最近の日産自動車の元経営者の事件は別として、この数年、企業の不祥事が報じられることが多い。タカタのエアバッグ問題、三菱自動車の燃費性能不正問題、三菱マテリアルグループおよび神戸製鋼の品質不正問題など、大きな事件が報じられてきた。
その都度、第三者委員会などによる事実の調査が行われ、今後の対策について会社が公表する。けれども、なかなか根本的な原因の究明には至らず、対策といってもルールを無暗に厳しくしたり、コンプライアンス教育を実施するなど表層的な手立てに終始していることが多いような気がする。例えば、三菱自動車の場合には、2016年に調査が終了した燃費性能の不正事件を起こす前に、リコール隠しという不正が2000年に当時の運輸省の監査によって発覚している。つまり、リコール隠し事件の際に講じられたはずの対策は功を奏さなかったということである。
それがどうしてなのか、本当に三菱自動車がしなければいけないことは何なのか、について委員会の報告書も所見を述べているが要はコンプライアンス遵守がやらされ仕事になってしまって、社員ひとりひとりが腑に落ちる態になっていないのだと著者の国廣弁護士は述べている。
腑に落ちるコンプライアンス体制には、ストーリーが伴っているとも述べているが、この本はなかなか有益な内容を含んでいる。日本の組織にありがちな同質性や空気の問題についても掘り下げているほか、三菱マテリアルや神戸製鋼などでの素材型産業の企業で近年、品質不正問題が起こったのは実は日本企業がデジタル化の波に乗り遅れているからではないか、という指摘もあり卓見だと思った。
コンプライアンスを受動的で価値を生まない活動としてではなく、企業の成長を目指す攻めのガバナンスにも繋がる積極的な活動としてとらえており、通り一遍な類書と一線を画す内容となっている。終章ではグローバル時代における外国公務員への贈賄、サプライチェーンにおける人権、NGOをどうとらえるか、などにも触れられている、1997年の山一證券破綻を契機に企業不祥事に関わって来た著者の知見が凝縮された良書である。
企業不祥事を防ぐ (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2019/10/18
國廣 正
(著)
著者の作品一覧、著者略歴や口コミなどをご覧いただけます
この著者の 検索結果 を表示
あなたは著者ですか?
著者セントラルはこちら
|
-
本の長さ324ページ
-
言語日本語
-
出版社日本経済新聞出版
-
発売日2019/10/18
-
ISBN-104532323037
-
ISBN-13978-4532323035
よく一緒に購入されている商品
こちらもおすすめ
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
- この1冊ですべてわかるコーポレートガバナンスの基本手塚 貞治単行本
- 図解 不祥事の予防・発見・対応がわかる本プロアクト法律事務所単行本
- 事例でわかる 不正・不祥事防止のための内部監査樋口 達単行本
- これだけは知っておきたい 取締役・監査役・監査部長等にとっての内部監査(改訂版)単行本(ソフトカバー)
- 個人情報保護法の知識〈第4版〉 (日経文庫)新書
- 役員のための法律知識〔第2版〕単行本
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
1分以内にKindleで 企業不祥事を防ぐ (日本経済新聞出版) をお読みいただけます。
Kindle をお持ちでない場合、Get your Kindle here Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
Kindle をお持ちでない場合、Get your Kindle here Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
コンプライアンスは、「過剰規制」から「ものがたり」へ。豊富な実務経験から導き出した、「目からウロコ」の実践的対策の数々を解説。
著者について
國廣正(くにひろ・ただし) 弁護士・国広総合法律事務所 1955年大分県生まれ。東京大学法学部卒業。 専門分野は、危機管理、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、会社法など。多くの大型企業不祥事の危機管理、第三者委員会調査や会社法関係訴訟などを手がける。 日本経済新聞社の「2018年 企業が選ぶ弁護士ランキング」の「危機管理分野」で第1位。 東京海上日動火災保険㈱社外取締役、三菱商事㈱社外監査役、LINE㈱社外取締役、オムロン㈱社外監査役。 公的職務として、内閣府顧問、消費者庁顧問、「内閣府・内閣官房・内閣法制局入札監視委員会」委員長のほか、警察庁の「監察業務の高度化等に関する検討会」、経済産業省の「外国公務員贈賄の防止に関する研究会」、金融庁の「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」などの委員を務める。 著書に、『修羅場の経営責任―今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実』(文春新書)、『それでも企業不祥事が起こる理由』、『内部統制とは、こういうことだったのか』(共著)、『なぜ企業不祥事は、なくならないのか』(共著)(以上、日本経済新聞出版社)など。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
