本書の標題に「世界を不幸にした」と過去形が使われていますが、未来予測では無く、過去に基づいた結論として著者はグローバリズムの弊害を批判しています。本書が2000年(平成十二年)に刊行された段階では多くの日本人にはその真意が十分理解出来ず、警告を甘く見ていたのでは無いでしょうか。当時の「行革」の正体がグローバリズムにとって障害となる国家基盤の破壊であったにも拘らず、マスメディアを使った宣傳により公務員の体質や役所の非効率性の問題と掏り替えられました。確かに其の様な問題解決は必要でしたが、あの「行革」で実際にやった事が逆の結果を招きました。不祥事が繰り返された所以です。我々はグローバリズム勢力にまんまと騙されました。
その後は真に本書が指摘する通りの展開になりましたが、其の様な先見の明があった背景は著者がサンダース氏の政策立案者である事と關聯が深そうです。著者がグローバリズム=ネオコンの思惑と手の内を良く知って居たのは、ネオコンも著者も元々同じルーツから出て来た、著者にとって長年の宿敵だったからでしょう。今やグローバリズムの齎す禍について指摘する著作は少なくありませんし、本書の指摘は既知ではありますが、2000年以降の「更に失われた二十年」を振り返って考える上では大変興味深い著作です。
反グローバリズムが何処から出て来たものなのか我々には感覚的に分かりにくい観がありましたが、内ゲバは当事者以外には分かり難いものです。結果論ですが、著者とは立場を異にする人々にとって切実な問題となる迄に二十年近くかかり、其の間に社會の歪みが著しくなったと謂えます。本書が出版された頃に「格差社会がやって来る」という指摘は確かに有りましたが、今から考えれば單に大金持ちが出現するという様な話では無く、人間性の破壊を齎す事はあまり理解されていなかった様に思います。本書は主にIMFやWTOの施策に対する批判を書いて居ますが、其の背後にある「思想」にまでは深く踏み込んではいません。此れも著者と其の批判対象が同根だからかも知れません。本書のグローバリズム批判には一理ありますが、現在の世界的潮流とは別の立場である事には留意しておいた方が良いでしょう。
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