対談本は内容が薄いしすぐ辞めてしまうのであんまり好きではありませんでした。しかし、以前読んだ清水克行氏の『戦国大名と分国法』(岩波新書)がお話しているので、「まあ少しくらい...」という気持ちで買いました。お相手の高野秀行さんという方は僕はこの本を読むまでは知らなかったのですが、読み進めていくとものすごい人だと分かります。
びっくりしたのが、お二方の知識量です。高野氏は、海外の辺境へ実態を調査しに行き、本を書く人なのですが、ものすごい読書家だということが伝わってきます。また、清水氏も様々な経験をしていて、もちろん中世に関する知識は専門であり、それを面白く述べてくれます。お互いの質問も高度なもので、読んでいくたびに新しい知識に出会い興奮します。
それだけでなく、固有名詞には脚注が必ず記されているので読者を絶対に置いていきません。
この本を読んで僕も東南アジアやアフリカの地域に旅行したいと思いました。さらにこのお二方と同じ景色を見るためにもっともっと本を読もうと思いました。最高の対談です。
この商品をお持ちですか?
マーケットプレイスに出品する

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません 。詳細はこちら
Kindle Cloud Readerを使い、ブラウザですぐに読むことができます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
世界の辺境とハードボイルド室町時代 単行本 – 2015/8/26
購入を強化する
現代ソマリランドと室町日本は驚くほど似ていた!
世界観がばんばん覆される快感が味わえる、人気ノンフィクション作家と歴史家による"超時空"対談。
世界の辺境を知れば日本史の謎が、日本史を知れば世界の辺境の謎が解けてくる。
中島京子さん推薦
「脳天にハンマー直撃。目から鱗ボロボロ。」
【小見出しより】
外国人がイスラム過激派に狙われる本当の理由 / ソマリアの内戦と応仁の乱 / 未来に向かってバックせよ! / 信長とイスラム主義 / 伊達政宗のイタい恋 / 江戸の茶屋の娘も、ミャンマーのスイカ売りの少女も本が好き / 独裁者は平和がお好き / 妖怪はウォッチできない / アフリカで日本の中古車が売れる知られざる理由 / 今生きている社会がすべてではない
【著者略歴】
高野 秀行(たかの ひでゆき)
ノンフィクション作家。1966年東京生まれ。『ワセダ三畳青春記』で第一回酒飲み書店員大賞、『謎の独立国家ソマリランド』で講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。著書は他に『移民の宴』『イスラム飲酒紀行』『ミャンマーの柳生一族』『未来国家ブータン』『恋するソマリア』など多数。
清水克行
明治大学商学部教授。専門は日本中世史。1971年東京生まれ。大学の授業は毎年大講義室が400人超の受講生で満杯になる人気。NHK「タイムスクープハンター」など歴史番組の時代考証も担当。著書に『喧嘩両成敗の誕生』『大飢饉、室町社会を襲う! 』『日本神判史』『足利尊氏と関東』『耳鼻削ぎの日本史』などがある。
世界観がばんばん覆される快感が味わえる、人気ノンフィクション作家と歴史家による"超時空"対談。
世界の辺境を知れば日本史の謎が、日本史を知れば世界の辺境の謎が解けてくる。
中島京子さん推薦
「脳天にハンマー直撃。目から鱗ボロボロ。」
【小見出しより】
外国人がイスラム過激派に狙われる本当の理由 / ソマリアの内戦と応仁の乱 / 未来に向かってバックせよ! / 信長とイスラム主義 / 伊達政宗のイタい恋 / 江戸の茶屋の娘も、ミャンマーのスイカ売りの少女も本が好き / 独裁者は平和がお好き / 妖怪はウォッチできない / アフリカで日本の中古車が売れる知られざる理由 / 今生きている社会がすべてではない
【著者略歴】
高野 秀行(たかの ひでゆき)
ノンフィクション作家。1966年東京生まれ。『ワセダ三畳青春記』で第一回酒飲み書店員大賞、『謎の独立国家ソマリランド』で講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。著書は他に『移民の宴』『イスラム飲酒紀行』『ミャンマーの柳生一族』『未来国家ブータン』『恋するソマリア』など多数。
清水克行
明治大学商学部教授。専門は日本中世史。1971年東京生まれ。大学の授業は毎年大講義室が400人超の受講生で満杯になる人気。NHK「タイムスクープハンター」など歴史番組の時代考証も担当。著書に『喧嘩両成敗の誕生』『大飢饉、室町社会を襲う! 』『日本神判史』『足利尊氏と関東』『耳鼻削ぎの日本史』などがある。
- 本の長さ320ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社インターナショナル
- 発売日2015/8/26
- ISBN-104797673036
- ISBN-13978-4797673036
この商品を見た後に買っているのは?