國廣/正
弁護士・国広総合法律事務所。1955年大分県生まれ。東京大学法学部卒業。専門分野は、危機管理、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、会社法など。多くの大型企業不祥事の危機管理、第三者委員会調査や会社法関係訴訟などを手がける。日本経済新聞社の「2018年企業が選ぶ弁護士ランキング」の「危機管理分野」で第1位。東京海上日動火災保険(株)社外取締役、三菱商事(株)社外監査役、LINE(株)社外取締役、オムロン(株)社外監査役。公的職務として、内閣府顧問、消費者庁顧問、「内閣府・内閣官房・内閣法制局入札監視委員会」委員長のほか、警察庁の「監察業務の高度化等に関する検討会」、経済産業省の「外国公務員贈賄の防止に関する研究会」、金融庁の「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」などの委員を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
弁護士・国広総合法律事務所。1955年大分県生まれ。東京大学法学部卒業。専門分野は、危機管理、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、会社法など。多くの大型企業不祥事の危機管理、第三者委員会調査や会社法関係訴訟などを手がける。日本経済新聞社の「2018年企業が選ぶ弁護士ランキング」の「危機管理分野」で第1位。東京海上日動火災保険(株)社外取締役、三菱商事(株)社外監査役、LINE(株)社外取締役、オムロン(株)社外監査役。公的職務として、内閣府顧問、消費者庁顧問、「内閣府・内閣官房・内閣法制局入札監視委員会」委員長のほか、警察庁の「監察業務の高度化等に関する検討会」、経済産業省の「外国公務員贈賄の防止に関する研究会」、金融庁の「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」などの委員を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 日本経済新聞出版 (2019/10/18)
- 発売日 : 2019/10/18
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 324ページ
- ISBN-10 : 4532323037
- ISBN-13 : 978-4532323035
- Amazon 売れ筋ランキング: - 8,103位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
- 監査役事件簿単行本(ソフトカバー)
- 初級 ビジネスコンプライアンス 第2版: 「社会的要請への適応」から事例理解まで単行本
- 業種別・不正パターンと実務対応EY新日本有限責任監査法人単行本
- 不正事例で基礎から学ぶ コーポレートガバナンス新時代の内部統制単行本
- 1分でわかるコンプライアンスの基本単行本
- 企業不正の研究 リスクマネジメントがなぜ機能しないのか?単行本
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.3
星5つ中の4.3
51 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2019年12月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
企業のレピュテーションを下げる不祥事が後を絶ちません。それを防ぐためには、あるいは防げなくても不祥事によるレピュテーションの低下を最低限にするためにどうするのか、についてとても参考になる本です。実例をもとに考え方を述べられているので、とても読みやすいです。
この本と同じような内容で1年ほど前に、國廣弁護士に役員向け勉強会の講師をお願いしました。その講演や打ち合わせで印象に残っているのは、「法律は問題が生じた後にできる(法律は後追い)ので、適法性だけを考えていては、企業のレピュテーションを守ることにつながらない」ということでした(言葉は正確ではないですが)。この本にも同じことが書かれています。
また、「企業は多種多様なステークホルダーのための『社会の公器』であり、企業価値とはステークホルダーの利益の総体・・・」とあります。この一般消費者や社会(常識)を含むステークホルダーの利益に反する行為が「不祥事」であり、このリスクを避けるためにどうすべきを考えるのにとても参考になります。
