最初、この小説を読んだ時、芥川賞も・・・・直木賞と類例で、数年に一度は特定の出版社(冬幻舎?)からの出版小説を選出しなければならない、そんな縛りがあるのかな、と失礼な思考をしてしまいました。 それほどに、「何、この酷い小説」という心を抑えられませんでした。 ただ、この小説を繰り返し(2回目)読んでいる途中で、自分の不明、思考ロジックの単純さに思いが―――やっと―――至りました。
この小説に、わたしが素直なタイトルを付けるとすれば、『女、そして母と娘』 ということでしょう。小説の構成要素は、
①母と娘の恩讐(怨讐?)と、そして和解。
②少女から女になることの鬱陶しさ、怖れ、途惑い。
③老いることへの恐怖と焦燥、そして哀しさ。
ということになるのでしょう。この小説は、たとえば、東野圭吾や林真理子といった人畜無害小説に慢性的に感染している人の治癒・治療になる可能性があります(いうまでもないことですが、当世稀代の売れっ子小説家お二人への悪口では、断じてありません。自身、精神が疲れた時、よく読んでおります)。
娘さんが追い詰められていることは《彼女が誰とも口をきかない》という状況で良く分かりますが、お母さんが精神的に追い詰められていることは、咳止めシロップ中毒(リン酸コデイン、エフェドリン)などの表現で、読者に分かるようになっている。
わたしごときが云うまでもなく(云う:著者の好んでつかう漢字)、彼女の小説には新規の視軸があり、表現法にも独自の筆法があります。 ただ、ずらずらと会話と説明が連続しており、パラグラフによっては、会話の部分が【「 」】でくくられなかったり、隣のパラグラフでは、会話の内容に【「 」】を丁寧に使用してくれたり、気まぐれですので、そこには少々閉口しました。ただ、そこには彼女なりルールがあるようで、誰かのセリフであっても、それが状況・場面の説明の要素を含んでいれば【「 」】無しで書いているような傾向はあるかもしれません。仮に彼女が、雰囲気で適当にやっているのなら、同類の性向が感じられ、楽しくはありますが。
世界の、ジェンダー・フリーの趨勢には反するのかもしれませんが、川上さんも男性的気質なのかも?
とにかく、すばらしい小説であることには間違いありません。
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乳と卵 Kindle版
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言語日本語
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出版社文藝春秋
-
発売日2010/9/10
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ファイルサイズ185 KB
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
姉とその娘が大阪からやってきた。三十九歳の姉は豊胸手術を目論んでいる。姪は言葉を発しない。そして三人の不可思議な夏の三日間が過ぎてゆく。第138回芥川賞受賞作。
--このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
川上/未映子
1976年、大阪府生まれ。「夢みる機械」(2004年)「頭の中と世界の結婚」(2005年)などのアルバムをビクターエンタテインメントより発表。2006年、随筆集『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』をヒヨコ舎より刊行。2007年、初めての中篇小説「わたくし率イン歯ー、または世界」が第137回芥川賞候補となる。同年、坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。2008年、「乳と卵」が第138回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
1976年、大阪府生まれ。「夢みる機械」(2004年)「頭の中と世界の結婚」(2005年)などのアルバムをビクターエンタテインメントより発表。2006年、随筆集『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』をヒヨコ舎より刊行。2007年、初めての中篇小説「わたくし率イン歯ー、または世界」が第137回芥川賞候補となる。同年、坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。2008年、「乳と卵」が第138回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、tankobon_hardcover版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00NOCWRNE
- 出版社 : 文藝春秋 (2010/9/10)
- 発売日 : 2010/9/10
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 185 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 138ページ