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
人々の心の動きから法体系まで、こんなにも似ている社会が時空を超えて存在したとは!その驚きからノンフィクション作家と歴史家が世界の辺境と日本史を徹底比較。辺境を知れば日本史の謎が、日本史を知れば、辺境の謎が解けてきた…。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
高野/秀行
ノンフィクション作家。1966年東京都生まれ。早稲田大学探検部当時執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。タイ国立チェンマイ大学日本語科で講師を務めたのち、ノンフィクション作家に。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞受賞。『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞
清水/克行
明治大学商学部教授。専門は日本中世史。1971年東京都生まれ。大学の授業は毎年大講義室が400人超の受講生が殺到する人気。NHK「タイムスクープハンター」など歴史番組の時代考証も担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
ノンフィクション作家。1966年東京都生まれ。早稲田大学探検部当時執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。タイ国立チェンマイ大学日本語科で講師を務めたのち、ノンフィクション作家に。『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞受賞。『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で講談社ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞
清水/克行
明治大学商学部教授。専門は日本中世史。1971年東京都生まれ。大学の授業は毎年大講義室が400人超の受講生が殺到する人気。NHK「タイムスクープハンター」など歴史番組の時代考証も担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1分以内にKindleで 世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社インターナショナル) をお読みいただけます。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
Kindle をお持ちでない場合、こちらから購入いただけます。 Kindle 無料アプリのダウンロードはこちら。
登録情報
- 出版社 : 集英社インターナショナル (2015/8/26)
- 発売日 : 2015/8/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 320ページ
- ISBN-10 : 4797673036
- ISBN-13 : 978-4797673036
- Amazon 売れ筋ランキング: - 273,621位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 253位論文集・講演集・対談集
- - 28,608位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。
早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションや旅行記のほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。
1992-93年にはタイ国立チェンマイ大学日本語科で、2008-09年には上智大学外国語学部で、それぞれ講師を務める。
主な著書に『アヘン王国潜入記』『巨流アマゾンを遡れ』『ミャンマーの柳生一族』『異国トーキョー漂流記』『アジア新聞屋台村』『腰痛探検家』(以上、集英社文庫)、『西南シルクロードは密林に消える』『怪獣記』(講談社文庫)、『イスラム飲酒紀行』(扶桑社)、『未来国家ブータン』(集英社)など。
『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)で第一回酒飲み書店員大賞を受賞。
『謎の独立国家ソマリランド』(本の雑誌社)で第35回講談社ノンフィクション賞を受賞。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
5つ星のうち4.6
星5つ中の4.6
168 件のグローバル評価
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
ベスト500レビュアー
Amazonで購入
