こんなことになるとは。
私はいわゆる「ハーレムもの」にあまり興味がありません。理由は、
・(男性目線でも)あまりにご都合主義的
・妄想っぽすぎて陳腐に感じられる
・ハーレム形成と純愛は設定上トレードオフ
といったところでしょうか。別にオタクコンテンツだからどうこう、というわけではなく、どこか冷めてしまう。
この『五等分の花嫁』が本屋で平積みになっていても、「同級生が美少女の五つ子を家庭教師する」という設定をみてあまりにヒドいと感じたものです。
「こんなのが人気とは……世も末か?」などと思っていました(失礼)。
ところが友人に進められたのをきっかけにシリーズを読み進め、気づきました。五つ子の家庭教師という設定は確かに異常かもしれませんが、描かれているのは「『他人と違う』とはどういうことか」ということに。
DNAは同一な五つ子。
小さい頃はみんな同じ格好でしたが、成長するに従ってそれぞれの個性が出てきた。そんななか、風太郎というイレギュラー因子が登場する。これによって、五つ子は再び共通項を持ちました(恋愛感情も含め)。ですが、恋愛戦略にはそれぞれの個性が出ている。それが亀裂にも結束にも働く。
少しずつ物語が進むにつれて描かれ始めた、「他の姉妹と違うこと」もしくは「他の姉妹と違わないこと」に悩むことに立脚した葛藤や嫉妬。これは結局、人がみな意識してしまう「他人との差異」を、ラブコメの姿を借りて描いているに他ならない。
これは五つ子という設定だからこそ際立っています。
読むまではバカみたいな設定のハーレムものだと思っていました。しかし、描かれている原始的な感情や心の機微には普遍性があるように感じます。だからこそ面白い。だからこそ先が気になる。星5つです。
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五等分の花嫁(10) (週刊少年マガジンコミックス) Kindle版
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言語日本語
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出版社講談社
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発売日2019/6/17
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ファイルサイズ85480 KB
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カスタマーレビュー
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2019年6月17日に日本でレビュー済み
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Amazonで購入
179人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2019年6月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今回も面白かったです。
それぞれの想いを抱えたまま迎える修学旅行。
泥沼の恋愛戦争めいてきたからこそ見える、姉妹の絆の尊さ。
最近、多くのすれ違いやギクシャクを繰り返してきた五つ子たちも一つの壁を乗り越えたのかなという気がしました。
そして今回、ずっと引っ張ってきた例の件についても一つの進展が。
最近の五等分はストーリーが凝ってますね。
ラブコメを読んでて「やられた」と思ったのは初めてかもしれません。
それくらい読んでいて面白い話でした。
それぞれの想いを抱えたまま迎える修学旅行。
泥沼の恋愛戦争めいてきたからこそ見える、姉妹の絆の尊さ。
最近、多くのすれ違いやギクシャクを繰り返してきた五つ子たちも一つの壁を乗り越えたのかなという気がしました。
そして今回、ずっと引っ張ってきた例の件についても一つの進展が。
最近の五等分はストーリーが凝ってますね。
ラブコメを読んでて「やられた」と思ったのは初めてかもしれません。
