標題の文章は、環境ホルモンの影響を報告する論考からの引用です。やはり環境ホルモンの影響はある(あった)のですね。
その昔、日本では、政府自民公明党、大企業、御用マスコミ、御用学者等の「活躍」によって、環境ホルモンの研究が押さえ込ま
れてしまったようですが、欧米では、その間も研究が進展していて、「不都合な真実」が暴かれて来ているようです。後で、この
環境ホルモンの論稿は、ネオニコチノイド関連の論稿とともに引用・コメントしたいと思います。
今月号も、興味深い論稿がいっぱいですが、それらを全ては紹介できません。紹介した論稿も含めて、自分で読んでいただくのが、
一番と考えます。
今月号は、特集は「反貧困の政策論」ということです。まずは、その中からいくつかの論稿、座談会を引用・コメントします。
●「座談会 本来の全世代型社会保障とは何か 大沢真理×宮本太郎×武川正吾」(P.68 ~ P.81)
この中で、大沢真理の発言のみをいくつか引用します。書評者にとっては、宮本太郎や武川正吾の発言よりも説得的でしたので。
大沢真理は、『世界 別冊 2015年安保から2016年選挙へ--政治を市民の手に』(2016年3月刊)の座談会にも出席していて、そこ
での発言も啓発的でしたので、Amazon書評では、大沢真理の発言しか引用しませんでした、今回も同様ということです。
「大沢 日本の高齢者は恵まれているかのような言説が流れていますけれども、貧困率は20%を超えていて、OECD諸国の中
でも貧困老人の比率が高い国であり、なおかつそれがあまり改善していません。高齢男性では若干の改善が見られ
ますが、高齢女性は男性との格差が広がっています。だから、貧困老人の問題はそのまま女性問題でもあるわけです。
社会保障給付費の国家予算比率が大きくなって見えるのは高齢人口が増えているからで、一人あたりでは全く増えていな
い。むしろ、もっと増えて当然なのを無理やり抑えてきたのが現実でしょう。」(P.70)
「大沢 日本の医療費を対GDP比でみると、OECD諸国で低いほうから五本の指に入る。日本の医療制度はとてもコストパフォ
ーマンスがいい。対極にあるのは米国です。たくさんお金を使っているのに国民の健康度は低い。日本はそもそも
公的社会支出全体が小さいので、その中で医療費の比率が大きいからといって、削減の対象にすべきなのでしょうか。
実は高齢化だけが医療費上昇の主な要因ではありません。むしろ、高額医療機器に使っているお金が突出しています。
日本は病院のベッド数も多いけれど、人口あたりの医師と看護師の数はかなり貧弱。つまり、人より高額医療機器にお金
を使っているわけです。ここに節減の余地はあるでしょう。」(P.70)
日本はあらゆる面で、アメリカのケツを追いかけていますから、医療もまもなく、「コストパフォーマンスの悪い国」になってしま
うでしょう。健康保険の効かない自由診療も始まっていますし、「健康度の低い国民」になってしまうのでしょうか。教育も、
アメリカはひどく荒廃しているようですが、日本も、自民公明党・文部科学省(&教育委員会)の思惑通り、アメリカに追随して、
どんどん荒廃していくのでしょう、特に公教育は。引用を続けます。
「大沢 就労促進によって現役世代の生活にゆとりができ、子どもの貧困なども解決すると本当に言えるのでしょうか。
たとえば、フルタイム就労者の超過勤務手当やボーナスも含む中位賃金(全標本の中央値となる賃金)との対比で
最低賃金の国際比較をしてみると、日本とアメリカは際立って最低賃金が低い。韓国では非常に急速に改善され、ドイツ
では2015年に新たに最低賃金制度を導入しています。日本は、フルタイム労働者の中位賃金の40%しかない。つまりフル
タイムで働いても貧困に陥るレベルです。この状況でどれほど就労促進をしても就労貧困者(ワーキングプア)を増やす
だけでしょう。この最低賃金の低さは結局、子どもの貧困にもあらわれます。」(P.72)
「大沢 そもそも日本では働くことが奨励されているのでしょうか。世帯主が労働年齢で子どもがいる世帯の貧困率を世帯
の就労形態に分けて、国際比較をしているデータがあります。まず就労しているひとり親の貧困率は、日本はOECD
諸国+インドと中国のなかで最悪です。そして、働いていないひとり親のほうが、働いているひとり親よりも貧困率が
