強く推奨。
映画10本見るよりお得。
ストーリーが非常に素晴らしいことに加え、フランス革命の残虐な実情が実に生々しい。
幕末・明治維新の激動期を描いた島崎藤村「夜明け前」が平和に感じる。
エドモンド・バークの「フランス革命の省察」の併読が尚可。
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二都物語 (新潮文庫) 文庫 – 2014/5/28
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全世界で2億部突破の大ロングセラー。フランス革命下に始まる悲劇の恋。
ディケンズの挿絵画家による初版本のイラスト完全収録! 名作新訳コレクション。
フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン。二人の青年はともに、無実の罪で長年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる。折りしも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた。時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに? 壮大な歴史ロマン、永遠の名作を新訳で贈る。
目次
序文
第一部 人生に甦る
第二部 金の糸
第三部 嵐のあと
訳者あとがき
本文より
あれは最良の時代であり、最悪の時代だった。叡智の時代にして、大愚の時代だった。新たな信頼の時代であり、不信の時代でもあった。光の季節であり、闇の季節だった。希望の春であり、絶望の冬だった。
人々のまえにはすべてがあり、同時に何もなかった。みな天国に召されそうで、逆の方向に進みそうでもあった。要するに、いまとよく似て、もっとも声高な一部の権威者が、良きにつけ悪しきにつけ最上級の形容詞でしか理解することができないと言い張るような時代だった。……(第一部第一章冒頭)
チャールズ・ディケンズ Dickens, Charles J.H(.1812-1870)
英国ポーツマス郊外の下級官吏の家に生れる。家が貧しかったため十歳から働きに出されるが、独学で勉強を続け新聞記者となる。二十四歳のときに短編集『ボズのスケッチ集』で作家としてスタートし、『オリヴァー・ツイスト』(1837-1839)でその文名を高める。他にも自伝的作品『デイヴィッド・コパフィールド』(1849-1850)など数々の名作を生んだイギリスの国民的作家。
加賀山卓朗
1962年愛媛県生れ。東京大学法学部卒。翻訳家。ミステリーを中心とするフィクションのほか、別名義でノンフィクションも翻訳している。訳書にディケンズ『二都物語』、『地下道の鳩』『誰よりも狙われた男』(ジョン・ル・カレ)、『ヒューマン・ファクター』(グレアム・グリーン)、『樽』(F・W・クロフツ)、『夜に生きる』(デニス・ルヘイン)、『春嵐』(ロバート・B・パーカー)などがある。
ディケンズの挿絵画家による初版本のイラスト完全収録! 名作新訳コレクション。
フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン。二人の青年はともに、無実の罪で長年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる。折りしも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた。時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに? 壮大な歴史ロマン、永遠の名作を新訳で贈る。
目次
序文
第一部 人生に甦る
第二部 金の糸
第三部 嵐のあと
訳者あとがき
本文より
あれは最良の時代であり、最悪の時代だった。叡智の時代にして、大愚の時代だった。新たな信頼の時代であり、不信の時代でもあった。光の季節であり、闇の季節だった。希望の春であり、絶望の冬だった。
人々のまえにはすべてがあり、同時に何もなかった。みな天国に召されそうで、逆の方向に進みそうでもあった。要するに、いまとよく似て、もっとも声高な一部の権威者が、良きにつけ悪しきにつけ最上級の形容詞でしか理解することができないと言い張るような時代だった。……(第一部第一章冒頭)
チャールズ・ディケンズ Dickens, Charles J.H(.1812-1870)
英国ポーツマス郊外の下級官吏の家に生れる。家が貧しかったため十歳から働きに出されるが、独学で勉強を続け新聞記者となる。二十四歳のときに短編集『ボズのスケッチ集』で作家としてスタートし、『オリヴァー・ツイスト』(1837-1839)でその文名を高める。他にも自伝的作品『デイヴィッド・コパフィールド』(1849-1850)など数々の名作を生んだイギリスの国民的作家。
加賀山卓朗
1962年愛媛県生れ。東京大学法学部卒。翻訳家。ミステリーを中心とするフィクションのほか、別名義でノンフィクションも翻訳している。訳書にディケンズ『二都物語』、『地下道の鳩』『誰よりも狙われた男』(ジョン・ル・カレ)、『ヒューマン・ファクター』(グレアム・グリーン)、『樽』(F・W・クロフツ)、『夜に生きる』(デニス・ルヘイン)、『春嵐』(ロバート・B・パーカー)などがある。
- 本の長さ666ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2014/5/28
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-10410203014X
- ISBN-13978-4102030141
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出版社より