「辺境作家」である高野が「『ソマリアの内戦は応仁の乱に似てるって思うんですけど、どうですか』などと、誰にも打てない魔球レベルの質問を投げかけ」ると、日本中世史の研究者である清水が「『それはですね……』と真正面からジャストミートで打ち返して(p.6)」くるというところから始まる対談。
「『世界の辺境』と『昔の日本』はともに現代の我々にとって異文化世界であり、二つを比較照合することで、両者を立体的に浮かび上がらせることが可能になる(p.7)」。
文庫で400ページを超えるが一気読み。
私は高野の本を十数冊読んでいるので、新たに「へえ」と思う箇所は圧倒的に清水の話に多い。例えば「賠償の発想がなかったということは、実は日本法制史上の大問題(p.22)」とか、「江戸時代が世界史的に見ても稀なくらい平和な時代だったとしたら、それは最終的に綱吉の功績かもしれません(p.67)」というような徳川綱吉の評価とか、「江戸時代になってから、税は一応建前としてはコメに一元化されたので、コメの商品価値が高くなり(p.139)」、それもあって日本全体がモノカルチャー化(この表現は高野)し、それが飢饉の原因となったとか。
高野の本にも触れていなかったら本書のインパクトはもっと大きかっただろうな。
さて、歌舞伎で役者が見得を切ると「○○屋」「○代目」等の掛け声が大向こうからかかる。ところが、ここ30年ぐらいでも、次第にそこで拍手が起こることが増えてきたように感じられて「何だか妙だな」と思っていたのだが「拍手って……日本では近代の所産(p.427)」という箇所を読んでその違和感は正しかったことが分かった。
「軽い」対話が多いなかで、清水が、研究者を志すきっかけになった藤木久志とのやり取り(pp.294-296)は感動的。
「『世界の辺境』と『昔の日本』はともに現代の我々にとって異文化世界であり、二つを比較照合することで、両者を立体的に浮かび上がらせることが可能になる(p.7)」。
文庫で400ページを超えるが一気読み。
私は高野の本を十数冊読んでいるので、新たに「へえ」と思う箇所は圧倒的に清水の話に多い。例えば「賠償の発想がなかったということは、実は日本法制史上の大問題(p.22)」とか、「江戸時代が世界史的に見ても稀なくらい平和な時代だったとしたら、それは最終的に綱吉の功績かもしれません(p.67)」というような徳川綱吉の評価とか、「江戸時代になってから、税は一応建前としてはコメに一元化されたので、コメの商品価値が高くなり(p.139)」、それもあって日本全体がモノカルチャー化(この表現は高野)し、それが飢饉の原因となったとか。
高野の本にも触れていなかったら本書のインパクトはもっと大きかっただろうな。
さて、歌舞伎で役者が見得を切ると「○○屋」「○代目」等の掛け声が大向こうからかかる。ところが、ここ30年ぐらいでも、次第にそこで拍手が起こることが増えてきたように感じられて「何だか妙だな」と思っていたのだが「拍手って……日本では近代の所産(p.427)」という箇所を読んでその違和感は正しかったことが分かった。
「軽い」対話が多いなかで、清水が、研究者を志すきっかけになった藤木久志とのやり取り(pp.294-296)は感動的。
2019年1月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『日本の中世史』を専門とする清水さん。
『辺境の現在』に精通する高野さん。
お二人とも知見が非常に広いがゆえ、それぞれから得られる情報だけでも「なるほど、そうなんだ!」と楽しめますが、この一見すると水と油以上の異質なもの同士が混ぜ合わされたとき、なんとも刺激的な知的好奇心をそそる『第三の味』が出てきてビックリしました。
対談の形で収められているので、口語の非常に読みやすい文章です。これほど面白い対談本はなかなかないと思うのでおススメです!
『辺境の現在』に精通する高野さん。
お二人とも知見が非常に広いがゆえ、それぞれから得られる情報だけでも「なるほど、そうなんだ!」と楽しめますが、この一見すると水と油以上の異質なもの同士が混ぜ合わされたとき、なんとも刺激的な知的好奇心をそそる『第三の味』が出てきてビックリしました。
対談の形で収められているので、口語の非常に読みやすい文章です。これほど面白い対談本はなかなかないと思うのでおススメです!
ベスト1000レビュアー
Amazonで購入
『謎の独立国家ソマリランド』と『喧嘩両成敗の誕生』を読んだある人が、「室町時代の日本社会とソマリランドは似ている」という内容のツイートをした。それを読んだ高野秀行が実際に『喧嘩…』を読んでみたところ、本当に「かぶりすぎ」なくらい似ていると驚き、それを見たある編集者が二人を引き合わせたことから生まれた本。
「室町時代の日本人と現代のソマリ人の社会、価値観、振る舞いなどの共通点」というテーマだけで始まった(であろう)対談だが、その話は最初のうちだけで、話は古米は新米よりも膨らむから昔は高価だったとか、江戸時代はコメや大豆に特化したモノカルチャーな農業になったので飢饉が増えたとか、信長の正義や公平はイスラム主義に通じるところがあるとか、パックス・トスカーナの功労者は綱吉だとか、古代や中世の人にとっては背中から後ろ向きに未来に向かっていく感覚があったのではないか(バック・トゥ・ザ・フューチュアー)、とか、武士にとって京都は鬼門(だから江戸幕府は正解)とか、江戸時代がよかったというのなら軍事政権時のミャンマーもよかったことにならないか…などとあちこちに散らばる。