それくらい読んでいて面白い話でした。
2019年6月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
四葉の表紙良いですね!でも9巻の三玖に続き、今巻もメインは四葉では無かったですね。今回のメインは一花と三玖でした。四葉はアシスタント的な役割。でも要所要所で天使っぷりを発揮してくれます。10巻のラストシーンを見るにどうも次巻が四葉についての話、そしてやはり闇の部分が見えてくる様です。
とりあえず三玖、一花が少しでも報われて良かったです。一花は特に。二乃は自分も大差ないと言ってはいても実際にはああゆうやり方はしないだろうから、どうしても所謂策を弄する役は一花になってしまうんですよね。ある意味悲しい役割を背負わされてたなぁと思います。でも、一時期一定の読者からのヘイトが集まっていたのがこれで収まったみたいで何よりです。
二乃は大きな出番は無かったけどやっぱりハッキリした性格で好感持てます。肝心な所で三玖や一花を失望の淵から救います。そして責めた一花に対しても自分なりに相手の気持ちを考えてみることのできる根の優しい子です。
三玖も最後幸せそうで良かった。やっぱり可愛いです。見開きは最高でした。結局答えは誤魔化しちゃいますが、そうしないとあそこで終わってたかもしれない。まぁ仕方ないですよね。それにしてもこのマンガ、よくキャラクターが水に落ちますね(笑)
五月は色々動いてはいましたが正直行動の理由がよく分からん部分が多い。でもこの子は食べ物食べてる姿を見れるだけでいちいち可愛くて満足です。リアクション豊かでマスコット的なキャラですが恋愛に関しては逆に姉妹の中で1番落ち着いており、友達宣言はあったけど、風太郎のことをどこまで想っているのか1番見えない。他の姉妹を恋愛的な意味で出し抜いて、みたいな感じも一切無いし。でも五つ子の母親の墓参りの件とか全国模試前の差し入れの所とか良い距離感のシーンはしっかり用意されており、かえってラスボス感のようなものがありますね。最後まで分かりませんが。
まぁ、多少都合のいい部分はあったかもしれませんが、過去の名作達も一部の作品を除いて、探せばいくらでも矛盾は出てくるし、そんなこと気にならないぐらいの勢いと面白さがあったからこそ名作になり得たんだと思います。今作も同様に楽しく読ませて頂きました。大満足です。
とりあえず三玖、一花が少しでも報われて良かったです。一花は特に。二乃は自分も大差ないと言ってはいても実際にはああゆうやり方はしないだろうから、どうしても所謂策を弄する役は一花になってしまうんですよね。ある意味悲しい役割を背負わされてたなぁと思います。でも、一時期一定の読者からのヘイトが集まっていたのがこれで収まったみたいで何よりです。
二乃は大きな出番は無かったけどやっぱりハッキリした性格で好感持てます。肝心な所で三玖や一花を失望の淵から救います。そして責めた一花に対しても自分なりに相手の気持ちを考えてみることのできる根の優しい子です。
三玖も最後幸せそうで良かった。やっぱり可愛いです。見開きは最高でした。結局答えは誤魔化しちゃいますが、そうしないとあそこで終わってたかもしれない。まぁ仕方ないですよね。それにしてもこのマンガ、よくキャラクターが水に落ちますね(笑)
五月は色々動いてはいましたが正直行動の理由がよく分からん部分が多い。でもこの子は食べ物食べてる姿を見れるだけでいちいち可愛くて満足です。リアクション豊かでマスコット的なキャラですが恋愛に関しては逆に姉妹の中で1番落ち着いており、友達宣言はあったけど、風太郎のことをどこまで想っているのか1番見えない。他の姉妹を恋愛的な意味で出し抜いて、みたいな感じも一切無いし。でも五つ子の母親の墓参りの件とか全国模試前の差し入れの所とか良い距離感のシーンはしっかり用意されており、かえってラスボス感のようなものがありますね。最後まで分かりませんが。
まぁ、多少都合のいい部分はあったかもしれませんが、過去の名作達も一部の作品を除いて、探せばいくらでも矛盾は出てくるし、そんなこと気にならないぐらいの勢いと面白さがあったからこそ名作になり得たんだと思います。今作も同様に楽しく読ませて頂きました。大満足です。