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デイヴィッド・コパフィールド(一) | デイヴィッド・コパフィールド(二) | デイヴィッド・コパフィールド(三) | デイヴィッド・コパフィールド(四) | 大いなる遺産【上巻】 | 大いなる遺産【下巻】 | |
逆境にあっても人間への信頼を失わず、作家として大成したデイヴィッドと彼をめぐる精彩にみちた人間群像!英文豪の自伝的長編。 | 莫大な遺産の相続人となったことで運命が変転する少年。ユーモアあり、ミステリーあり、感動あり、英文学を代表する名作を新訳! | 没後150年。痛烈なユーモアと深い情感で、人間世界の悲喜交々を描いた、イギリス最大の文豪の代表的傑作長編。 |
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二都物語 | オリヴァー・ツイスト | クリスマス・キャロル | |
【新潮文庫】チャールズ・ディケンズ 作品 | フランス革命下のパリとロンドン。燃え上がる激動の炎の中で、二つの都に繰り広げられる愛と死のロマン。新訳で贈る永遠の名作。 | オリヴァー8歳。窃盗団に入りながらも純粋な心を失わず、ロンドンの街を生き抜く孤児の命運を描いた、ディケンズ初期の傑作。 | 貧しいけれど心の暖かい人々、孤独で寂しい自分の未来……亡霊たちに見せられた光景が、ケチで冷酷なスクルージの心を変えさせた。 |
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン。二人の青年はともに、無実の罪で長年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる。折りしも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた。時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに?壮大な歴史ロマン、永遠の名作を新訳で贈る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ディケンズ,チャールズ
1812‐1870。英国ポーツマス郊外の下級官吏の家に生れる。家が貧しかったため十歳から働きに出されるが、独学で勉強を続け新聞記者となる。二十四歳のときに短編集『ボズのスケッチ集』で作家としてスタートし、『オリバー・ツイスト』(1837‐39)でその文名を高める
加賀山/卓朗
1962年愛媛県生まれ。東京大学法学部卒。翻訳家。ミステリーを中心とするフィクションのほか、別名義でノンフィクションも翻訳している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1812‐1870。英国ポーツマス郊外の下級官吏の家に生れる。家が貧しかったため十歳から働きに出されるが、独学で勉強を続け新聞記者となる。二十四歳のときに短編集『ボズのスケッチ集』で作家としてスタートし、『オリバー・ツイスト』(1837‐39)でその文名を高める
加賀山/卓朗
1962年愛媛県生まれ。東京大学法学部卒。翻訳家。ミステリーを中心とするフィクションのほか、別名義でノンフィクションも翻訳している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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星5つ中の4
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内容の素晴らしさについてはまったく文句ありません。先に青空文庫版(https://www.amazon.co.jp/dp/B009M8VIAW/ref=cm_cr_ryp_prd_ttl_sol_3)を読み始めて翻訳の古さに挫折、こちらを手に取りましたが、旧訳で意味のわからなかった部分がカーテンを取っ払われたようにするするわかり、読書をとても楽しめました。しかし! 新潮社の担当者さんは猛省してもらいたいです。何かというと、青空文庫版にはあった章単位の「論理目次」が本電子書籍にはなく、ユーザビリティが著しく下がっているからです。これだけの大長編を、論理目次なしで読みこなすのは不可能です。第二巻を例にとりますと、【青空文庫】第二巻 黄金の糸 第一章 五年後 第二章 観物 第三章 当外れ 第四章 祝い 第五章 財 第六章 何百の人々 (…以下略)と構成されており、登場人物やある設定がわからなくなったときに、前や後ろの章に簡単に戻ることができます。【新潮社版】※新潮社版は上記の「巻」を「部」と表記している。第二部 金の糸以上!これでは移動できません。内容は満点、制作で減点して2点とさせていただきました。新潮社さん、今からでもいいのでアップデートしてください。※青空文庫版の丁寧な目次のキャプチャを添付します。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年4月10日に日本でレビュー済み
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7人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2014年11月18日に日本でレビュー済み
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フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン
二人の青年はともに、無実の罪で長年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる
折しも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた
時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに?