低い、ということに驚きます。遺産や遺族年金など、ひとり親が働く必要のない事情はほかの国にもありますから、日本
だけこのような結果になっている原因をきちんと精査しなければなりません。
それから、専業主婦世帯と共働き世帯の貧困率の差が、日本はとても小さい。二番手の働き手がいても、ほとんど貧困
リスクが下がりません。それだけ女性の稼ぐ力が弱い国はたとえば、インドや中国。日本は本当にOECDのメンバーなのか
疑いたくなります。結局、働くことがさほどサポートも奨励もされていない。特に女性に対して。就労支援にもジェン
ダーによる大変な格差、断絶があるので、それもきちんと見なければいけません。」(P.72)
安倍晋三一味の言葉はほとんど、嘘とおためごかし、ですから、気を付けないといけません。躍る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら
踊らにゃソンソン、と踊ってばかりいると、「一億総活躍社会」に、首を絞められてしまいます、2020東京オリ・パラとて同じこと
です。躍っているうちに、気づいてみたら、死んでいた、ということになるかも知れません。クワバラ、クワバラ、です。
「大沢 保育については、量も質もまったく足りていません。三歳未満の子どもが保育サービスや就学前教育を受けている
比率の国際比較を見てみると、日本は2000年代半ば以降停滞して、ドイツや韓国に追い抜かれています。質について
も、上智大学の三浦まりさんが言っていることですが、死なせなければいいという程度の質しか確保されていないという
のが実情ではないでしょうか。」(P.73)
「大沢 17年6月に厚労省から貧困率が下がったとの報道発表が出されましたが、本当にそうなのか分析しました、今回の
報道発表では貧困基準の実質値(消費者物価指数も加味した等価可処分所得の中央値の半分)が省かれていたので
それを調べて試算したのですが、貧困基準は名目では変わらず122万円、しかし実質では前回から数万円も低下していた。
それを隠すようにして、貧困率は下がった、事態は改善しつつあると厚生労働白書も楽観的な書きぶりなのには呆れます。
貧困基準の実質値が下がったとは、名目の貧困基準で営める生活の質が低下しているということです。これまで日本の
貧困基準は、生活保護基準と8割がた一致していると見られ、他国ほど乖離していなかった。だから、貧困基準より低い
所得の人は健康で文化的な最低限の生活が営めていない、という指標にもなった。ここにきて、公式には貧困層ではない
が、生活保護基準に届いていない、という層がジワジワ増える事態になっています。追い打ちをかけるように生活保護
基準を下げることが、来年度予算編成の中で決まりました。前回2013年に6.5%下げたのに続き、18年の10月から3年
かけて1.8%下げる、母子加算もなんと20%近いカットです。これで一億総活躍になるはずがありません。」(P.77)
政府自民公明党、「高級」官僚等のいい加減さもここに極まれり、と言ったところでしょうか。しかし、それを平気で「見過ごす」
「寛容」な国民が大勢いますから、馬鹿なトップが大勢いても、見かけ上は何とか行っているのでしょうか、社会が全面的に壊れた
わけではないでしょうから(中曽根康弘から安倍晋三までの「アホ」どもがせっせと社会を壊してきましたが)。
「大沢 私は、綱渡りの比喩はなかなかよくできているとは思います。普通の道を歩いているはずが、実は綱渡りだった。
それが普通の道に見えてくるのは、色々な制度や人によって支えられているからです。その支えがなくなって裸に
なると、綱渡りだったことがわかるという。
イギリスが包括的差別禁止法を立法したのは比較的最近の2010年です。日本にはそれに匹敵する包括的な差別禁止法が
ありません。差別を野放しにしておいて「包摂してあげるよ」という態度はまったくの似非(えせ)です。障害者に
関してだけは合理的配慮義務も含んだ一歩進んだ法律になっていますが、これを橋頭保に包括的な差別禁止を目ざすこと
は大事です。
子どもへの保育サービスや就学前教育はそれ自体が社会的包摂です。子どもにとって母親とだけ密室のように一緒にいる
というワンオペ育児、密着母子の状態は、虐待と言えば言いすぎですが、物心がつくころの年齢の子どもは、家から出て、