2019年8月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
以下本巻の内容に触れる部分が多数あります。ご注意下さい。
例えば四葉であれば「13話ではバスケ部の勧誘を断ったのに『七つのさよなら』では試験直前にもかかわらず陸上部の誘いを断れず全員に迷惑を掛けてしまう」など、五等分の花嫁は長編ごとのシナリオ優先でキャラクターの性格に一貫性がない傾向があることはこれまでもたびたび示されて来ました。
この長編では一花と三玖がその犠牲になっています。
シナリオ優先の弊害が露骨に出た場面が伏見稲荷で一花が三玖に変装するくだりです。何がひどいと言って一花にとってここで三玖に扮する意味はまったくないのです。この時の一花は風太郎と三玖を会わせたくないだけなので、別に変装しなくても自分の姿のままで風太郎を誘導すれば良かった。自分の姿では勇気が出ない?58話でバレンタインチョコを作る三玖と会わせないために本屋に誘ってましたけれど。
では何のために変装したかというと、変装した姿で三玖と鉢合わせさせるためだけです。もう本当にそれだけの、話の都合でしかないのです。
その後も一花は支離滅裂な行動を繰り返します。
清水寺でまたも懲りずに三玖に変装して風太郎を呼び出します。何のために変装したのかというと五月が落とした写真を利用して写真の子が一花であったと誤認させるため、ではなくこの後風太郎に正体を見破られるイベントのためです。そうとしか言えないほど三玖に変装する導入が強引です。大体写真を利用するなら落とした五月か写真に写っている四葉に変装する方が自然な発想ではないでしょうか。
その後ホテルで三玖に謝られたら突然改心して風太郎の行き先を三玖に譲ります。伏見稲荷で二乃に諭された時点では開き直ったのに。
そもそもここで三玖が謝るいわれはないのでこれも一花に譲らせるための都合でしょう。
今回の一花は作者の都合に振り回される哀れな操り人形でしかありません。
三玖もまたその都度性格を変えられて来ました。
ミステリアスガールとして登場した三玖は真っ先に恋に落ち、中盤をずっとミステリアスの片鱗もない積極的な性格で過ごして来ましたが、今回は一花との競争に怯え告白に怯える消極的な性格であるとされています。そういうペルソナを演じさせられています。
班決めでは二乃の勢いに押され、四葉の不用意な一言のために逃げ出し、姉妹を閉め出して一人ホテルに閉じこもり、「公平に戦うことがこんなに怖いなんて思わなかった」と泣き出してしまいます。公平に、と一花に宣言したのは4巻でしたのでそれから6巻分、作中の時間でも半年も経ってから今更何を言っているのでしょうか。修学旅行が始まるまでは割とぐいぐい攻めていたようにも思いますし。「私の目的はフータローじゃない」と前向きに始めたアルバイトも「告白を先延ばしにするため」と後ろ向きの動機にすり替えられてしまいました。
極めつけにおかしいのが告白の後のシーンです。
姉妹のお膳立てもあって84話で三玖はとうとう風太郎に告白します。ところが86話で断られることを察知した三玖は告白をごまかしてしまいます。
ごまかすこと自体がどうかと思いますがやり方が最悪です。言うに事欠いて「自意識過剰くん」って……。
この発言は修学旅行での一連の言動とも合いませんしそれまでの言動とも合いません。9巻までの三玖であればたとえ振られたとしても、いみじくも68・69話で決意し55話で宣言したように「フータローに好きになってもらえる私になるから見ててね」と言ったはずです。
少なくとも風太郎に「自意識過剰くん」などと言うことはなかったでしょう。
三玖の告白は五つ子が行き当たりばったりで迷走した、散々だったシスターズウォーがようやく結実した瞬間でした。読者もやれやれと一息ついたはずです。それを全部台無しにしてしまいました。いえ、単に告白を台無しにしただけではありません。三玖の恋心とか、話の盛り上げとか、読者の好感度とか期待感とか、これまで積み重ねてきたものを全部ご破算にしてしまいました。
おかしいのはこの二人だけではなく他の子もそうです。
例えば五月が零奈に変装したのは何の意味があったのでしょうか。
