私は1998年版を持っており、20年ほど使用している。本書の魅力は旧約の続編があること。キリスト教も宗派によっては、本書収録の続編である「トビト記」「ユディト記」「マカバイ記1, 2」などは正典に含まれていない。時系列で言うと、しばしば、旧約聖書と新約聖書の間にはギャップがあるが、続編にあたるもののいくつかは、このギャップにあたる時期の話である。また、旧約聖書には地獄・天国といった死後の世界に関する思想に乏しく、逆に新約聖書では、死後に救われるかといった内容が多くそこにギャップがあるが、続編では、死後に関する思想があらわれるため、思想的にも両書の橋渡しとなる。他にも、ユダヤ教の儀式が由来する話があったり、西洋画の主題にたびたびなる「トビト記」「ユディト記」があったり、続編の多くは、思想的には深いものは少ないが、内容は肩の力を抜いて読めるものが多く読み物としても楽しめる。自分の教会では、続編は使わないという人にも、聖書の内容の理解を深めるため、一般教養のため、あるいは単純に読み物としてすすめたい。 ひとつ難点は、本書にすべての重要な文書(外典)が含まれてはいないことで、「マカバイ記3, 4」などは英語版のものには収録されているので、そちらを求めたい。たとえば、「The HarperCollins Study Bible: New Revised Standard Version (with the Apocryphal/Deuterocanonical Books)」には、主要な外典が含まれており、聖書の各書の解説も充実しており、日本の聖書の座右におきたいもの。