同世代の子どもたちや親とは違う大人とふれあうことで、社会関係資本の基礎が培われます。そうして幼い頃から社会性
を身につけた子どもは、大人になっても、年配になっても、何らかの社会的なネットワークを自分から紡ぎだせるで
しょう。」(P.78 ~ P.79)
「大沢 自民党の税調や政府税調でも、所得による累進度を若干増すかのような提案が出てはいますが、焼け石に水です。
日本の税・社会保障制度はOECD諸国の中でも最も累進度が低く、場合によっては政府が所得再配分することに
よって却って貧困が深まってしまう層もいる。これは他の国には見られないことです。この逆機能を何とかしてくれと
私はずっと言っています。これは政府の意思で改善できることです。税と社会保障が貧困をつくり出していることの
責任は明かに政府にあり、それを解消して初めて、「働いたら報われる」と感じるための出発点に立てるのではないか
と思います。どのように累進制を回復するのか、については、最高税率を若干引き上げるといった手法では追いつかない
ことがわかっているわけですから。まず現実を直視して、総合的に知恵を絞れる部署を政府の中に設けることが必要です。
いまは、税は財務省、社会保障は厚労省と縦割りで、お互い「あっちが悪い」と言い合っているだけで、取り組まな
ければいけないという意識にすらなっていません。」(P.79 ~ P.80)
大沢真理の上記の最後の発言を見る限り、この国は絶望的ですね、再確認しました。
●「”空騒ぎ”ではなかった環境ホルモン--負のスパイラルに陥る男性の生殖能力 水野玲子」(P.167 ~ P.173)
水野玲子のこの論考を読んでいると、この論考にそんなことが書かれているわけではないですが、危機的な状況は、男性の生殖
能力だけではなく、人間としての、動物としての(植物としての)、生命としての、全ての機能・能力等に関わってくるのでは
ないかという、不安に襲われます(男性・女性・LGBT、子ども、年寄り、それから他の動植物に、関係なく)。それくらい環境
汚染は進んでいるのでないでしょうか、様々な化学物質、金属、放射性物質等々によって(最近では当然のごとく「香害」も
出て来ました)。もちろん、別に地球温暖化やAIやロボット兵器等もあります。
「しかし、1998年に雑誌『新潮』に「環境ホルモン空騒ぎ」と題する記事が掲載されたのを契機に、産業界よりの学者や
ジャーナリストを中心に環境ホルモン問題を鎮静化しようとする動きが強まった。その後20年、マスコミでこの問題が
取り上げられることはほとんどなかった。研究費がつかないため追加研究も進まず、結果、日本ではこの問題はすっかり
忘れさられてしまった。」(P.167 ~ P.168)
やっぱりそうなんですね。当時の事情をよく知りませんでしたので、何で急に「環境ホルモン」が世間から消えていったのかが、
不思議でした。今の、文部科学省予算を削って、防衛省予算で大学等の研究者の「頬をひっぱたく」、と全く同じ構図です。
他にも引用したい箇所は多々ありますが、切りがありませんので、最後の節のみの引用とします。
「○不都合な真実
あと100年もしないうちに、日本をはじめとする先進諸国では子どもがほとんど生まれなくなる--といえば、ほとんど
の人が、「それは誇大妄想だ」と思うだろう。しかし、本稿で紹介したように、最近数十年間に世界で蓄積された科学
的知見から学ぶ限り、この半世紀近くで精子数が半減したことはもはや疑いようもない事実である。
しかも、過去40年間と同じペースで、すなわち毎年1.4%ずつというスピードで精子数が減少していくとすれば、半世紀
後には精子はほとんどなくなるという話も、決して絵空事とは言えない。動物実験の結果を見ても、そのような事態が
起こる可能性は十分に推定できるからだ。
環境省は日本人の血液や尿の中の化学物質を測定して2011年度より公表している。2016年の結果では、調査した全員
からプラスチックの可塑剤のフタル酸エステル類、有機フッ素化合物などの環境ホルモン物質を検出している。それら
は女性ホルモン作用を持つ物質で、精子数減少に影響を与える可能性が指摘されている。
また日本では、EUでは禁止された「抗男性ホルモン作用」を持つ農薬を大量に使用し続けているため、男性生殖機能の
低下がEU諸国に比べて進んだとしても、決して不思議ではない。