覚えにくい外国人の名前、地名、固有名詞には苦しめられますねぇ
それはさておき、面白かったです!
皆川博子さんの小説世界と重なる部分多し
などと言ったらディケンズファンのお叱りを受けるかもしれませんが
皆川さんを読んでいたから「二都物語」の小説世界にも容易に入り込めたと思います
ロンドンの悪名高き監獄や精神病院が出てきたときには『懐かしい』と思ったくらいです
19世紀、ヴィクトリア朝最盛期、産業革命で発展を遂げたロンドンに暮らす語り手が約70年前のフランス革命前後を振り返る構成をとっています
フランス革命という歴史的な動乱を背景に描かれるロンドンとパリという二都に暮らし、行き来する人々の人間ドラマ
序盤は登場人物の紹介、中盤で盛り上がり、終盤はミステリー要素にワクワクしながらラストへ一直線
“愛する人のために自らを犠牲にする”あの人の行為は感動ものです
いや、ホント面白かったです
敷居が高いと思われがちな古典文学ですが、本作は超一級エンタティメントとしてお薦めです
二人の青年はともに、無実の罪で長年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる
折しも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた
時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに?
覚えにくい外国人の名前、地名、固有名詞には苦しめられますねぇ
それはさておき、面白かったです!
皆川博子さんの小説世界と重なる部分多し
などと言ったらディケンズファンのお叱りを受けるかもしれませんが
皆川さんを読んでいたから「二都物語」の小説世界にも容易に入り込めたと思います
ロンドンの悪名高き監獄や精神病院が出てきたときには『懐かしい』と思ったくらいです
19世紀、ヴィクトリア朝最盛期、産業革命で発展を遂げたロンドンに暮らす語り手が約70年前のフランス革命前後を振り返る構成をとっています
フランス革命という歴史的な動乱を背景に描かれるロンドンとパリという二都に暮らし、行き来する人々の人間ドラマ
序盤は登場人物の紹介、中盤で盛り上がり、終盤はミステリー要素にワクワクしながらラストへ一直線
“愛する人のために自らを犠牲にする”あの人の行為は感動ものです
いや、ホント面白かったです
敷居が高いと思われがちな古典文学ですが、本作は超一級エンタティメントとしてお薦めです
2019年1月17日に日本でレビュー済み
1859年の作品。
筋がとても入り組んでいて、しかしよく読むと前後の整合性がとれていて、見事だと思った。著者ディケンズはよほどしっかりと構想を立てて、その後集中して仕上げたのだと思う(それができる環境がよくぞあったものだ。作家として認められていたに違いない)。
内容は、巨視的な視点と微視的な視線、歴史物語と文学的描写(人間の心理に焦点を当てている)を巧みに混ぜ合わせ、フランス革命前後のパリの状況を描いている。その技量には恐れ入るばかりだ。
そのうえ、描写も、なんと「意識の流れ」と言おうか「内的独白」というのか、その描き方が見られるではないか(例えば、p.626 p.628 pp.657-8)。さらにもう一つの技巧として、ジョイスの『ユリシーズ』(例えば、第10章)で見られた次のような技法も用いられている。それはある情景が語られているときに、突然、別の場所で、同じ時間に起こっている断片が、何の前触れもなく挿入されるという技法である。そこを説明する。
マネット医師と娘(=チャールズ・ダーネイの妻)とチャールズ・ダーネイ(=シドニー・カートンの振りをしている)とローリーがフランス革命の混乱から必死でイギリスへと逃げているときに(彼らは、正体が分かれば殺されるので、一秒でも惜しいのだ)、とつぜん復讐の権化・ドファルジュ夫人の記述が1行挿入されて、危機感を高める効果を出している。
