著者は、<触れ-合うことcon-tangere>を主題系として、〈場所性〉〈外部性〉〈感性〉〈断片性〉〈伝染性〉を取り上げる。
(機械論的)科学的認識においては、全てが「必然」の連鎖の結果である。ただ(我々は神ではないので)ある主観において、突然やってくる「偶然」に驚くことになり、それが「運命」と感得される場合がある。―「偶然的〈断片性〉が重なり合い、そのなかである符合が見出されると、本来は鳥瞰できないはずの超越的な全体像が幻視される」P.145
全ての偶然が運命に転化することはない。例えば身近に生じた偶然(例:100円玉を拾った。)を、自分の生涯を変えた「運命」に変えることは「しない」。「できない」のではなく「しない」。
そこに働いているのは「運命」を無意識的に選別する「フィルタリング」機構である。
「偶然⇒運命」と解釈され「なかった」偶然にこそ、偶然論の背後で働く「フィルタリング」の働きが垣間見える。
「フィルタリング」機構が正しく働かなかった時、全ての現象が自己の実存に触れてくることになり、拒否反応を促す。⇒〈伝染性〉。
主観的な個人的な「運命」の感得が、ある集団の「運命」と変形して受け取られることがある。
「偶然⇒運命」の解釈を特権化させるもの、それが潜在的なフィルタリング機構「ナショナリズム」である。
ナショナリズムは、上位の審級として「偶然」をフィルタリングしてしまう。
「偶然⇒運命」の解釈の可能性を破滅させ、その反動として虚構性があらわになる。
正直なところをいって、葉山嘉樹への言及は付録程度にしておけばよかったと思う。
〈断片性〉を語るにしても、分量が過剰だ。(そこだけみれば面白かったが……。)
通読して、「自制の効いた著作」だと思った。もっと敷衍して、もっと余計なことを語れるようなテーマだと思うが。
炎上商法はするつもりがないらしい。それで良いと思う。
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