その一例は、有機リン系農薬のフェニトロチオン(商品名は「スミチオン」など)である。EUではこの農薬は2007年に
失効し、現在では抗男性ホルモン作用のある危険な農薬と見なされている。フェニトロチオンは1961年農薬登録され、
その後半世紀以上、大量に日本で使用されている。単位面積あたりの日本の農薬使用量が世界でトップ3に入ることは、
経済協力開発機構(OECD)や国際連合食糧農業機関(FAO)のデータを見れば明らかである。知らないうちに、世界でも
類がないほど大量の農薬をあびてきたのが私たち日本人なのだ。
このような状況に鑑みても、日本人男性の男性機能低下の問題はけっして甘く見ることができない重大問題であることが
わかる。この先、国レベルでの大胆な政策、すなわち環境ホルモン農薬の全面的な規制などの対策を講じない限り、現在
進んでいる精子の減少傾向はそのまま続くことになるだろう。
2015年、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は、50年後の2065年には日本の人口は8,808万人まで減少すると
発表した。しかし、その推計の前提となる50年後の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子どもの数)は、五年前の
前回推定の1.35より上昇した1.44として計算したものだ。この推定は、今後の出生率が下がるどころか上向くという予想
に基づく、極めて楽観的な数字である。」(P.172)
何といういい加減な官僚連中であることか、あきれて二の句が継げません。しかし、あの連中のやることはみなこんなレベルの杜撰
な代物なのです、予算だけは大量に使って(自分の懐は痛みません、全部、国民のカネですから)。引用を続けます。
「日本では今後、出生率は低下しないのだろうか。精子数減少や男性ホルモンレベルの低下も止まるのだろうか。その楽観
的な見通しと、先進諸国の中でどの国よりも早く子どもが生まれないXデーがくる、という悲観的な見通しとどちらの
可能性が高いのだろうか。
現在、世界で起きている精子数の減少、男性生殖器障害の増加、それらを見えないところで進行させている内分泌かく乱
化学物質(環境ホルモン)問題、それを直視しなければ、日本は、いつか先進諸国の中で最も早く”不都合な真実”に
押しつぶされる国になるに違いない。」(P.173)
●「世界に広がるネオニコチノイドの蜂蜜汚染は警告する A・エィビィ、B・ムルハウゼル、G・グラウゼル、
E・A・D・ミッチェル、訳=平久美子、監訳=星川淳」(P.174 ~ P.177)
論稿の本文ではなく、平久美子の「解題」から引用します。
○「【解題】人体への影響も懸念される「神経毒」 平久美子」(P.177)
「・・・・・
日本でもネオニコチノイドの使用開始後、ある日突然巣箱からミツバチがいなくなるという蜂群崩壊が全国のあちこちで
観察されるようになった。ほぼ同時期の2004年頃から、群馬県で松林に松枯れ対策としてネオニコチノイドの散布を始めた
ところ周辺住民に中毒事例(胸の苦しさと心電図異常)が多発し、その後も食品に残留したネオニコチノイドが原因と
考えられる小児を含む中毒患者(手のふるえ、記憶障害、頭痛、腹痛、筋肉痛、胸痛などに心電図異常を伴う)が急増
した。
エィビィらが示すように世界中のありとあらゆるところでネオニコチノイドは検出されるが、実は人体も例外ではなく、
日本人の尿を分析するとほぼ全員からなんらかのネオニコチノイドが検出される。ネオニコチノイドが神経毒としてヒト、
特に小児の神経発達に悪影響を与える可能性を示す論文が続々と発表されている。「農薬なくして農業生産は成り立たず、
たとえ生態系や人体への影響に多少の問題があろうとも、農家の高齢化に伴う必要悪だから仕方がない。日本の農業登録
制度は世界一厳しく、国民の安全は保たれている」という農薬メーカー寄りの楽観論には根拠がないことを、独立系の
科学者たちは告げている。」(P.177)
●「連載 神を捨て、神になった男 確定死刑囚・袴田巌 第12回 「リングの中は、嘘がない世界」」(P.190 ~ P.193)
「冤罪と闘ったボクサーの同志ミスター・ハリケーン・カーターへ
カーター氏よ! ともかく晴れてよかったね。おねでとう!