その間も、ドファルジュ夫人は通りをますます近づいてきた。(p.638)
ドファルジュ夫人は通りをいっそう近づいていた。(p.639)
(※通りにある、逃亡した家に着いて中を探せば、逃亡したことが気づかれてしまうのだ)
まったくの私見だが、「カフカがディケンズの作品を愛読した」――どれくらい事実かは分からないけれど――と言われるのもうなづけることだ。ディケンズは20世紀文学の技法を先取りしているのだと思う。
さて、最後に一つだけ、今日的ではない(理想的過ぎる)と思われる挿話があるので、そこを述べたい。そこは、この作品の根幹にかかわることなので、言っていいのか分からないが、そもそも私自身が素人の読み手であり、私の主観に過ぎないという可能性も高い。それは、弁護士シドニー・カートンがチャールズ・ダーネイ夫妻とその娘を助けるべく、捕らわれの夫ダーネイの身代わりとなって断頭台の露と消えるという設定である。自分の命を代償にするほどの犠牲を払ってもいいものだろうか。カートンにとって、自分自身の生きる権利はどうなるのだろうか。しかしながら、ディケンズはさすがと言おうか、ここで一つの救いを用意している。カートンとともに処刑される一群の中に、ほっそりとして可憐な若い女(貧しい針子)がいて、カートンがダーネイの身代わりになっていることを見抜いた。
「あのかたの代わりに死ぬの?」娘は囁いた。
「加えて彼の妻と子供のために。しいっ! そうだよ」
「ああ、あなたの勇敢な手を握らせてもらえませんか、見知らぬかた」
「しいっ! いいとも、可愛そうなわが妹、握っていなさい、最後まで」(pp.622-3)
命を犠牲にするくらいの善行を積まないと女性にもてないのかと思うと、私は前途に自信を失ってしまった。
筋がとても入り組んでいて、しかしよく読むと前後の整合性がとれていて、見事だと思った。著者ディケンズはよほどしっかりと構想を立てて、その後集中して仕上げたのだと思う(それができる環境がよくぞあったものだ。作家として認められていたに違いない)。
内容は、巨視的な視点と微視的な視線、歴史物語と文学的描写(人間の心理に焦点を当てている)を巧みに混ぜ合わせ、フランス革命前後のパリの状況を描いている。その技量には恐れ入るばかりだ。
そのうえ、描写も、なんと「意識の流れ」と言おうか「内的独白」というのか、その描き方が見られるではないか(例えば、p.626 p.628 pp.657-8)。さらにもう一つの技巧として、ジョイスの『ユリシーズ』(例えば、第10章)で見られた次のような技法も用いられている。それはある情景が語られているときに、突然、別の場所で、同じ時間に起こっている断片が、何の前触れもなく挿入されるという技法である。そこを説明する。
マネット医師と娘(=チャールズ・ダーネイの妻)とチャールズ・ダーネイ(=シドニー・カートンの振りをしている)とローリーがフランス革命の混乱から必死でイギリスへと逃げているときに(彼らは、正体が分かれば殺されるので、一秒でも惜しいのだ)、とつぜん復讐の権化・ドファルジュ夫人の記述が1行挿入されて、危機感を高める効果を出している。
その間も、ドファルジュ夫人は通りをますます近づいてきた。(p.638)
ドファルジュ夫人は通りをいっそう近づいていた。(p.639)
(※通りにある、逃亡した家に着いて中を探せば、逃亡したことが気づかれてしまうのだ)
まったくの私見だが、「カフカがディケンズの作品を愛読した」――どれくらい事実かは分からないけれど――と言われるのもうなづけることだ。ディケンズは20世紀文学の技法を先取りしているのだと思う。