-
Amazon 売れ筋ランキング:
- 4,764位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 9位芥川賞受賞(126-150回)作家の本
- - 59位日本文学研究
- - 68位評論・文学研究 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
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2019年7月14日に日本でレビュー済み
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Amazonで購入
33人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2018年5月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これは、本当にタイトルどおりの小説です。ファッションとか、日本が誇る「かわいい」、意識高い系、フェミニズム・・・とかを全て取り去って、まじ、女性・・という生き方というか、生活を、なまなましく、べったっとした感じで、大阪のおばさんとその娘に演じさせた、みたいな小説です。乳・・カッコ良い乳首とは。貧弱な胸はいやだ・・。卵。授精卵の話から、初潮、うっときそうな生理・・汚したシーツの洗濯とか。
サブテーマは、大阪の母子家庭の反抗期の娘。でも本当はお母さんを心配しているのがありあり。お母さんが病気らしいことも、それとなく記されています。夏の数日、東京の妹のアパートに来た数日間の母子の姿。
全く飾り気がなくて、大阪弁丸出し、ひらがなが多く驚くような作品でした。飾りを取った、女性の本丸、みたいなところをえぐっているので、すごいですね。庶民的な人達が主人公ですので共感を呼びます。おもしろい読書体験でした。
サブテーマは、大阪の母子家庭の反抗期の娘。でも本当はお母さんを心配しているのがありあり。お母さんが病気らしいことも、それとなく記されています。夏の数日、東京の妹のアパートに来た数日間の母子の姿。
全く飾り気がなくて、大阪弁丸出し、ひらがなが多く驚くような作品でした。飾りを取った、女性の本丸、みたいなところをえぐっているので、すごいですね。庶民的な人達が主人公ですので共感を呼びます。おもしろい読書体験でした。
2019年7月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
男性側から見た商売女は文学の中で数多く描かれていますが、その多くは私の中では割とあっけらかんとした印象です。例えば最近のものでいうと(商売女ではないが)ウェルベックの素粒子で描かれる豊胸手術をした女は非常に前向きで、手術によって大きくなった胸が旦那に喜びを与えることを純粋に喜んでいる。それを川上さんが描くと、卵を頭にぶつけて号泣する娘の背中をさする母親、という描き方になるのだなと思いました。付属の短編も読みましたが、作者は性的な快感を重視しない、というより否定する傾向にあると感じました。作中に、確か「自分が肉体の中に閉じ込められているようだ」というような言葉があったと記憶していますが(しかもハイライトしている人が多かった)、むしろ「肉体が精神の中に閉じ込められている」のが現代の日本なのではないかと思いました。
2019年12月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ありがちな題材なので新味を欠くが、娘がキレる終盤で一応見せたと思う。
人工、自然の違いはあれ、身体の変化を迎えようとする境遇が、母娘共通している。
母は肯定(積極)的、娘は否定的、意識のベクトルが真逆に向いている。
大人になるのが不安な娘は、変化をことさら厭い、自分だけではなく、豊胸を志す母の変化にも
激しい拒絶反応を示す。
娘がキレる場面で卵を割りまくり、母が、別れぎわ、妹から豆乳をおしつけられるのは、
語呂合わせだろうか、大した効果ではない。
母の妹は狂言回し的な立場にあり、主人公と思える緑子の繊細な情感を間接的に照射し、
なかなかのあざとさを見せている。
しかし、読点がやたら続く、特有の文体になじめなかった。
※画像・プロフィールは無視してください
人工、自然の違いはあれ、身体の変化を迎えようとする境遇が、母娘共通している。
母は肯定(積極)的、娘は否定的、意識のベクトルが真逆に向いている。
大人になるのが不安な娘は、変化をことさら厭い、自分だけではなく、豊胸を志す母の変化にも
激しい拒絶反応を示す。
娘がキレる場面で卵を割りまくり、母が、別れぎわ、妹から豆乳をおしつけられるのは、
語呂合わせだろうか、大した効果ではない。
母の妹は狂言回し的な立場にあり、主人公と思える緑子の繊細な情感を間接的に照射し、
なかなかのあざとさを見せている。
しかし、読点がやたら続く、特有の文体になじめなかった。
※画像・プロフィールは無視してください
2019年6月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
序盤しか読んでないが、思ったほど面白くもない。つかみが良くない。こんな薄い中編で、一気に読ませるだけの力量もないのか。ちょっと過大評価してた。