著者のお嬢さんは、地方公立小中高(高校は大分県トップの大分上野丘高)を経て、ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業し、プロのバイオリニスト兼起業家になっているそうで、その受験実績と活躍ぶりは誠に驚くべきものです。その体験記である本書のユニークさは特筆すべきと思います。
後述のように、首を傾げる部分があるので、本書を読むかたは、著者の教育方針に賛同するか否か、好きか嫌いか、という見地からではなく、冷めた目で読んでみて、採用できる、読者が再現できる教育方法があるか、という見地で、情報源として客観的に読まれるのが良いと思います。他の受験や子育て体験記を読むときと同様です。その観点から、報告したい点を挙げると、以下の通りです。
小学校就学前からの英語教育については、本書で印象に残ることは、語彙獲得重視、逐語訳せず英文をたくさん読ませる、ということでしょうか?ご自宅のリビングルームにテレビは置かないで、小刻みの時間を有効に使わせ、子供の時から To do list をつくって時間の効率を高めたそうです。
この、幼いころから長期にわたって家庭で英才教育を高学歴の母親がリードする(父親は出てこない)、時間を有効に使う、そうして大量の勉強量を確保する、子供自身に主体的に考える姿勢を身につけさせる、というやり方は、東大理三4兄弟妹の佐藤ママ(元高校英語教師)や、公立高校から東大3兄弟の杉政ママ(音楽教室講師)や、お嬢さん二人が東大に合格した江藤ママと共通しており、注目されます。
もっとも、これが著者のように高いレベルで長時間できる家庭は、多くはないでしょう。母親である本書の著者は、早稲田大学卒業で高校の英語教員資格を有し、語学学校講師だったそうです。お嬢さんが2歳の時から自宅で英語を教え、漢字を覚えさせ、バイオリン教室でバイオリンを習わせ始めたそうです。これらはどの家庭でもできることではありません。まして、バイオリンの教育は、どの親や子にも真似できるものではありません。さらにその後実際にプロのバイオリニストになることは、トレーニングだけでできることではないでしょう。
しかし、本を読み聞かせることや、親自らが勉強や読書をすることと、子供の教育に熱心であることは、多くの親にもできることと思われます。そういう意識をもつことだけで、さほどお金をかけずにできそうです。一日でも早く、テレビ視聴時間のコントロールや漢字や英語の語彙トレーニングをはじめ、長期間それを積み重ねる、ということも、具体的な提言として、大人も含めて実践すればいいと思います。
ハーバード大学受験体験記録は、情報が少ないだけに、貴重なものと思います。それがいとも簡単だったかのように書いていらっしゃいますが、情報を集めることなどのプロセスは簡単であっても、結果を出すことが誰にでも簡単だとは言えませんので、読者はご用心を。それでも、成功例を聞くことは、多くの方に希望を与えるでしょう。また、お嬢さんご自身の体験記「ハーバード・ジュリアードを 首席卒業した私の 「超・独学術」 」も併せて読むと、お嬢さんは学業やバイオリンの実力はもちろん、落ち着いたとても頼もしい好感の持てる若者に育っていらっしゃって、将来が楽しみです。
この本で首を傾げる点、客観的、批判的に読んだ方が良いと思われる点は、著者が、日本の大学を受験し入学することに、感情的なほど否定的であり、日本の大学入試問題や模擬試験を敵視し、ハーバード大学での受験プロセスや教育には肯定的であることです。また、やや極端に選択的であり、お嬢さんに不得手と思われたバレエから撤退させた、とか、修学旅行は行かずに観劇等をした、ということです。日本の受験勉強を象徴する反復練習や丸暗記の効用は認めているし、一応センター試験は受験したとか、慶應義塾大学には合格した、との報告もなさっているのに、どうしたことでしょう?東大や京大の入試問題作成過程での出題者の工夫や、筆記試験の良さを評価する向きも世の中には少なからずありますし、そもそも価値観はさまざまです。著者は、客観性の欠けた日米比較をしたうえに読者にそれへの同意を求めるなんて余分なことはなさらず、ハーバード大学合格のプロセスの事実を淡々とつづられたら、読みやすくて受けいれられやすかったかったであろうに、残念です。
さらに、書名の「世界」とか「一流」とかの、出版者の営業まで混じった言葉のため、自慢話に陥る傾向が見られます。本書が素直には読みにくい点には、減点。
また、文中の教育投資金額には、お嬢さんのバイオリン教育のために、毎月東京の先生に通わせて習わせたための高額だったであろうお月謝・交通宿泊費は全く算入していないことや、「塾なしで」と書名をつけることは極めてミスリーディングです。これは事実を重視すべき体験記として、非常にまずいです。やはり減点。
結局、星二つ減点。
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