さて、最後に一つだけ、今日的ではない(理想的過ぎる)と思われる挿話があるので、そこを述べたい。そこは、この作品の根幹にかかわることなので、言っていいのか分からないが、そもそも私自身が素人の読み手であり、私の主観に過ぎないという可能性も高い。それは、弁護士シドニー・カートンがチャールズ・ダーネイ夫妻とその娘を助けるべく、捕らわれの夫ダーネイの身代わりとなって断頭台の露と消えるという設定である。自分の命を代償にするほどの犠牲を払ってもいいものだろうか。カートンにとって、自分自身の生きる権利はどうなるのだろうか。しかしながら、ディケンズはさすがと言おうか、ここで一つの救いを用意している。カートンとともに処刑される一群の中に、ほっそりとして可憐な若い女(貧しい針子)がいて、カートンがダーネイの身代わりになっていることを見抜いた。
「あのかたの代わりに死ぬの?」娘は囁いた。
「加えて彼の妻と子供のために。しいっ! そうだよ」
「ああ、あなたの勇敢な手を握らせてもらえませんか、見知らぬかた」
「しいっ! いいとも、可愛そうなわが妹、握っていなさい、最後まで」(pp.622-3)
命を犠牲にするくらいの善行を積まないと女性にもてないのかと思うと、私は前途に自信を失ってしまった。
2018年12月28日に日本でレビュー済み
二都物語のあらすじは知っていましたが、活字で読むのは初めてです。
全般に「午(ひる)」等、漢語を多く使い、
重厚な訳だという印象を受けました。
にもかかわらず「いまだ+肯定形」の誤用があったのは気になりました。
訳出での不満は、
ドファルジュ夫人が「編み物」をしている姿が
何度も出てきますが、棒針編みなのかかぎ針編みなのか不明で
情景をイメージできず、挿絵から判断せざるを得ませんでした。
原文は「knitting」ですから、棒針編みです。
作品を通じて、編み物をする女性は重要なものですので
初回だけでも棒針編みと、訳出して欲しかったです。
他の方も書いている通り、目次が無いのが極めて不親切。
またカバーが色落ちしやすい素材なのも不適切。
重厚かつ読みやすい訳出の試みは高く評価できますが、
以上の残念な点から、低い評価とさせていただきます。
<その他>
原文も「Citizen」なので訳者に全責任があるわけではありませんが
第3部以降に出てくる「市民○○」という
当時のパリで流行していた呼びかけに
違和感を感じました。頭の中でフランス語読みの
「シトワイヤン」に置き換えて読みました。
全般に「午(ひる)」等、漢語を多く使い、
重厚な訳だという印象を受けました。
にもかかわらず「いまだ+肯定形」の誤用があったのは気になりました。
訳出での不満は、
ドファルジュ夫人が「編み物」をしている姿が
何度も出てきますが、棒針編みなのかかぎ針編みなのか不明で
情景をイメージできず、挿絵から判断せざるを得ませんでした。
原文は「knitting」ですから、棒針編みです。
作品を通じて、編み物をする女性は重要なものですので
初回だけでも棒針編みと、訳出して欲しかったです。
他の方も書いている通り、目次が無いのが極めて不親切。
またカバーが色落ちしやすい素材なのも不適切。
重厚かつ読みやすい訳出の試みは高く評価できますが、
以上の残念な点から、低い評価とさせていただきます。
<その他>
原文も「Citizen」なので訳者に全責任があるわけではありませんが
第3部以降に出てくる「市民○○」という
当時のパリで流行していた呼びかけに
違和感を感じました。頭の中でフランス語読みの
「シトワイヤン」に置き換えて読みました。
2020年6月27日に日本でレビュー済み
読んでみると、まったく面白くなかった。ディケンズの作品としては、出来の悪いほうではないか。
評を探してみると、実家の古い文学全集の中に中野好夫の酷評を見つけた。以下、紹介してみよう。
中野好夫は河出書房の世界文学全集5「二都物語・クリスマスキャロル」(1966年)の解説で酷評している。「本全集に、どうしてこの作品(二都物語)が選ばれたか、その間の事情については、わたくしはよく知らないが、代表的傑作か否かということになると、今日否の方に定評があり、訳者自身もまた同感せざるを得ない」「フランス革命という歴史的大事件を舞台に取っていること(略)そのほかには、特にこの作品を有名にした理由というのはちょっと考えられない」と書いている。
