど。
このES手書きとかリアル会場で複数ステップ進むのは、これまで100社以上検討してきた中で1,2個とかでした。マイナビなどが主催するリアル合説も私は嫌いだし面倒なので1回しか行ってないですね。
「原発があんなことになって」とあるので、2012年〜2019年あたりなのでしょうが、コロナ前ってこんな感じだったんだーという歴史的資料にもなりそうですね。
webテストを友人と一緒にやる機会とか、コロナと非社交的な性格のせいで大学の友達がほぼ全滅した自分には全く無いですね。webテスト重視しない業界志望というのもあり今まで落ちたことないし…(陽キャなら今でもそういう人いそうだけど…分からん)
とにかく、面白かったです!何者であるかアピール頑張ります!
は〜ぁ、内定ください
強いて言うならES手書きとかリアル会場行って説明会→面接などは本当にコロナ前って感じがしますね。というかそうだったんだ!って感じ。絶賛コロナ禍の就活生である自分からすると、よくまぁそんな非効率なことやるなって思っちゃいます。パソコンあるのに何で使わないねん。いやここでツッコんでもしょうがないですけど。
このES手書きとかリアル会場で複数ステップ進むのは、これまで100社以上検討してきた中で1,2個とかでした。マイナビなどが主催するリアル合説も私は嫌いだし面倒なので1回しか行ってないですね。
「原発があんなことになって」とあるので、2012年〜2019年あたりなのでしょうが、コロナ前ってこんな感じだったんだーという歴史的資料にもなりそうですね。
webテストを友人と一緒にやる機会とか、コロナと非社交的な性格のせいで大学の友達がほぼ全滅した自分には全く無いですね。webテスト重視しない業界志望というのもあり今まで落ちたことないし…(陽キャなら今でもそういう人いそうだけど…分からん)
とにかく、面白かったです!何者であるかアピール頑張ります!
は〜ぁ、内定ください
2020年3月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ただの就活小説のつもりで購入したのだが、いい意味で期待を裏切ってくれた。就活を通して、友人と奮闘していく中、自己と周りの軋轢から生じる葛藤を現代風に描いた作品。現実世界では言えないことをSNSのバーチャル世界で吐き出す毎日。しかしそれがとあるきっかけで崩れ落ち、次第に人間関係が崩れていく様子を描いている。タイトル通り「何者」かになったかのように装い、就活で自分自身をさらけ出せないがためになかなか成功しない。真逆に自分を素直に曝け出し就活に成功した光太郎。自分と同様に肩書に乗っかり自分が「何者」かになっように思うしかなく、自分と似ていることから、その苛立ちを主人公にぶつける理香。
主人公が何者か見出すために、周囲との対比、衝突、協働を見事に描いた作品です。
続編も読みたくなりました。
主人公が何者か見出すために、周囲との対比、衝突、協働を見事に描いた作品です。
続編も読みたくなりました。