なにか新しい真実を見つけようというような話ではないので「かもしれない」という域から話は出ないのだけれども、とにかく二人とも博覧強記で、すっぽんのような好奇心そのままに、どんなとんでもないところに飛んだ球もこぼれ球も拾って打ち返し続けるという、知的放談がたまらなく面白い。最初は高野さんの辺境体験談や、清水さんの歴史トリビアなどが全ページに秩序なくちりばめられていて満天の星のように目を奪われるのだが、それと違うレベルで面白いと思ったのは、互いの仕事に対する見方や姿勢だ。清水さんによると、日本史の世界では、新しい方法論を開拓するのは中世史の研究者が多くて、その理由は、現存する古文書の量が、「一人の研究者が一生をかけてざっと見ることができるくらいの量」なので、「トータルな時代イメージをつくり上げていくのに一番向いている」からなのだそうだ。近世になると文書の量が多すぎて、コントロールを失う感じになるらしい。情報量が多すぎて決断できないということはままあるが、研究の世界でも「適切な情報量」が有力な理論や新しい発見につながるというのは面白い。高野さんは、学者も舌を巻くような観察力、分析力、構成力でとんでもなく面白いノンフィクションを書く人だが、その文章のスタイルが「軽い」といわれることに対して、こんなことを言っている。「何かを見せたいと思ったら、面白く書くしかない」「(メッセージとして伝えたいことは)説教として伝えるんじゃなくて、面白いという知的興味の中で昇華してほしいわけですよ。物語を読んですごく面白かったと思うと、カタルシスが生まれて、読んだことがすっと入ってくるから、余計なストレスを感じずに問題を直視できる」。結局ノンフィクションを書く人は自分の興味関心で書いているわけであって「人としてこういう問題は直視しなくてはならない」と他人に押し付けるのはどうなのか、というのが高野さんのスタンスだ。「世界中の問題を全部直視なんてしていたら、ほかのことは何もできないですよ」。
どんな業種にも内と外があるが、内で深めたことというのは意外と外とすんなりつながる。とことん個人的なことが普遍につながるように。清水さんは、学生時代にインドを長距離バスで旅していたときに、山賊の略奪が料金所とうかたちで制度化されていることに気が付いた。高野さんは、ミャンマーの軍事政権について考えているときに、江戸幕府と比較することを思いついた。「世界の辺境」と「昔の日本」という日常からもっとも遠いところに、人間の原点や、社会の原型のようなものがある。ビジネスやサイエンスでは、異業種や異分野の境界線から最先端のイノベーションが生まれることが往々にしてあるが、その境界線のあたりには人間の本性の解明につながる何かも埋まっているのかもしれない。
「室町時代の日本人と現代のソマリ人の社会、価値観、振る舞いなどの共通点」というテーマだけで始まった(であろう)対談だが、その話は最初のうちだけで、話は古米は新米よりも膨らむから昔は高価だったとか、江戸時代はコメや大豆に特化したモノカルチャーな農業になったので飢饉が増えたとか、信長の正義や公平はイスラム主義に通じるところがあるとか、パックス・トスカーナの功労者は綱吉だとか、古代や中世の人にとっては背中から後ろ向きに未来に向かっていく感覚があったのではないか(バック・トゥ・ザ・フューチュアー)、とか、武士にとって京都は鬼門(だから江戸幕府は正解)とか、江戸時代がよかったというのなら軍事政権時のミャンマーもよかったことにならないか…などとあちこちに散らばる。
なにか新しい真実を見つけようというような話ではないので「かもしれない」という域から話は出ないのだけれども、とにかく二人とも博覧強記で、すっぽんのような好奇心そのままに、どんなとんでもないところに飛んだ球もこぼれ球も拾って打ち返し続けるという、知的放談がたまらなく面白い。最初は高野さんの辺境体験談や、清水さんの歴史トリビアなどが全ページに秩序なくちりばめられていて満天の星のように目を奪われるのだが、それと違うレベルで面白いと思ったのは、互いの仕事に対する見方や姿勢だ。清水さんによると、日本史の世界では、新しい方法論を開拓するのは中世史の研究者が多くて、その理由は、現存する古文書の量が、「一人の研究者が一生をかけてざっと見ることができるくらいの量」なので、「トータルな時代イメージをつくり上げていくのに一番向いている」からなのだそうだ。近世になると文書の量が多すぎて、コントロールを失う感じになるらしい。情報量が多すぎて決断できないということはままあるが、研究の世界でも「適切な情報量」が有力な理論や新しい発見につながるというのは面白い。高野さんは、学者も舌を巻くような観察力、分析力、構成力でとんでもなく面白いノンフィクションを書く人だが、その文章のスタイルが「軽い」といわれることに対して、こんなことを言っている。「何かを見せたいと思ったら、面白く書くしかない」「(メッセージとして伝えたいことは)説教として伝えるんじゃなくて、面白いという知的興味の中で昇華してほしいわけですよ。物語を読んですごく面白かったと思うと、カタルシスが生まれて、読んだことがすっと入ってくるから、余計なストレスを感じずに問題を直視できる」。結局ノンフィクションを書く人は自分の興味関心で書いているわけであって「人としてこういう問題は直視しなくてはならない」と他人に押し付けるのはどうなのか、というのが高野さんのスタンスだ。「世界中の問題を全部直視なんてしていたら、ほかのことは何もできないですよ」。