一花と三玖の影に隠れてあまり見えませんが五月もまた修学旅行中ずっと迷走していました。何回直接見ても聞いても一花が風太郎を好きだということを忘れる五月は78話で改めて驚きます。修学旅行のための買い物では性格に合わない下着を買い求めます。これも三玖に穿かせるためのご都合だったわけですが。零奈への変装はその後の展開にほとんど何の影響も及ぼしません。清水寺でのツーショット写真は言うに及ばず。そもそも姉妹の間で何が起きているのかすらさっぱり気づきません。
まあ五月に限っては家出して同級生男子の家にやっかいになったり混浴に突撃したりと元々突拍子もない動きをするキャラクターだったので一花や三玖ほどの違和感はないですが。
応援に回った四葉も終始うろちょろしてるだけで結局何もなし得ませんでした。
四葉は「いつも消極的になってる子を応援してた」と言いますが、何度も言うように三玖は修学旅行までは結構積極的でした。
消極的と言うならむしろ一花です。
混浴に押しかける二乃や五月、飛びついて押し倒す三玖と比べて、74話が典型的ですが一花はストレートに思いを告げられずいつも回りくどいやり方で失敗します。さらに言うと海辺でキスをしようとしたときは五月の姿でしたし、一花が風太郎を好きだと告げた時は三玖の姿でした。他人の姿を借りないと大胆な行動が出来ないのです。
一花は恋に臆病で気持ちをまっすぐに伝えられないキャラクターです。消極的な子を応援すると言うなら四葉は一花を応援すべきでした。おかげで応援キャラなのに姉妹をちゃんと見ていない残念な子のようになってしまっています。
一番気の毒だったのは「京都で決着を付ける」と宣言していたにも関わらず展開のあおりを受けて姉妹のフォローに回った結果何も出来ずに終わった二乃でしょうか。何もできなかったがためにおかしな行動もさせられなかったのは果たして良かったと言えるかどうかわかりませんが。
何の展望もなく三玖への変装を繰り返す一花。
過去を改変されて消極的にされた三玖。
もう一花の顔をしていても一花に見えません。三玖の顔をしていても三玖に見えません。五つ子の六人目だかエイリアンだか知りませんが、これ外見だけ同じで中身は入れ替わった別人ですよね。
何だかカプグラ症候群のような感覚に陥ります。ラブコメじゃなくてホラーを見ている気分です。
これまでの話では違和感があっても思春期の揺れ動く気持ちだとか人間は常に合理的な判断をするわけではないとか、そう言える範囲に留まってました。しかし今回は一線を越えてしまった観があります。
恐らく作者は話作りに自信があるのでしょう。確かに以前は後々の展開のためにもっと細やかに布石を打っていましたが、今回は強引さばかりが目立ちました。話が進むにつれてキャラクターが暴走してストーリーがめちゃめちゃになるというのはしばしば聞きますが、話も終盤に入ってからシナリオが暴走してキャラクターが崩壊するというのは珍しいのではないでしょうか。
作者の中ではストーリーの方が主体であって、キャラクターはそれに合うように動くだけのただの舞台装置なのかもしれません。でも読者は決してストーリーだけを評価しているわけではありません。
そして最大の問題点は今回の話を通して作者が何をしたかったのか、意図がわからないことです。
キャラクターを歪めてまで何をしたかったのか、それが見えてこない。
やりたかったことが三玖の告白ではないことは確かです。一世一代の告白シーンだと思ったのに実はその裏で行われていた姉妹の仲直りイベントの前座でしかなかったのですから。
するとやりたかったことは姉妹の絆の再確認でしょうか。81話での二乃の台詞や86話で「雨降って地固まる」と言わせているところから見てそれが一番ありそうですが、しかしそれももう何度目かという話であってわざわざ京都でやる必要はありません。
そう、多くの読者が期待していたのは写真の子の話だったはずです。
公立小中学校ならともかく私立高校の修学旅行先が京都というのは非常に珍しいと思いますが、そこをわざわざ京都にしたからには写真の子の話をやると思っていました。
しかし残念ながら京都ではその話はメインではなく、帰宅してからようやく四葉であったことが明かされます。
つまり写真の子の話がやりたかったわけでもない。
もちろん修学旅行を通して脇役に徹した二乃や五月の話がしたかったわけでもありません。