さてカーター氏よ! 長い獄中生活の中であなたはボクシングへの情熱を忘れたことはなかったでしょうなぁ! あなた
も私もとても似たボクシングに対する情熱を堅持していたことでしょう。まさにその闘魂があなたの無実を晴らす立派な
原動力であったことは疑いありません。
私も正義の人の和に力を得て、アメリカ国民に劣らない日本国民の愛と英断を信じて、あなたに続くために最善を尽くし
ます。どうかあなたに等しいこの私の境遇の誼(よしみ)で、今後の私どもの冤罪闘争をご支援下さいますよう心から
お願い申し上げます。(1989年3月21日、袴田巌からルービン・ハリケーン・カーターへの書簡より)」(P.190)
●「連載 それぞれの出ウチナー記-海を越えるアイデンティティー 第6回 「勝ち組」が故郷に見た風景 三山喬」
(P.271 ~ P.282)
ブラジル移民の人々の「勝ち組」「負け組」に関する興味深い文章がありますので、引用します。ただし、引用した文章だけでは
全体把握のためには、短すぎますので、意味不明な方は自分で全文読んでください。引用文は、例によって、本文の全体としての
趣旨とは若干ずれています。
「○勝ち負け抗争の背景
本連載でも触れてきたように、戦前の日本人移民は大部分、一時的な出稼ぎを前提とする人たちであった。永住を覚悟
して渡航した人はごく少数。一方で現実には、5年や10年の移民労働で錦衣故郷を実現できた人は、さほどいなかった。
戦争の足音が近づくに連れ、邦人社会をめぐるブラジルの環境は急変した。国家主義的なヴァルガス独裁政権は、現地
に溶け込まない日本人移民を危険視し、1938年には、日本語学校での子弟教育を全面的に禁止した。
片やコミュニティーの内部では、母国の影響から国粋的な「日本精神」を称揚する動きが強まった。日米開戦の直前
には、大政翼賛同志会という大規模な愛国団体が結成され、のちにこれを母体として勝ち組の巨大組織「臣道連盟」が
誕生する。
開戦後、ヴァルガス政権は在留邦人への圧迫をより一層強化した。コミュニティーの指導者に対象を絞り、スパイ容疑
で逮捕したり、その資産を凍結したり、時には逮捕・拘留者に水責めの拷問まで行った。
この”一部の人々への弾圧”が、コミュニティーに亀裂を生む。標的とされたリーダー層に恐怖が広がる一方で、純朴
な庶民階級の移民たちは、反日的な現地の環境に憤慨し、母国の必勝を信じ結束する動きを強めたのだ。
そして45年8月15日、玉音放送を機に、両者の分裂は決定的となる。衝撃的な敗戦の報せは、瞬く間に”米国のデマ宣伝”
という解釈に掻き消された。
≪(敗戦の事実にもかかわらず)「日本は勝つはず」と移民大衆の大半が思っていることは、リーダー層には恐怖だった。
戦中の様なブラジル政府からの迫害を恐れて、警察などに積極的に協力して、一緒になって勝ち組を取り締まる側に
回った≫
≪勝ち負け抗争の本当の原因は、「戦前戦中からの日本人差別」にあった。終戦後に、日本人差別への反抗心を「日本
は勝ったはず」と思うことで押し通そうとした勝ち組に対して、官憲からの弾圧を恐れたのが負け組という基本構図が
あった≫
深沢はそう分析する。
さまざまな戦勝デマが拡散し、一方でこれを否定する情報も流される。敗戦を説き聞かせる”売国的指導者”への脅迫
や攻撃。片やブラジル官憲の対応は、違法行為の取り締まりを逸脱した思想弾圧にエスカレートした。その陰に存在した
負け組の内通 ・・・・ 。分裂は、憎悪と報復の連鎖に発展した。
・・・・・ 」(P.272 ~ P.273)
●「対談 「日本人」を縛る戸籍という装置 井戸まさえ×遠藤正敬」(P.194 ~ P.205)
