本書は、会社とそこで働く人との関係、これからの人の働き方について書かれた本だ。著者は、法人向けグループウェアサービスを手掛けるサイボウズの社長、青野氏。サイボウズは、社内のワークスタイルの変革を実行し、社員の離職率を大幅に改善したことのある会社で、青野社長自身も三度の育児休暇を取得したり、官公庁の働き方改革の外部アドバイザーなどを務める人物だ。
著者の主張を大雑把にまとめると、以下のとおりである。これまで日本の会社とりわけ大企業は、年功序列や退職金制度に見られるような「社員を我慢させる仕組み」によって運営してきた結果、会社に勤める多くの人間は「楽しく働く」ことがなかなかできていない。楽しく働くためには、自分の夢を持ち、それを会社のビジョンと重ね合わせることが大切だ。会社もこれからは、長時間労働による量の勝負ではなく、アイデア、ニーズの多様化に応えるための差別化戦略、独自のこだわりといった質の勝負に転換しなければならない。そのためには、社員一人ひとりの多様な個性を引き出す必要に迫られる。突き詰めると、会社が楽しくない本当の理由とは、「社会のルールに従わないといけない」「自己主張はわがままである」という、われわれの心の壁である。未来の働き方は、この心の壁を乗り越え、本当に楽しいことを楽しもうとする行動ができるかにかかっている。「自分は何をやりたいのだろうか」と自問自答し、それに沿って行動していくことが大切なのだ。
サイボウズが取り組んでいる、モチベーションを高く保つための仕組みがなかなか興味深い。同社では、モチベーションが高い状態とは「やりたい」「やれる」「やるべき」という三つが重なっている時であると定義する。そして「やるべき」仕事の中から「やりたい」と「やれる」の交点を自らの意思で探して選択することにより、仕事に対する覚悟が生まれ、仕事を楽しく続けることが可能だという。
社員一人一人の個性や多様性を尊重することこそが、これからの真の働き方改革に必要なことなのだろう。ちなみに、働き方改革に関してサイボウズが日経新聞に掲載した意見広告、および公開されているユーチューブの動画広告はなんともユニークであった。特にユーチューブの動画は、是非見ることをお勧めする。シニカルでユーモアたっぷりのアニメで、とても良くできている。
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