構成については、「全体の構成となると、やはり作者の不適格性は否定することができぬ。」「脇役人物の始末までつけている。まことに行き届いたといえば行き届いた後始末であり、5幕悲劇の構成というものは、すべてそうした処置をとったものであるが、この場合などは、まったくお義理で、無理で、だれている。ひどいアンチクライマックスである。」
では、フランス革命を描けているのか。ディケンズの歴史のとらえ方について中野はこう言っている、「また一応フランス革命を舞台にしてはいるが、さりとて社会史的な史眼などをこの作品に求めたら、おそらく大失望であろう。」「社会史眼などというものは彼の任ではない。その意味でバルザックなどとはたいへんなちがいである。」「史眼というようなものは、どんな意味からしてもこの作品にはない。あるものは、ただフランス革命という社会激動期を巧みに利用したお話だけにすぎない。」
さすがにけなしすぎたと思ったのか、締めくくりに「まことに妙な、勝手な解説になってしまったが、たまにはこんなのも許してもらえるのではあるまいか」と自分の訳本を酷評したことへの言い訳をしている。だが、本心を直接的に書いてよければ、頼まれたから訳しはしたが駄作だよ、と言いたかったのではなかろうか。しかし、こんな原稿を見せられた編集者はびっくりしただろうな。良く載せたものだと思う。
ディケンズを読むなら、デイヴィッド・カッパフィールドや大いなる遺産とか、他に面白い作品がいくらでもあるのではないか。
評を探してみると、実家の古い文学全集の中に中野好夫の酷評を見つけた。以下、紹介してみよう。
中野好夫は河出書房の世界文学全集5「二都物語・クリスマスキャロル」(1966年)の解説で酷評している。「本全集に、どうしてこの作品(二都物語)が選ばれたか、その間の事情については、わたくしはよく知らないが、代表的傑作か否かということになると、今日否の方に定評があり、訳者自身もまた同感せざるを得ない」「フランス革命という歴史的大事件を舞台に取っていること(略)そのほかには、特にこの作品を有名にした理由というのはちょっと考えられない」と書いている。
構成については、「全体の構成となると、やはり作者の不適格性は否定することができぬ。」「脇役人物の始末までつけている。まことに行き届いたといえば行き届いた後始末であり、5幕悲劇の構成というものは、すべてそうした処置をとったものであるが、この場合などは、まったくお義理で、無理で、だれている。ひどいアンチクライマックスである。」
では、フランス革命を描けているのか。ディケンズの歴史のとらえ方について中野はこう言っている、「また一応フランス革命を舞台にしてはいるが、さりとて社会史的な史眼などをこの作品に求めたら、おそらく大失望であろう。」「社会史眼などというものは彼の任ではない。その意味でバルザックなどとはたいへんなちがいである。」「史眼というようなものは、どんな意味からしてもこの作品にはない。あるものは、ただフランス革命という社会激動期を巧みに利用したお話だけにすぎない。」
さすがにけなしすぎたと思ったのか、締めくくりに「まことに妙な、勝手な解説になってしまったが、たまにはこんなのも許してもらえるのではあるまいか」と自分の訳本を酷評したことへの言い訳をしている。だが、本心を直接的に書いてよければ、頼まれたから訳しはしたが駄作だよ、と言いたかったのではなかろうか。しかし、こんな原稿を見せられた編集者はびっくりしただろうな。良く載せたものだと思う。
ディケンズを読むなら、デイヴィッド・カッパフィールドや大いなる遺産とか、他に面白い作品がいくらでもあるのではないか。