啓発的な対談です。日本の「お上」システムのいい加減さが、物事を複雑怪奇にしているようです。この二人の著書も読んでみよう
と思っています。
●「対談 いま「大学で勉強する」ということ--50年後の日本社会と高等教育 松岡敬×佐藤優」(P.146 ~ P.155)
対談の中で、佐藤優が一箇所だけ良いことを言っていますので、引用します。創価学会・公明党の腰巾着・佐藤優は、書評者は、
ほとんど全否定です。
「佐藤 いまスーパーグローバル化が推奨されていて、英語で講義したりしていますが、話を聞くと、非常に英語が
できる人でも日本語で講義するのと比べて、約3割しか伝えられていないという。外国人の外国語ですからそれも
道理なのですが、さらに学生の理解は約20%だ、と。こんな異常なことがいまあちこちの大学で起きている。」(P.150)
日本語でも、理解が難しいような大学の講義を、英語でやるなんて、誰が考えても、理不尽の骨頂です。また、馬鹿な文部科学省
の馬鹿な役人の「忖度」でしょう。狂っています。
●「職業としての保育園--情報公開資料から見る保育士の人件費(上) 小林美希」(P.130 ~ P.142)
「企業が一番活躍しやすい国」と「規制緩和」で、保育士には、金が回らないようなシステムになっているようです。当然、園児
たちにも、金はかけないで済むようになっています。保育園は、単なる金もうけ事業になるように、「お上」から仕向けられている
のです。
●「多重債務の悪夢、再び--憂慮すべき銀行のサラ金化 宇都宮健児」(P.82 ~ P.87)
題名そのままです。銀行が「サラ金業者」になって、一般人の「自己破産」等を推進しているのです。日本育英会の奨学金制度も、
住宅金融公庫の住宅融資も、銀行が乗っ取って「サラ金化」したのです。
他にも紹介した論稿はたくさんありますが、引用できませんので、題名と著者名を記すだけにします(全部は下記できません)。
●「世界の潮」の4本の論稿すべて(P.20 ~ P.36)
●「生への列車・キンダートランスポート2--エヴァとデジーに会う英国への旅 中村真人」(P.216 ~ P.229)
●「対談 ”理解されない生活保護”が生命をつなぐ 柏木ハルコ×安井飛鳥」(P.88 ~ P.97)
●「朝鮮半島の危機は外交的手段でのみ解決できる ティム・ショロック氏に聞く 聞き手・高嶺朝太」(P.52 ~ P.58)
韓国と北朝鮮間で対話が進んでいます。結構なことです。安倍晋三やトランプの妨害にもかかわらず、です。安倍晋三は暢気にも
また海外旅行に出かけています(あの小泉純一郎よりも多くなったそうです、全く国民の税金の浪費です)。
●「シリーズ連載 吉田調書を超えて 第5回 公開されない情報 海渡双葉」(P.180 ~ P.189)
●「新連載 トランプのアメリカに住む 第2回 星条旗とスポーツのあいだ 吉見俊哉」(P.230 ~P.242)
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。

Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、Get your Kindle here Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。
Kindle をお持ちでない場合、Get your Kindle here Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。