「企業は社会の公器」とは過去の成功した多くの経営者が言葉は違えども言ってきたことです。多くの企業の「経営理念」にもこれと同じような言葉が含まれています。結局、「社会の公器」であることを意識しない企業は持続的な成長ができない(出来なかった)ということでもあるのだと思います。
「コンプライアンス遵守」の名のもとに、多くの企業が、社員をルールでがんじがらめにして、社員のチャレンジ精神を失わせ、企業自体も窒息死しかかっているように思います。コンプライアンスもルールベースの発想から、実質ベースの発想に変えるときのように思います。
この本と同じような内容で1年ほど前に、國廣弁護士に役員向け勉強会の講師をお願いしました。その講演や打ち合わせで印象に残っているのは、「法律は問題が生じた後にできる(法律は後追い)ので、適法性だけを考えていては、企業のレピュテーションを守ることにつながらない」ということでした(言葉は正確ではないですが)。この本にも同じことが書かれています。
また、「企業は多種多様なステークホルダーのための『社会の公器』であり、企業価値とはステークホルダーの利益の総体・・・」とあります。この一般消費者や社会(常識)を含むステークホルダーの利益に反する行為が「不祥事」であり、このリスクを避けるためにどうすべきを考えるのにとても参考になります。
「企業は社会の公器」とは過去の成功した多くの経営者が言葉は違えども言ってきたことです。多くの企業の「経営理念」にもこれと同じような言葉が含まれています。結局、「社会の公器」であることを意識しない企業は持続的な成長ができない(出来なかった)ということでもあるのだと思います。
「コンプライアンス遵守」の名のもとに、多くの企業が、社員をルールでがんじがらめにして、社員のチャレンジ精神を失わせ、企業自体も窒息死しかかっているように思います。コンプライアンスもルールベースの発想から、実質ベースの発想に変えるときのように思います。
2019年11月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
企業不祥事の原因究明、対応、予防業務に長年携わってきた弁護士による新著である。弁護士は実務家である。当然ながら本書には迂遠な精神論や高邁な理想論はない。あるのは実践論である。
具体的には、①不祥事事案への不適切な対応例、②それへの適切な対応例、③防止のための実践例が、著者が直かに対応したケースや有名な事件等に即して扱われている。とりわけ、③の実践例は著者が現在社外取締役や社外監査役を務めている企業での実践例であり、企業の先進的な取り組みの具体例としても貴重な示唆に富む。これが本書の1つめの特色。
本書の2つめのオリジナリティは、不祥事事案の分析において、悪玉(犯人)捜しなどに注力していない点である。現実に起こる不祥事は、誰でもわかる悪玉がいて、彼が諸悪の根源であり、それを排除すれば万事めでたし、ではない。それどころか、むしろ、真面目で良心的な社員たちがその真面目さゆえに心ならずも(あるいは結果的に)不適切な行為をしてしまうのだ。不祥事の本質には、そういう状況を不可避的につくり出す企業の構造・風土の問題があることを著者は指摘している。そこから日本的真面目さとは一線を画すインテグリティとプリンシプルの重要性と、経営者の意識変革の必要性が論じられている。
これから本格的に始動する令和の時代にふさわしい「コンプライアンス実践の指針」である。
具体的には、①不祥事事案への不適切な対応例、②それへの適切な対応例、③防止のための実践例が、著者が直かに対応したケースや有名な事件等に即して扱われている。とりわけ、③の実践例は著者が現在社外取締役や社外監査役を務めている企業での実践例であり、企業の先進的な取り組みの具体例としても貴重な示唆に富む。これが本書の1つめの特色。
本書の2つめのオリジナリティは、不祥事事案の分析において、悪玉(犯人)捜しなどに注力していない点である。現実に起こる不祥事は、誰でもわかる悪玉がいて、彼が諸悪の根源であり、それを排除すれば万事めでたし、ではない。それどころか、むしろ、真面目で良心的な社員たちがその真面目さゆえに心ならずも(あるいは結果的に)不適切な行為をしてしまうのだ。不祥事の本質には、そういう状況を不可避的につくり出す企業の構造・風土の問題があることを著者は指摘している。そこから日本的真面目さとは一線を画すインテグリティとプリンシプルの重要性と、経営者の意識変革の必要性が論じられている。
これから本格的に始動する令和の時代にふさわしい「コンプライアンス実践の指針」である。
2019年12月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
企業不祥事の例から、コンプライアンスとは何かをわかりやすく、実践的かつ網羅的に書かれた良書だと思います。また國廣弁議士の思いも伝わってきました。こういう書籍がベストセラーになると、企業不祥事はなくなると思う。