どんな業種にも内と外があるが、内で深めたことというのは意外と外とすんなりつながる。とことん個人的なことが普遍につながるように。清水さんは、学生時代にインドを長距離バスで旅していたときに、山賊の略奪が料金所とうかたちで制度化されていることに気が付いた。高野さんは、ミャンマーの軍事政権について考えているときに、江戸幕府と比較することを思いついた。「世界の辺境」と「昔の日本」という日常からもっとも遠いところに、人間の原点や、社会の原型のようなものがある。ビジネスやサイエンスでは、異業種や異分野の境界線から最先端のイノベーションが生まれることが往々にしてあるが、その境界線のあたりには人間の本性の解明につながる何かも埋まっているのかもしれない。
2020年2月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
江戸時代以前の中世の日本は、徳川幕府のような強力な統治システムが機能しておらず、庶民はその無政府で警察のいない世界を生き抜くため、様々な掟を作り、強烈な闘争意識を持って暮らしていました(例を挙げると、一銭でも盗んだら殺すというような)。
その現代人が想像できない時代と、多くの日本人がソマリアの海賊というイメージを持っているソマリ地域の人々との間に、多くのシンクロする部分があるという事実を、ふとしたきっかけで、中世庶民史専門の清水さんと探検家(本人曰く違うそうですが…)兼作家の高野さんが共通認識したことから産まれた対談本です。酒席の雑談から始まったということのようですが、日本の中世の庶民と、現代のソマリ人という意外な共通性、取り合わせが非常に興味深く、絶対にかみ合いそうもないお二方の専門ジャンルの不思議なシンクロが面白く、楽しい本です。
ただ、書名から受ける印象として、ハードボイルドともいえる殺伐とした室町時代の庶民と、現代のソマリ人に共通性があるというイメージが先行し、室町時代の野蛮な庶民と、海賊をするようなやはり野蛮なソマリ人には共通性が見られたという発見を語り合ったんだなというイメージを持ちそうですが、そんな単純な内容ではありません。
対談からは、現代の日本人、中世の日本人、ソマリ地域、あるいは世界の他の地域の人々を比較した場合、人間としての普遍的な部分から見ると、それぞれどう評価できるのか。また、現代の日本に生きていることが正しくて、それ以外の時代や地域に生きること(価値観)は間違いなのかということについて考えさせられます。「他人のふり見て我がふり直せ」ではないですが、軽い対談本のようでいて、自分自身を再考する気にさせられるとても深い本だなと思いました。
その現代人が想像できない時代と、多くの日本人がソマリアの海賊というイメージを持っているソマリ地域の人々との間に、多くのシンクロする部分があるという事実を、ふとしたきっかけで、中世庶民史専門の清水さんと探検家(本人曰く違うそうですが…)兼作家の高野さんが共通認識したことから産まれた対談本です。酒席の雑談から始まったということのようですが、日本の中世の庶民と、現代のソマリ人という意外な共通性、取り合わせが非常に興味深く、絶対にかみ合いそうもないお二方の専門ジャンルの不思議なシンクロが面白く、楽しい本です。
ただ、書名から受ける印象として、ハードボイルドともいえる殺伐とした室町時代の庶民と、現代のソマリ人に共通性があるというイメージが先行し、室町時代の野蛮な庶民と、海賊をするようなやはり野蛮なソマリ人には共通性が見られたという発見を語り合ったんだなというイメージを持ちそうですが、そんな単純な内容ではありません。
対談からは、現代の日本人、中世の日本人、ソマリ地域、あるいは世界の他の地域の人々を比較した場合、人間としての普遍的な部分から見ると、それぞれどう評価できるのか。また、現代の日本に生きていることが正しくて、それ以外の時代や地域に生きること(価値観)は間違いなのかということについて考えさせられます。「他人のふり見て我がふり直せ」ではないですが、軽い対談本のようでいて、自分自身を再考する気にさせられるとても深い本だなと思いました。
2017年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
地理的な辺境と古文書の海、時空間的なバックグラウンドは異なれど、圧倒的なデータ量に基く、直観的な視点の交差から生まれる刺激的な内容が記載されている。現代のアカデミックでは、正確性を追い求めるが故に分析や厳密な論証が重視され、議論が細分化し視野が小さくなっている。小室直樹や長沼伸一郎のように、直観的に大局的な視点で本質に迫る姿勢もあって良い。本書は、居酒屋談義らしいが、そういった領域に踏み込めているように思う。