もし今回の一連の話に意味があるとすれば、花嫁が一花であってここで一度脱落したかのように見せかけることでしょうか。しかしそれにしてもこんなイジメのように悪い役割を振り分けるのではなくもっとやり方があったと思います。
作品は作者のものかもしれませんがそれで読者の納得を得られるかどうかは別です。
少なくとも今回の長編は五つ子のテストの如く赤点でした。
次巻は盛り返すことを期待します。
例えば四葉であれば「13話ではバスケ部の勧誘を断ったのに『七つのさよなら』では試験直前にもかかわらず陸上部の誘いを断れず全員に迷惑を掛けてしまう」など、五等分の花嫁は長編ごとのシナリオ優先でキャラクターの性格に一貫性がない傾向があることはこれまでもたびたび示されて来ました。
この長編では一花と三玖がその犠牲になっています。
シナリオ優先の弊害が露骨に出た場面が伏見稲荷で一花が三玖に変装するくだりです。何がひどいと言って一花にとってここで三玖に扮する意味はまったくないのです。この時の一花は風太郎と三玖を会わせたくないだけなので、別に変装しなくても自分の姿のままで風太郎を誘導すれば良かった。自分の姿では勇気が出ない?58話でバレンタインチョコを作る三玖と会わせないために本屋に誘ってましたけれど。
では何のために変装したかというと、変装した姿で三玖と鉢合わせさせるためだけです。もう本当にそれだけの、話の都合でしかないのです。
その後も一花は支離滅裂な行動を繰り返します。
清水寺でまたも懲りずに三玖に変装して風太郎を呼び出します。何のために変装したのかというと五月が落とした写真を利用して写真の子が一花であったと誤認させるため、ではなくこの後風太郎に正体を見破られるイベントのためです。そうとしか言えないほど三玖に変装する導入が強引です。大体写真を利用するなら落とした五月か写真に写っている四葉に変装する方が自然な発想ではないでしょうか。
その後ホテルで三玖に謝られたら突然改心して風太郎の行き先を三玖に譲ります。伏見稲荷で二乃に諭された時点では開き直ったのに。
そもそもここで三玖が謝るいわれはないのでこれも一花に譲らせるための都合でしょう。
今回の一花は作者の都合に振り回される哀れな操り人形でしかありません。
三玖もまたその都度性格を変えられて来ました。
ミステリアスガールとして登場した三玖は真っ先に恋に落ち、中盤をずっとミステリアスの片鱗もない積極的な性格で過ごして来ましたが、今回は一花との競争に怯え告白に怯える消極的な性格であるとされています。そういうペルソナを演じさせられています。
班決めでは二乃の勢いに押され、四葉の不用意な一言のために逃げ出し、姉妹を閉め出して一人ホテルに閉じこもり、「公平に戦うことがこんなに怖いなんて思わなかった」と泣き出してしまいます。公平に、と一花に宣言したのは4巻でしたのでそれから6巻分、作中の時間でも半年も経ってから今更何を言っているのでしょうか。修学旅行が始まるまでは割とぐいぐい攻めていたようにも思いますし。「私の目的はフータローじゃない」と前向きに始めたアルバイトも「告白を先延ばしにするため」と後ろ向きの動機にすり替えられてしまいました。
極めつけにおかしいのが告白の後のシーンです。
姉妹のお膳立てもあって84話で三玖はとうとう風太郎に告白します。ところが86話で断られることを察知した三玖は告白をごまかしてしまいます。
ごまかすこと自体がどうかと思いますがやり方が最悪です。言うに事欠いて「自意識過剰くん」って……。
この発言は修学旅行での一連の言動とも合いませんしそれまでの言動とも合いません。9巻までの三玖であればたとえ振られたとしても、いみじくも68・69話で決意し55話で宣言したように「フータローに好きになってもらえる私になるから見ててね」と言ったはずです。
少なくとも風太郎に「自意識過剰くん」などと言うことはなかったでしょう。
三玖の告白は五つ子が行き当たりばったりで迷走した、散々だったシスターズウォーがようやく結実した瞬間でした。読者もやれやれと一息ついたはずです。それを全部台無しにしてしまいました。いえ、単に告白を台無しにしただけではありません。三玖の恋心とか、話の盛り上げとか、読者の好感度とか期待感とか、これまで積み重ねてきたものを全部ご破算にしてしまいました。
おかしいのはこの二人だけではなく他の子もそうです。
例えば五月が零奈に変装したのは何の意味があったのでしょうか。
一花と三玖の影に隠れてあまり見えませんが五月もまた修学旅行中ずっと迷走していました。何回直接見ても聞いても一花が風太郎を好きだということを忘れる五月は78話で改めて驚きます。修学旅行のための買い物では性格に合わない下着を買い求めます。これも三玖に穿かせるためのご都合だったわけですが。零奈への変装はその後の展開にほとんど何の影響も及ぼしません。清水寺でのツーショット写真は言うに及ばず。そもそも姉妹の間で何が起きているのかすらさっぱり気づきません。
まあ五月に限っては家出して同級生男子の家にやっかいになったり混浴に突撃したりと元々突拍子もない動きをするキャラクターだったので一花や三玖ほどの違和感はないですが。
応援に回った四葉も終始うろちょろしてるだけで結局何もなし得ませんでした。
四葉は「いつも消極的になってる子を応援してた」と言いますが、何度も言うように三玖は修学旅行までは結構積極的でした。
消極的と言うならむしろ一花です。
混浴に押しかける二乃や五月、飛びついて押し倒す三玖と比べて、74話が典型的ですが一花はストレートに思いを告げられずいつも回りくどいやり方で失敗します。さらに言うと海辺でキスをしようとしたときは五月の姿でしたし、一花が風太郎を好きだと告げた時は三玖の姿でした。他人の姿を借りないと大胆な行動が出来ないのです。
一花は恋に臆病で気持ちをまっすぐに伝えられないキャラクターです。消極的な子を応援すると言うなら四葉は一花を応援すべきでした。おかげで応援キャラなのに姉妹をちゃんと見ていない残念な子のようになってしまっています。
一番気の毒だったのは「京都で決着を付ける」と宣言していたにも関わらず展開のあおりを受けて姉妹のフォローに回った結果何も出来ずに終わった二乃でしょうか。何もできなかったがためにおかしな行動もさせられなかったのは果たして良かったと言えるかどうかわかりませんが。
何の展望もなく三玖への変装を繰り返す一花。
過去を改変されて消極的にされた三玖。
もう一花の顔をしていても一花に見えません。三玖の顔をしていても三玖に見えません。五つ子の六人目だかエイリアンだか知りませんが、これ外見だけ同じで中身は入れ替わった別人ですよね。
何だかカプグラ症候群のような感覚に陥ります。ラブコメじゃなくてホラーを見ている気分です。
これまでの話では違和感があっても思春期の揺れ動く気持ちだとか人間は常に合理的な判断をするわけではないとか、そう言える範囲に留まってました。しかし今回は一線を越えてしまった観があります。
恐らく作者は話作りに自信があるのでしょう。確かに以前は後々の展開のためにもっと細やかに布石を打っていましたが、今回は強引さばかりが目立ちました。話が進むにつれてキャラクターが暴走してストーリーがめちゃめちゃになるというのはしばしば聞きますが、話も終盤に入ってからシナリオが暴走してキャラクターが崩壊するというのは珍しいのではないでしょうか。
作者の中ではストーリーの方が主体であって、キャラクターはそれに合うように動くだけのただの舞台装置なのかもしれません。でも読者は決してストーリーだけを評価しているわけではありません。
そして最大の問題点は今回の話を通して作者が何をしたかったのか、意図がわからないことです。
キャラクターを歪めてまで何をしたかったのか、それが見えてこない。
やりたかったことが三玖の告白ではないことは確かです。一世一代の告白シーンだと思ったのに実はその裏で行われていた姉妹の仲直りイベントの前座でしかなかったのですから。
するとやりたかったことは姉妹の絆の再確認でしょうか。81話での二乃の台詞や86話で「雨降って地固まる」と言わせているところから見てそれが一番ありそうですが、しかしそれももう何度目かという話であってわざわざ京都でやる必要はありません。
そう、多くの読者が期待していたのは写真の子の話だったはずです。
公立小中学校ならともかく私立高校の修学旅行先が京都というのは非常に珍しいと思いますが、そこをわざわざ京都にしたからには写真の子の話をやると思っていました。
しかし残念ながら京都ではその話はメインではなく、帰宅してからようやく四葉であったことが明かされます。
つまり写真の子の話がやりたかったわけでもない。
もちろん修学旅行を通して脇役に徹した二乃や五月の話がしたかったわけでもありません。
もし今回の一連の話に意味があるとすれば、花嫁が一花であってここで一度脱落したかのように見せかけることでしょうか。しかしそれにしてもこんなイジメのように悪い役割を振り分けるのではなくもっとやり方があったと思います。
作品は作者のものかもしれませんがそれで読者の納得を得られるかどうかは別です。
少なくとも今回の長編は五つ子のテストの如く赤点でした。
次巻は盛り返すことを期待します。
ベスト500レビュアー
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ある意味で一区切りの巻。
修学旅行でのドタバタで、恋しているからこそ卑怯になってしまう一花、恋しているからこそストレートに強さを発揮する二乃、恋しているからこそ臆病になってしまう三玖、と三者三様の「恋」と五ツ子ならではの家族の絆が同時に描かれていて目を離せない巻でした。
あと風太郎が単なる鈍感主人公ではなく、地味な誠実さを発揮しているところもいい男だなと感じさせてくれます。
家庭教師となってから仲良くなり出来た関係の集大成みたいな一区切り回でしょうか。
ラストで過去に出会った少女の正体も明かされますし、過去との関わりもこれから描かれるかもしれません。
まあ正体に関しては今までの作品の描写や登場人物の心情から消去法で推測はできていたので、やっぱりかという面はあるのですが、何故?どうしてそんな行動をとったのか?これからどうなるか?が未知数で、やはりまだまだ気になる展開です。
これからの展開次第でまだまだ五ツ子の誰もが最終結婚相手になるチャンスがあるので、展開に予想がつかないのがもどかしいところです。
私は男前ストレートな二乃が一番好きだけど、物語最初から「恋」して純情な三玖が報われて欲しいという気持ちや、醜態さらしてまで恋してた一花が選らばて欲しい気もありますし、誰が選ばれても祝福と不満な気持ちになるでしょう(笑)。こんな魅力的な登場人物と物語に感謝したいです。
(二乃は男前だからメタ視点だと綺麗にフラれる要員にも思えてしまうのが・・・)
修学旅行でのドタバタで、恋しているからこそ卑怯になってしまう一花、恋しているからこそストレートに強さを発揮する二乃、恋しているからこそ臆病になってしまう三玖、と三者三様の「恋」と五ツ子ならではの家族の絆が同時に描かれていて目を離せない巻でした。
あと風太郎が単なる鈍感主人公ではなく、地味な誠実さを発揮しているところもいい男だなと感じさせてくれます。
家庭教師となってから仲良くなり出来た関係の集大成みたいな一区切り回でしょうか。
ラストで過去に出会った少女の正体も明かされますし、過去との関わりもこれから描かれるかもしれません。
まあ正体に関しては今までの作品の描写や登場人物の心情から消去法で推測はできていたので、やっぱりかという面はあるのですが、何故?どうしてそんな行動をとったのか?これからどうなるか?が未知数で、やはりまだまだ気になる展開です。
これからの展開次第でまだまだ五ツ子の誰もが最終結婚相手になるチャンスがあるので、展開に予想がつかないのがもどかしいところです。
私は男前ストレートな二乃が一番好きだけど、物語最初から「恋」して純情な三玖が報われて欲しいという気持ちや、醜態さらしてまで恋してた一花が選らばて欲しい気もありますし、誰が選ばれても祝福と不満な気持ちになるでしょう(笑)。こんな魅力的な登場人物と物語に感謝したいです。
(二乃は男前だからメタ視点だと綺麗にフラれる要員にも思えてしまうのが・・・)
他の国からのトップレビュー

Rica
5つ星のうち5.0
Tarde, muy tarde, pero seguro llega.
2019年10月19日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
Llego, es lo que importa
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